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05 婚約しませんか
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「だって公に婚約を破棄されれば、私が二人の愛のために犠牲になることになるもの。そんなこと、私は絶対に嫌だわ。自分が悪事を働いたのなら受け入れるけれど、実際はそうではないもの」
やりもしない悪事で罰せられるなんて、絶対に嫌。私がそう言えば、リアムは苦笑して頷いた。
「ええ。その通りです。アンジェラ様はデニス殿下を、お好きではなかったのですね?」
「婚約者として将来的に結婚するとは思って居たけれど、彼に他にお好きな女性が居るならば、お好きに結婚なされば良いと思うわ」
肩を竦めた私は寮に向かってゆっくりと歩き出せば、巡回中らしいリアムも付いて来た。
「お送りします。お一人なので」
どうやら女子寮まで送ってくれるつもりらしい。けれど、ここは貴族学校の敷地内。危険なんて何もないように思うけれど。
「何もないわよ?」
「いえ。どんな危険があるか、わかりませんよ。ひと気のない場所に、美しい女性は気を付けるべきだと思います」
そう言い彼は片目を瞑ったので私には断る理由もないし、女子寮はすぐ近くだった。
「……ありがとう」
「いえいえ。もし良かったら、僕と婚約しませんか」
驚いた私はそこで、リアムの顔を見た。彼はにっこりと微笑んで居た。
「……いきなり、何を」
この人、私と婚約しようって言ったわよね? まじまじと彼の顔を見つめても、リアムは全く動じずに頷いた。
「アンジェラ様は、今夜、そういった理由でデニス様と婚約者ではなくなったんですよね? 僕は実はフォーカード侯爵家の次男ですが、跡継ぎのはずの兄は病弱で今は爵位を継ぐことを諦める話になっております。ですので、いずれ僕がフォーカード侯爵となるのですが、兄は既に結婚済でして……妻を引き継ぐわけにもいかず、僕は他に結婚相手を探すことになっております」
「私のこと……ちょうど良い結婚相手だと思ったということ?」
にこにこと微笑んだリアムの表情は、まったく揺るがない。
名家の貴族令嬢は、大抵幼くして家に決められた相手と婚約している。だから、婚約を破棄されたばかりの公爵令嬢は、彼にとってちょうど良い結婚相手となりうると……彼はそう言いたいのだ。
やりもしない悪事で罰せられるなんて、絶対に嫌。私がそう言えば、リアムは苦笑して頷いた。
「ええ。その通りです。アンジェラ様はデニス殿下を、お好きではなかったのですね?」
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「……ありがとう」
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驚いた私はそこで、リアムの顔を見た。彼はにっこりと微笑んで居た。
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