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第一部
意地悪
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リモコンで操作してひとつの映画を選ぶと凛太さんは私の顔を覗き込んで来た。チョコレート色の目が楽しそうに細められる。
「そんなに可愛い顔しないでください」
私は口を尖らせた。こんなむくれている顔を可愛いって言うのはきっと夫達だけだ。
「だって絶対観せるんでしょう?」
「……透子さんが嫌だったらしません」
リモコンを持っている手を上げて降参、のポーズ。私は体を捻って後ろに居る凛太さんの顔をじっと見ながら言った。
「……凛太さんはラブシーンは大事なお仕事だから仕方ないってわかっています。でも……やっぱり気持ち良いものではないので」
「僕にもやきもち妬いて欲しかったんですけど、我慢することにします。やっぱり嫌な思いはさせたくないので」
そう言うと、リモコンを使って他の映画にしてくれた。
その映画の序盤が始まるところで、私はじっと考えていたことを尋ねた。なんだか恥ずかしくてもじもじとしてしまう。
「あの……どこまでしたんですか?」
「……ラブシーンですか?」
「……そうです。その、恋愛映画だから……」
「キスだけかな……それも、しているふりですよ。角度的にはキスしているように見えるんです。大体ベッドシーンなんかあったら先方の夫達に殺されます。まあ、僕は簡単には死にませんけど。ふ、安心しました?」
あからさまにほっとした顔をした私をからかうようにちゅっと頬にキスをした。
「……安心、しました」
「女装している雄とはベッドシーンしたことありますよ。観ますか?」
「もうっ、凛太さんっ」
私は振り返ろうとしてバランスを崩して凛太さんに抱きついた。
「……全部お芝居ですよ。架空の人物、架空の存在になりきっているだけ。僕は貴方と居る時だけ自分を感じられるんだ」
そのままぎゅっとつよく抱きしめられて耳元で囁かれた。
「凛太、さん?」
「……春から聞きましたか?」
「あ……あの、凛太さんと一緒に居た人がよく、春くんを……」
「あれはスポンサーの息子です。僕もまだ駆け出しだったので、逆らえなくて……春の事情は知ってますよね? もちろんあの事件は彼自身ではどうにもならないことだとわかっていました。春はあの顔だし、家も家なので紅蓮の里でも良く雌に騒がれてました……嫉妬だったんでしょうね」
どこか悔いるように凛太さんは言った。
「凛太さんも……その、春くんのこと……あんまりよく思ってないですか?」
凛太さんは私の目を見て即答した。
「いいえ。透子さんが関わったら、確かにあまり良くは思えませんが……裏表のない春自身は嫌いではないですよ。それに透子さんから仲良くして欲しいとも言われてますし」
「凛太さん……」
私も背中に手を回してぎゅっと抱きしめた。凛太さんがぎゅっともっと力を込めて抱きしめる。
「あー、良い匂いする。透子さんの匂いだ。今日は春の匂い全部消すくらい、やりまくりてえ」
あ、と私は思った。凛太さんがそういうモードに入った。でもまだお昼と言える時間だし……ちょっと早くない?
「凛太さっ……きゃっ」
私は勢い良く抱き上げられた。いわゆるお姫様だっこ。
「透子さん、俺の、透子さん。今から食べて良い?」
私はその端正な顔を見て、どう言おうか迷った。
「そんなに可愛い顔しないでください」
私は口を尖らせた。こんなむくれている顔を可愛いって言うのはきっと夫達だけだ。
「だって絶対観せるんでしょう?」
「……透子さんが嫌だったらしません」
リモコンを持っている手を上げて降参、のポーズ。私は体を捻って後ろに居る凛太さんの顔をじっと見ながら言った。
「……凛太さんはラブシーンは大事なお仕事だから仕方ないってわかっています。でも……やっぱり気持ち良いものではないので」
「僕にもやきもち妬いて欲しかったんですけど、我慢することにします。やっぱり嫌な思いはさせたくないので」
そう言うと、リモコンを使って他の映画にしてくれた。
その映画の序盤が始まるところで、私はじっと考えていたことを尋ねた。なんだか恥ずかしくてもじもじとしてしまう。
「あの……どこまでしたんですか?」
「……ラブシーンですか?」
「……そうです。その、恋愛映画だから……」
「キスだけかな……それも、しているふりですよ。角度的にはキスしているように見えるんです。大体ベッドシーンなんかあったら先方の夫達に殺されます。まあ、僕は簡単には死にませんけど。ふ、安心しました?」
あからさまにほっとした顔をした私をからかうようにちゅっと頬にキスをした。
「……安心、しました」
「女装している雄とはベッドシーンしたことありますよ。観ますか?」
「もうっ、凛太さんっ」
私は振り返ろうとしてバランスを崩して凛太さんに抱きついた。
「……全部お芝居ですよ。架空の人物、架空の存在になりきっているだけ。僕は貴方と居る時だけ自分を感じられるんだ」
そのままぎゅっとつよく抱きしめられて耳元で囁かれた。
「凛太、さん?」
「……春から聞きましたか?」
「あ……あの、凛太さんと一緒に居た人がよく、春くんを……」
「あれはスポンサーの息子です。僕もまだ駆け出しだったので、逆らえなくて……春の事情は知ってますよね? もちろんあの事件は彼自身ではどうにもならないことだとわかっていました。春はあの顔だし、家も家なので紅蓮の里でも良く雌に騒がれてました……嫉妬だったんでしょうね」
どこか悔いるように凛太さんは言った。
「凛太さんも……その、春くんのこと……あんまりよく思ってないですか?」
凛太さんは私の目を見て即答した。
「いいえ。透子さんが関わったら、確かにあまり良くは思えませんが……裏表のない春自身は嫌いではないですよ。それに透子さんから仲良くして欲しいとも言われてますし」
「凛太さん……」
私も背中に手を回してぎゅっと抱きしめた。凛太さんがぎゅっともっと力を込めて抱きしめる。
「あー、良い匂いする。透子さんの匂いだ。今日は春の匂い全部消すくらい、やりまくりてえ」
あ、と私は思った。凛太さんがそういうモードに入った。でもまだお昼と言える時間だし……ちょっと早くない?
「凛太さっ……きゃっ」
私は勢い良く抱き上げられた。いわゆるお姫様だっこ。
「透子さん、俺の、透子さん。今から食べて良い?」
私はその端正な顔を見て、どう言おうか迷った。
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