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26 夢の中②
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「ちょうど良かった。お前に聞きたかったことがあるんだ……何故、ヒルデガードを殺さなかった? ブランシュに危害を加えれば、誰でも殺して良いと指示していたはずだ」
え? ……殺しても良いですって?
私は夫が言ったことを信じられなくて、目を見開いてしまった。
「ですが、奥様に止められました。旦那様より、奥様の意向を最優先にせよとお聞きしておりましたので」
「……では何故、ヒルデガードや偽の愛人が入り込んだ時点で、ブランシュに俺が帰って来ると言わなかった? これは、緊急事態に匹敵する事態だ」
アーロンが不機嫌そうにそう問えば、クウェンティンは不思議そうに答えた。
「僕は旦那様から奥様を、一年間必ず傷一つなく守るように、意向を最優先するようにとしか、指示されておりません」
「いや、だから……そこは臨機応変にだな……」
困ったように言ったアーロンに、クウェンティンは生真面目に言い返した。
「旦那さまからは、奥様の御身を第一にお守りすること、それに奥様の意向を最優先するようにとしか、聞いておりません。旦那様は必ず一年以内に戻られるので、帰って来て下されば、あの放蕩者と偽愛人については、すぐに解決すると思っておりました」
確かに、クウェンティンは私の希望通りに動いてくれた。
ヒルデガードを殺そうと言った時も、それは止めて欲しいと言ったのは私だし……身重なサマンサを追い出さないでくれと、クウェンティンにお願いしたのも私……。
執事クウェンティンはアーロンに言われた通り、私の意向を最大限に尊重してくれた。
「わかった。もう良い……確かにお前が言う通りだ。どうやら、俺の指示が悪かったようだ。悪かった」
アーロンはすんなりと自分の指示が悪かったと認め、クウェンティンに謝った。私は二人の会話を聞いていて、正直に言ってしまえば驚いた。
雇用主で気位の高い貴族がこうして使用人に非を認め謝るなんて、通常であれば、あり得ないはずだからだ。
けれど、アーロンもクウェンティンも特に動揺しない様子で話を先へと進めて行く。
「……ヒルデガード様が奥様に再婚を迫っていた時も、旦那様に帰ってきたら問答無用で殺せと指示を頂いておればと、とても後悔をしました」
「……なんだと? ヒルデガードが、ブランシュに再婚を迫っていただと? それは、事実なのか?」
「はい。亡くなった兄の財産は、美しい妻も、すべて俺のものだと言っておりました」
……確かにヒルデガードは、そう言っていた。兄はこうして生きていて、弟の彼の出る幕は無くなってしまった訳だけど。
クウェンティンの言葉の後、私は部屋の温度が何度が下がったような気がした。
淡々と状況説明をしたクウェンティンに、アーロンは感情を見せずに頷いた。
「よし。わかった。ヒルデガードを追え。殺そう」
「御意」
アーロンは血の繋がった実の弟を殺そうと指示して、クウェンティンは当たり前のように頷いた。
うっ……嘘でしょう!
「まっ……待ってください! その程度で弟を殺すなんて、いけません!」
このまま黙ったままでいると、大変なことになってしまうと、私は慌てて二人の会話に口を挟んだ。
「何故だ。ブランシュ。君だって、そんなことを言われて、不快だっただろう。それに、あいつは実際のところ死刑になっていてもおかしくない男だ。ブランシュが気に掛ける価値はない」
「けれど……だからと言って、殺してはいけません……アーロン。落ち着いてくださいっ……」
私は彼の名前を自然に呼んだことに気がついて、手で口を覆ったけれど、アーロンは嬉しそうに微笑んでくれて、私は心臓が止まりそうになった。
血煙の軍神と呼ばれるまでに、とても恐ろしい男性なのに、それなのに、嬉しそうな笑顔がとても可愛かったから。
「旦那様……?」
「……アーロンで良い。ブランシュ、本当に悪かった。再婚可能になるまでの一年間は君には誰も手が出せまいと思っていたが、まさかあの弟がこの邸へ舞い戻って来るとは、夢にも思わなかった」
「あ……あの……」
「もう何の心配もない。大丈夫だ。とりあえず、ブランシュはここで休んでいてくれ。俺は城に行かなければならない。後から、ゆっくり話をしよう」
私の手を持ってアーロンは目を合わせ、私は緊張で声が出せずにただ頷くだけしか出来なかった。
え? ……殺しても良いですって?
私は夫が言ったことを信じられなくて、目を見開いてしまった。
「ですが、奥様に止められました。旦那様より、奥様の意向を最優先にせよとお聞きしておりましたので」
「……では何故、ヒルデガードや偽の愛人が入り込んだ時点で、ブランシュに俺が帰って来ると言わなかった? これは、緊急事態に匹敵する事態だ」
アーロンが不機嫌そうにそう問えば、クウェンティンは不思議そうに答えた。
「僕は旦那様から奥様を、一年間必ず傷一つなく守るように、意向を最優先するようにとしか、指示されておりません」
「いや、だから……そこは臨機応変にだな……」
困ったように言ったアーロンに、クウェンティンは生真面目に言い返した。
「旦那さまからは、奥様の御身を第一にお守りすること、それに奥様の意向を最優先するようにとしか、聞いておりません。旦那様は必ず一年以内に戻られるので、帰って来て下されば、あの放蕩者と偽愛人については、すぐに解決すると思っておりました」
確かに、クウェンティンは私の希望通りに動いてくれた。
ヒルデガードを殺そうと言った時も、それは止めて欲しいと言ったのは私だし……身重なサマンサを追い出さないでくれと、クウェンティンにお願いしたのも私……。
執事クウェンティンはアーロンに言われた通り、私の意向を最大限に尊重してくれた。
「わかった。もう良い……確かにお前が言う通りだ。どうやら、俺の指示が悪かったようだ。悪かった」
アーロンはすんなりと自分の指示が悪かったと認め、クウェンティンに謝った。私は二人の会話を聞いていて、正直に言ってしまえば驚いた。
雇用主で気位の高い貴族がこうして使用人に非を認め謝るなんて、通常であれば、あり得ないはずだからだ。
けれど、アーロンもクウェンティンも特に動揺しない様子で話を先へと進めて行く。
「……ヒルデガード様が奥様に再婚を迫っていた時も、旦那様に帰ってきたら問答無用で殺せと指示を頂いておればと、とても後悔をしました」
「……なんだと? ヒルデガードが、ブランシュに再婚を迫っていただと? それは、事実なのか?」
「はい。亡くなった兄の財産は、美しい妻も、すべて俺のものだと言っておりました」
……確かにヒルデガードは、そう言っていた。兄はこうして生きていて、弟の彼の出る幕は無くなってしまった訳だけど。
クウェンティンの言葉の後、私は部屋の温度が何度が下がったような気がした。
淡々と状況説明をしたクウェンティンに、アーロンは感情を見せずに頷いた。
「よし。わかった。ヒルデガードを追え。殺そう」
「御意」
アーロンは血の繋がった実の弟を殺そうと指示して、クウェンティンは当たり前のように頷いた。
うっ……嘘でしょう!
「まっ……待ってください! その程度で弟を殺すなんて、いけません!」
このまま黙ったままでいると、大変なことになってしまうと、私は慌てて二人の会話に口を挟んだ。
「何故だ。ブランシュ。君だって、そんなことを言われて、不快だっただろう。それに、あいつは実際のところ死刑になっていてもおかしくない男だ。ブランシュが気に掛ける価値はない」
「けれど……だからと言って、殺してはいけません……アーロン。落ち着いてくださいっ……」
私は彼の名前を自然に呼んだことに気がついて、手で口を覆ったけれど、アーロンは嬉しそうに微笑んでくれて、私は心臓が止まりそうになった。
血煙の軍神と呼ばれるまでに、とても恐ろしい男性なのに、それなのに、嬉しそうな笑顔がとても可愛かったから。
「旦那様……?」
「……アーロンで良い。ブランシュ、本当に悪かった。再婚可能になるまでの一年間は君には誰も手が出せまいと思っていたが、まさかあの弟がこの邸へ舞い戻って来るとは、夢にも思わなかった」
「あ……あの……」
「もう何の心配もない。大丈夫だ。とりあえず、ブランシュはここで休んでいてくれ。俺は城に行かなければならない。後から、ゆっくり話をしよう」
私の手を持ってアーロンは目を合わせ、私は緊張で声が出せずにただ頷くだけしか出来なかった。
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