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第一部
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予め誰かに聞いて用意していたのか、自身も水着姿の理人さんは、私の水着姿をじっと見て珍しく不思議そうな顔をしたので、私も首を傾げた。
「あの……変ですか?」
「いえ、あんまり可愛いので……言葉を失いました」
その言葉に私は顔を熱くした。今まで暮らして来て、理人さんはお世辞を言うことはほとんどないタイプだと思うからきっと心からそう思ってくれているんだろうな。
「えっと……じゃあ、泳ぎます?」
「……いや……その前に透子さんが嫌じゃなかったらちょっとお喋りしましょうか」
そう言うと、プールサイドにある防水のソファを指し示した。素直に頷くと、理人さんの隣に腰掛ける。銀色の髪の私の夫は、上半身を晒しても彫像のようにどこをとってみても寸分の狂いもなく美しい。
「あの、何かあったんですか……?」
「雄吾から聞きました。子どもが出来たら帰れなくなるそうですね」
問いかけられて私は頷いた。理人さんは真面目な顔をして私の顔を覗き込んできた。
「透子さんは、後悔しませんか? 僕はあんな簡単な方法で帰れるなんて知りませんでした。出来ればずっとこの世界に居て欲しい。でもそれは僕の、僕達のエゴだ。ちゃんとしたあなたの気持ちを知りたいと思いました」
その視線は真っ直ぐだ。理人さんはきっと、思い悩んだ結果こういう風に聞こうと決意したんだろうということが窺える。
「私、後悔しません。最初に理人さんと、皆と結婚する時もちゃんと自分で決めました。この世界に残るって決めたのも、自分です。後悔はしません」
そう言って理人さんの手を取った。私と結婚することで一度は捨てた全てのものを背負うと決めた人。そんな人を残して一人帰るなんて考えられなかった。
「そうですか」
彼はどこかほっとしたように力を抜いた。もしかしたらすごく緊張していたのかもしれない。
「……ここで私が帰りたいって言ったらどうするつもりだったんですか?」
からかうように私が言うと、理人さんはちょっと目を見開いてから、にこりと笑った。
「じゃあ、どうしても帰りたくならないようにしましょうか?」
その時気がついた。銀色の尻尾が彼の体の後ろで揺れているのを。
「ん……っ……んんっ……」
頭の後ろに理人さんの大きな手があって深いキスをしていた。ぴちゃぴちゃと水音がして流し込まれる唾液をこくんと飲んだ。ちょっと顔を離して理人さんは長いキスにボーッとした私の顔を見て微笑む。
「……こんな顔をしていたら元の世界でも襲われますよ」
私はその大きな銀色の耳を両手で触りながら答えた。細くてふわふわしている毛が触り心地が良い。
「こんな顔しません。キスするのは……決まった人だけですから」
「その決まっている中に僕が入っているなら、何の文句もありません」
「理人さんは、私以外に可愛いって思う人居ますか?」
虚を突かれたようにすこし黙ると、基本的に嘘が苦手な理人さんはうーんと唸った。私はちょっと笑ってしまう。困っている顔も魅力的なこの人はすごく真面目な人だから。
「……透子さんほど心を動かされたのは初めてです」
「居るんですね」
触っている耳を強く揉み込むと、ふっと優しく笑った。
「意地悪言わないでください。僕は透子さんが一番なので。誰よりも何よりも大切なのは貴女だけです」
「あの……変ですか?」
「いえ、あんまり可愛いので……言葉を失いました」
その言葉に私は顔を熱くした。今まで暮らして来て、理人さんはお世辞を言うことはほとんどないタイプだと思うからきっと心からそう思ってくれているんだろうな。
「えっと……じゃあ、泳ぎます?」
「……いや……その前に透子さんが嫌じゃなかったらちょっとお喋りしましょうか」
そう言うと、プールサイドにある防水のソファを指し示した。素直に頷くと、理人さんの隣に腰掛ける。銀色の髪の私の夫は、上半身を晒しても彫像のようにどこをとってみても寸分の狂いもなく美しい。
「あの、何かあったんですか……?」
「雄吾から聞きました。子どもが出来たら帰れなくなるそうですね」
問いかけられて私は頷いた。理人さんは真面目な顔をして私の顔を覗き込んできた。
「透子さんは、後悔しませんか? 僕はあんな簡単な方法で帰れるなんて知りませんでした。出来ればずっとこの世界に居て欲しい。でもそれは僕の、僕達のエゴだ。ちゃんとしたあなたの気持ちを知りたいと思いました」
その視線は真っ直ぐだ。理人さんはきっと、思い悩んだ結果こういう風に聞こうと決意したんだろうということが窺える。
「私、後悔しません。最初に理人さんと、皆と結婚する時もちゃんと自分で決めました。この世界に残るって決めたのも、自分です。後悔はしません」
そう言って理人さんの手を取った。私と結婚することで一度は捨てた全てのものを背負うと決めた人。そんな人を残して一人帰るなんて考えられなかった。
「そうですか」
彼はどこかほっとしたように力を抜いた。もしかしたらすごく緊張していたのかもしれない。
「……ここで私が帰りたいって言ったらどうするつもりだったんですか?」
からかうように私が言うと、理人さんはちょっと目を見開いてから、にこりと笑った。
「じゃあ、どうしても帰りたくならないようにしましょうか?」
その時気がついた。銀色の尻尾が彼の体の後ろで揺れているのを。
「ん……っ……んんっ……」
頭の後ろに理人さんの大きな手があって深いキスをしていた。ぴちゃぴちゃと水音がして流し込まれる唾液をこくんと飲んだ。ちょっと顔を離して理人さんは長いキスにボーッとした私の顔を見て微笑む。
「……こんな顔をしていたら元の世界でも襲われますよ」
私はその大きな銀色の耳を両手で触りながら答えた。細くてふわふわしている毛が触り心地が良い。
「こんな顔しません。キスするのは……決まった人だけですから」
「その決まっている中に僕が入っているなら、何の文句もありません」
「理人さんは、私以外に可愛いって思う人居ますか?」
虚を突かれたようにすこし黙ると、基本的に嘘が苦手な理人さんはうーんと唸った。私はちょっと笑ってしまう。困っている顔も魅力的なこの人はすごく真面目な人だから。
「……透子さんほど心を動かされたのは初めてです」
「居るんですね」
触っている耳を強く揉み込むと、ふっと優しく笑った。
「意地悪言わないでください。僕は透子さんが一番なので。誰よりも何よりも大切なのは貴女だけです」
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