127 / 152
第一部
神話
しおりを挟む
やっぱり夢見は悪い。じっとりと汗ばんだ肌を持て余して私は上半身を起こした。
昨夜一緒に寝たはずの凛太さんが居ない。仕事のない日はいつも一緒に居てくれるのにな、なんだかちょっと違和感を感じた。
立ち上がって服を整えると凛太さんの部屋から自分の部屋に戻る。手早くシャワーを浴びて身支度すると、リビングに向かう。
「……間違いない」
理人さんの声だ。なんだか、人の気配がするから皆で集まっているのかもしれない。私はそっと足を忍ばせて聞こえてくる声に耳を傾けた。
「透子に? なんで?」
不思議そうな声の春くんだ。私の話をしているみたいだ。こくんと息を飲んだ。
「ああ、どうにも兄さんに言わせると透子にご執心のようだ。今も、もしかしたら……」
「そんな、起こして来ます」
慌てたような声の凛太さんだ。私に執心している? 誰のこと?
「まー、凛太も焦るな。透子ちゃんに拘っている様子なのはわかった。それで俺達に何が出来る? 俺に出来ることならなんでもする」
子竜さんはのんびりした様子だけど、決然とした口調で言った。
「……俺も、透子のためなら何も惜しくはない」
雄吾さんだ。本当に……何の話をしているの?
「……死神は透子さんに何か言いたいことがあるみたいだ。僕はこれからそれを探り出す」
死神! 私は驚きに目を見開いた。あのミントの香り。ぞわり、と肌が泡立った。
「それは! でもどうやって? 久祈兄はもう……」
言葉を無くしたように春くんは黙った。
「僕の能力を忘れたのか……春、大丈夫だ。ちゃんと借りてきたから」
「……でも、理人姿が……」
「この前感じた、あまりの怒りのせいか……能力が上がったみたいだ。……借りた能力をフルパワーではなく劣化した状態でならいくつかストックしておくことが出来る様になったんだ」
しん、と静まった。あの時の理人さんの怒りや苦悩を思えば誰も何も言えないからだろう。
「……僕は透子さんをあんな風に傷つけてしまった自分を絶対に許せない。だから、これからは何の傷もつけたくもない。それがもし夢の中でも。だ」
「わかった。じゃあ、今から透子ちゃんの夢の中に入るのか?」
「ああ……随分春と凛太が疲れさせたようだから……」
私はそこで意を決してリビングに入った。
「あのっ」
五人が私に注目した。何だか、緊張した雰囲気の中、震える声で私は言った。
「死神って……皆なんのことだか知ってるんですか?」
「……あー、そっか透子は俺達が知ってないと思っていたんだね」
「この世界では有名……というか当たり前のことなんだよ、夢見の死神って言われているものの存在もね。でも、この世界だって何億って命が生まれては消えていく。連綿と続いていく世界だ……誰かの夢の中っていう風に何か神話みたいに語られている。それだけの事だよ」
私はほっと息をついた。両隣には雄吾さんと春くんが座っている。
「でも……なんで私のことにこだわるんでしょう?」
「……それは本人に聞いてみないとわからないですね……透子さん」
「はい?」
理人さんの薄いグレーの目を見て私は首を傾げた。
「せっかくプールありますし疲れるまで泳ぎましょうか。僕と」
最後を強調しているから、他のおおかみさんは来るなってことなのかな。ふふっと笑って私は頷いた。
昨夜一緒に寝たはずの凛太さんが居ない。仕事のない日はいつも一緒に居てくれるのにな、なんだかちょっと違和感を感じた。
立ち上がって服を整えると凛太さんの部屋から自分の部屋に戻る。手早くシャワーを浴びて身支度すると、リビングに向かう。
「……間違いない」
理人さんの声だ。なんだか、人の気配がするから皆で集まっているのかもしれない。私はそっと足を忍ばせて聞こえてくる声に耳を傾けた。
「透子に? なんで?」
不思議そうな声の春くんだ。私の話をしているみたいだ。こくんと息を飲んだ。
「ああ、どうにも兄さんに言わせると透子にご執心のようだ。今も、もしかしたら……」
「そんな、起こして来ます」
慌てたような声の凛太さんだ。私に執心している? 誰のこと?
「まー、凛太も焦るな。透子ちゃんに拘っている様子なのはわかった。それで俺達に何が出来る? 俺に出来ることならなんでもする」
子竜さんはのんびりした様子だけど、決然とした口調で言った。
「……俺も、透子のためなら何も惜しくはない」
雄吾さんだ。本当に……何の話をしているの?
「……死神は透子さんに何か言いたいことがあるみたいだ。僕はこれからそれを探り出す」
死神! 私は驚きに目を見開いた。あのミントの香り。ぞわり、と肌が泡立った。
「それは! でもどうやって? 久祈兄はもう……」
言葉を無くしたように春くんは黙った。
「僕の能力を忘れたのか……春、大丈夫だ。ちゃんと借りてきたから」
「……でも、理人姿が……」
「この前感じた、あまりの怒りのせいか……能力が上がったみたいだ。……借りた能力をフルパワーではなく劣化した状態でならいくつかストックしておくことが出来る様になったんだ」
しん、と静まった。あの時の理人さんの怒りや苦悩を思えば誰も何も言えないからだろう。
「……僕は透子さんをあんな風に傷つけてしまった自分を絶対に許せない。だから、これからは何の傷もつけたくもない。それがもし夢の中でも。だ」
「わかった。じゃあ、今から透子ちゃんの夢の中に入るのか?」
「ああ……随分春と凛太が疲れさせたようだから……」
私はそこで意を決してリビングに入った。
「あのっ」
五人が私に注目した。何だか、緊張した雰囲気の中、震える声で私は言った。
「死神って……皆なんのことだか知ってるんですか?」
「……あー、そっか透子は俺達が知ってないと思っていたんだね」
「この世界では有名……というか当たり前のことなんだよ、夢見の死神って言われているものの存在もね。でも、この世界だって何億って命が生まれては消えていく。連綿と続いていく世界だ……誰かの夢の中っていう風に何か神話みたいに語られている。それだけの事だよ」
私はほっと息をついた。両隣には雄吾さんと春くんが座っている。
「でも……なんで私のことにこだわるんでしょう?」
「……それは本人に聞いてみないとわからないですね……透子さん」
「はい?」
理人さんの薄いグレーの目を見て私は首を傾げた。
「せっかくプールありますし疲れるまで泳ぎましょうか。僕と」
最後を強調しているから、他のおおかみさんは来るなってことなのかな。ふふっと笑って私は頷いた。
61
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
私が美女??美醜逆転世界に転移した私
鍋
恋愛
私の名前は如月美夕。
27才入浴剤のメーカーの商品開発室に勤める会社員。
私は都内で独り暮らし。
風邪を拗らせ自宅で寝ていたら異世界転移したらしい。
転移した世界は美醜逆転??
こんな地味な丸顔が絶世の美女。
私の好みど真ん中のイケメンが、醜男らしい。
このお話は転生した女性が優秀な宰相補佐官(醜男/イケメン)に囲い込まれるお話です。
※ゆるゆるな設定です
※ご都合主義
※感想欄はほとんど公開してます。
この世界、イケメンが迫害されてるってマジ!?〜アホの子による無自覚救済物語〜
具なっしー
恋愛
※この表紙は前世基準。本編では美醜逆転してます。AIです
転生先は──美醜逆転、男女比20:1の世界!?
肌は真っ白、顔のパーツは小さければ小さいほど美しい!?
その結果、地球基準の超絶イケメンたちは “醜男(キメオ)” と呼ばれ、迫害されていた。
そんな世界に爆誕したのは、脳みそふわふわアホの子・ミーミ。
前世で「喋らなければ可愛い」と言われ続けた彼女に同情した神様は、
「この子は救済が必要だ…!」と世界一の美少女に転生させてしまった。
「ひきわり納豆顔じゃん!これが美しいの??」
己の欲望のために押せ押せ行動するアホの子が、
結果的にイケメン達を救い、世界を変えていく──!
「すきーー♡結婚してください!私が幸せにしますぅ〜♡♡♡」
でも、気づけば彼らが全方向から迫ってくる逆ハーレム状態に……!
アホの子が無自覚に世界を救う、
価値観バグりまくりご都合主義100%ファンタジーラブコメ!
甘い匂いの人間は、極上獰猛な獣たちに奪われる 〜居場所を求めた少女の転移譚〜
具なっしー
恋愛
「誰かを、全力で愛してみたい」
居場所のない、17歳の少女・鳴宮 桃(なるみや もも)。
幼い頃に両親を亡くし、叔父の家で家政婦のような日々を送る彼女は、誰にも言えない孤独を抱えていた。そんな桃が、願いをかけた神社の光に包まれ目覚めたのは、獣人たちが支配する異世界。
そこは、男女比50:1という極端な世界。女性は複数の夫に囲われて贅沢を享受するのが常識だった。
しかし、桃は異世界の女性が持つ傲慢さとは無縁で、控えめなまま。
そして彼女の身体から放たれる**"甘いフェロモン"は、野生の獣人たちにとって極上の獲物**でしかない。
盗賊に囚われかけたところを、美形で無口なホワイトタイガー獣人・ベンに救われた桃。孤独だった少女は、その純粋さゆえに、強く、一途で、そして獰猛な獣人たちに囲われていく――。
※表紙はAIです
転生先は男女比50:1の世界!?
4036(シクミロ)
恋愛
男女比50:1の世界に転生した少女。
「まさか、男女比がおかしな世界とは・・・」
デブで自己中心的な女性が多い世界で、ひとり異質な少女は・・
どうなる!?学園生活!!
残念女子高生、実は伝説の白猫族でした。
具なっしー
恋愛
高校2年生!葉山空が一妻多夫制の男女比が20:1の世界に召喚される話。そしてなんやかんやあって自分が伝説の存在だったことが判明して…て!そんなことしるかぁ!残念女子高生がイケメンに甘やかされながらマイペースにだらだら生きてついでに世界を救っちゃう話。シリアス嫌いです。
※表紙はAI画像です
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる