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06 自白
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「そう……? あ。良かったら、これから生徒会で二次会するんだけど、君も来ない?」
「え? 私は部外者ですけど、良いんですか?」
私はとても浮かれていた。
念願の卒業証書を手にし、乙女ゲームのエンディングだって見届けた。後は私の人生を、着実に歩いて行くだけだと、そう思って居た。
だから、この乙女ゲームの世界で、主要人物を見納めしても良いかなと思った。
「うん。全然良いよ。皆も部外者は、呼んでいるからね」
クラウスはエスコートするように私の手を取ったので、そのまま、二階へと階段を上がった。
「……こちらは、個室になっているんですね」
「そうそう。学園行事に王族や貴族を招待することもあるからね。その一室を使うんだ」
私は一般生徒で全くそんなことを知らずに生きてきたので、感心しながらクラウスの隣を歩いた。
「こっちだよ。アドリアナ」
「あ。はい」
私は扉を開けた彼に促され、部屋へと足を踏み入れた。けれど、そこには誰も居なくて、私はきょろきょろと部屋の中を見回した。
お祝いの席であることを示すように、シャンパンや軽食は置かれているのだけど、参加者が誰も居ない。
「……まだ、来ていないみたいだね」
「あ。そうなんですね。皆様、忙しい方たちですものね」
しんとした部屋の中でクラウスの声は響き、私もそれはそうかと頷いた。
「アドリアナ。良かったら、こちらに座ったら? 立ちっぱなしで驚いただろう」
「あ。ありがとうございます……実は、踵の高い靴は履き慣れなくて、足が痛くて……」
ドレスに合わせたかなり高価な靴だから、靴擦れは出来ていないだろうけど、慣れない靴に足は悲鳴をあげていた。
ふわふわとしたソファへ座った私の前に、クラウスがなぜか跪いた。
「靴を脱がそうか? 一人では難しいだろう?」
ドレスには広げる用のしっかりとしたパニエがあり、確かにこれでは靴を脱ぐのは難しい。
「……お願いできます?」
皆が来るまでの間とは言え、少しの時間だけで窮屈な空間から足を解放してあげたかった。
「もちろん……失礼するね」
私が差し出した足から靴を抜き取り、クラウスはそれをどこかに持って行った。
「あの……?」
「ああ。この部屋では不要だし、今は痛むのなら、履くのは帰る時で構わないだろう」
この部屋にはふかふかの絨毯が敷かれていて、私のドレスの裾は長い。誰も靴を履いていないと気がつかないだろう。
それもそうかと頷き、クラウスが代わりに手にして戻って来たシャンパングラスを取った。こくんと飲み込むと美味しくて思わず彼に微笑む。
「凄く、美味しい! ……皆さん、もうすぐ来ます?」
「いや、来ないよ。ここには、君と僕の二人」
「……え?」
信じがたい言葉を耳にして、私は驚いた。それに、お腹の中がカッと熱くなるような不思議な感覚。すぐ隣に居るクラウスの眼鏡の奥の目は、とてもとても楽しそうだった。
「……アドリアナ・レオーネ。君の名前だよね?」
「はい」
私は自分の口が勝手に動いて、身体が動かせないことに気がついた。さっきのシャンパンに、何か入っていたのかもしれない。
「……君は何故、僕を良く見て居た?」
「だって、外見が綺麗だし……目の保養に、とても良かったからです」
「では、何故、僕を避けていた?」
「クラウスはとても女性ファンが多いので、妬まれると勉強する時間がなくなります」
「ふーん……なるほど。では、アドリアナは僕のことは、男性として好き?」
「好きです」
「……僕とキスしたいかい?」
「はい」
まるで尋問のように、繰り返される質問。淡々と私は答えていた。
え? え? 何、これは……クラウスはしばし、考えているようだったけど、次の質問に私は目が飛び出るのかと思った。
「え? 私は部外者ですけど、良いんですか?」
私はとても浮かれていた。
念願の卒業証書を手にし、乙女ゲームのエンディングだって見届けた。後は私の人生を、着実に歩いて行くだけだと、そう思って居た。
だから、この乙女ゲームの世界で、主要人物を見納めしても良いかなと思った。
「うん。全然良いよ。皆も部外者は、呼んでいるからね」
クラウスはエスコートするように私の手を取ったので、そのまま、二階へと階段を上がった。
「……こちらは、個室になっているんですね」
「そうそう。学園行事に王族や貴族を招待することもあるからね。その一室を使うんだ」
私は一般生徒で全くそんなことを知らずに生きてきたので、感心しながらクラウスの隣を歩いた。
「こっちだよ。アドリアナ」
「あ。はい」
私は扉を開けた彼に促され、部屋へと足を踏み入れた。けれど、そこには誰も居なくて、私はきょろきょろと部屋の中を見回した。
お祝いの席であることを示すように、シャンパンや軽食は置かれているのだけど、参加者が誰も居ない。
「……まだ、来ていないみたいだね」
「あ。そうなんですね。皆様、忙しい方たちですものね」
しんとした部屋の中でクラウスの声は響き、私もそれはそうかと頷いた。
「アドリアナ。良かったら、こちらに座ったら? 立ちっぱなしで驚いただろう」
「あ。ありがとうございます……実は、踵の高い靴は履き慣れなくて、足が痛くて……」
ドレスに合わせたかなり高価な靴だから、靴擦れは出来ていないだろうけど、慣れない靴に足は悲鳴をあげていた。
ふわふわとしたソファへ座った私の前に、クラウスがなぜか跪いた。
「靴を脱がそうか? 一人では難しいだろう?」
ドレスには広げる用のしっかりとしたパニエがあり、確かにこれでは靴を脱ぐのは難しい。
「……お願いできます?」
皆が来るまでの間とは言え、少しの時間だけで窮屈な空間から足を解放してあげたかった。
「もちろん……失礼するね」
私が差し出した足から靴を抜き取り、クラウスはそれをどこかに持って行った。
「あの……?」
「ああ。この部屋では不要だし、今は痛むのなら、履くのは帰る時で構わないだろう」
この部屋にはふかふかの絨毯が敷かれていて、私のドレスの裾は長い。誰も靴を履いていないと気がつかないだろう。
それもそうかと頷き、クラウスが代わりに手にして戻って来たシャンパングラスを取った。こくんと飲み込むと美味しくて思わず彼に微笑む。
「凄く、美味しい! ……皆さん、もうすぐ来ます?」
「いや、来ないよ。ここには、君と僕の二人」
「……え?」
信じがたい言葉を耳にして、私は驚いた。それに、お腹の中がカッと熱くなるような不思議な感覚。すぐ隣に居るクラウスの眼鏡の奥の目は、とてもとても楽しそうだった。
「……アドリアナ・レオーネ。君の名前だよね?」
「はい」
私は自分の口が勝手に動いて、身体が動かせないことに気がついた。さっきのシャンパンに、何か入っていたのかもしれない。
「……君は何故、僕を良く見て居た?」
「だって、外見が綺麗だし……目の保養に、とても良かったからです」
「では、何故、僕を避けていた?」
「クラウスはとても女性ファンが多いので、妬まれると勉強する時間がなくなります」
「ふーん……なるほど。では、アドリアナは僕のことは、男性として好き?」
「好きです」
「……僕とキスしたいかい?」
「はい」
まるで尋問のように、繰り返される質問。淡々と私は答えていた。
え? え? 何、これは……クラウスはしばし、考えているようだったけど、次の質問に私は目が飛び出るのかと思った。
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