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18 spirit(Side Romeo)(3)
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「いや……エレクゼイドは、確かに存在すると言われてはいる。あの森の神殿より深い場所に洞窟があって、言い伝えによればそこに棲んでいるはずだ」
「……棲んでいる、はず……?」
ロミオは、王が続けた言葉に、ますます彼が何を言わんとしているのかがわからなくなった。
伝説級とされている魔物は、エレクゼイドの他にも何体か居る。だが、魔物とは便宜上呼ばれているが、彼らは暗黒迷宮に復活する魔王には従わない。
特に謎めいた存在のエレクゼイド以外の伝説級の魔物が棲む場所は、危険な場所として認知され人は近寄らない。警鐘を鳴らすために、居場所がはっきりしている。彼らは住処を離れないために、近寄らなければ害はない。
エレクゼイドがあの森にあるという洞窟に棲んでいるのなら、その居場所を民に明かしても別に構わないのではないかと思ったのだ。むしろその方が、神域とされているあの森に入り込む者がより少なくなるはずだ。
誰だって、命は惜しい。
「……一年に一度大量の供物を捧げてはいるものの、大昔からその姿を見た者はいない。だからね、君にお願いしたいんだよ」
「エレクゼイドが存在しているのかを、確認しろと?」
確かに魔王を倒すための力を身につけた勇者であれば、伝説級のエレクゼイドに勝てないとしても、すぐには殺されはしないだろう。それに、王は姿を確認して欲しいだけだ。エレクゼイドを倒せとは、一言も言っていない。
「……エレクゼイドに毎年捧げるように約束している供物というのが、結構な量でね。姿を見た者は、いない。もういないかもしれない存在に、それだけの金額を未来永劫掛け続けるというのもね。おかしな話だろう」
暗に伝説は伝説なだけだったというだけで、エレクゼイドなど存在せず、用意した供物はただそこに住んでいる野生の獣などに食い荒らされているのではないかと疑っているのだろう。
「俺には、その危険を冒すだけの価値のある、何を与えられるんですか」
ロミオは眉を寄せたままで、肩を竦めた。
世界を救った勇者であるという名声は、もう既にロミオの手の中にある。魔王を倒すことにより手に入れた莫大な報酬もすぐに、自分以外には手の届かないところにあった。
今のロミオには、目に見えて欲しいと思うものが存在しない。
上手く心を読み人を適材適所で使う一国を治める王の彼にも、それは理解出来ているはずだ。
「……ミルドレッド・カーライル。神殿に居るとても美しい聖女だと、聞いた。彼女の婚約者との婚約を解消させるためには、貴族院の承認が必要になるだろう。もちろん。君には彼女の家の借金や違約金など支払うことは造作もない事だとは思うがね……幼い頃から、何年も続いた約束事だ。なかなか正当性が認められるとは、思い難いね」
特に感情を乗せない王の事務的な言葉を聞いて、ロミオは心を落ち着かせるように、細く息を吐いた。
要するに国王は、現在事実としてある男性と婚約を交わしている貴族令嬢ミルドレッドが欲しければ、自分のために働き伝説の魔物エレクゼイドの存在を確認しろと言っている。
ロミオにとって彼女がどうしても譲れないものであるために、従うしかないのをわかっていながらだ。
「……棲んでいる、はず……?」
ロミオは、王が続けた言葉に、ますます彼が何を言わんとしているのかがわからなくなった。
伝説級とされている魔物は、エレクゼイドの他にも何体か居る。だが、魔物とは便宜上呼ばれているが、彼らは暗黒迷宮に復活する魔王には従わない。
特に謎めいた存在のエレクゼイド以外の伝説級の魔物が棲む場所は、危険な場所として認知され人は近寄らない。警鐘を鳴らすために、居場所がはっきりしている。彼らは住処を離れないために、近寄らなければ害はない。
エレクゼイドがあの森にあるという洞窟に棲んでいるのなら、その居場所を民に明かしても別に構わないのではないかと思ったのだ。むしろその方が、神域とされているあの森に入り込む者がより少なくなるはずだ。
誰だって、命は惜しい。
「……一年に一度大量の供物を捧げてはいるものの、大昔からその姿を見た者はいない。だからね、君にお願いしたいんだよ」
「エレクゼイドが存在しているのかを、確認しろと?」
確かに魔王を倒すための力を身につけた勇者であれば、伝説級のエレクゼイドに勝てないとしても、すぐには殺されはしないだろう。それに、王は姿を確認して欲しいだけだ。エレクゼイドを倒せとは、一言も言っていない。
「……エレクゼイドに毎年捧げるように約束している供物というのが、結構な量でね。姿を見た者は、いない。もういないかもしれない存在に、それだけの金額を未来永劫掛け続けるというのもね。おかしな話だろう」
暗に伝説は伝説なだけだったというだけで、エレクゼイドなど存在せず、用意した供物はただそこに住んでいる野生の獣などに食い荒らされているのではないかと疑っているのだろう。
「俺には、その危険を冒すだけの価値のある、何を与えられるんですか」
ロミオは眉を寄せたままで、肩を竦めた。
世界を救った勇者であるという名声は、もう既にロミオの手の中にある。魔王を倒すことにより手に入れた莫大な報酬もすぐに、自分以外には手の届かないところにあった。
今のロミオには、目に見えて欲しいと思うものが存在しない。
上手く心を読み人を適材適所で使う一国を治める王の彼にも、それは理解出来ているはずだ。
「……ミルドレッド・カーライル。神殿に居るとても美しい聖女だと、聞いた。彼女の婚約者との婚約を解消させるためには、貴族院の承認が必要になるだろう。もちろん。君には彼女の家の借金や違約金など支払うことは造作もない事だとは思うがね……幼い頃から、何年も続いた約束事だ。なかなか正当性が認められるとは、思い難いね」
特に感情を乗せない王の事務的な言葉を聞いて、ロミオは心を落ち着かせるように、細く息を吐いた。
要するに国王は、現在事実としてある男性と婚約を交わしている貴族令嬢ミルドレッドが欲しければ、自分のために働き伝説の魔物エレクゼイドの存在を確認しろと言っている。
ロミオにとって彼女がどうしても譲れないものであるために、従うしかないのをわかっていながらだ。
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