限界王子様に「構ってくれないと、女遊びするぞ!」と脅され、塩対応令嬢は「お好きにどうぞ」と悪気なくオーバーキルする。

待鳥園子

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「っ気にするよ! 待ってくれ。何故、ローレンはそんなに平静な態度なんだ?」

「……え? 大丈夫ですよ。胸くらい。弟のクインも、ふざけて触ったりしましたよ」

 クインは物心ついた頃から母が病気で、乳母と私が育てたようなものだった。

 とは言え、数年前に母が亡くなってから急に大人びてしまったクインは、姉の私に対し礼儀正しく接するようになり、全くそんなことをしなくなってしまったけど。

「弟が? 待ってくれ……姉が居る弟は、そういう環境が当たり前なのか?」

 大きな衝撃を受けた表情になったギャレット様は、そこそこ大きくなったクインが今も当たり前のように触っていると誤解しているのかも知れない。

「あの……それって、数年前のことですよ。流石にあの子も、今はしないですよ」

 私は勘違いしているのだろうと微笑み、ギャレット様は納得したように頷いた。

「そうか! そうだよな。いや、だからと言って良い訳でもないんだが……複雑だ」

 ギャレット様は両手で頭を抱えて、考え込んでいるようだ。彼には腹違いの弟が二人居るきりだし、姉妹が居るという感覚がわかりづらいのかもしれない。

「ギャレット様も結婚をすれば、遠慮なく触れると思いますよ」

 ええ。それは、私ではない違う女性の胸ですけど。ペルセフォネ嬢は痩身の女性だけど、大きいから良いわけでなく、そういう小さな胸もお好きな人が居るらしいし。

「遠慮なく!? いや、遠慮はするだろうけど、遠慮はしなければ、おかしくないか!?」

 しまった。結婚したら私の胸を遠慮なく触っても良いですよと、彼は取ってしまったのかもしれない。

 けれど、ここで先ほど自分が言った言葉を否定するのもおかしいかと、私は重ねて言った。

「いいえ。遠慮はしなくて良いと思います。夫婦ですもの」

 私は真面目な顔をしてそう言うと、ギャレット様の動きは止まり、その場に変な沈黙が落ちた。

「……すまない。そういえば、そろそろ戻らなければならないと思うし、俺は帰る」

 ギャレット様はふらふらとして立ち上がり、見ているこちらが心配になるような頼りない足取りで、図書室を出て行った。

 なんだか……よくよく考えて見ると、余計なことを言ってしまったかも知れない。けれど、言ってしまった言葉は戻らないし……過去は変わらないし。

 私が彼を裏切るまで、もうすぐだし。
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