花は風と共に散る【美醜逆転】

本編

迷路

恥ずかしいけど、今度人を見つけたら絶対帰り道を聞こう。私は決心した。今の状況、そう私はジョッシュ隊長に渡すはずの書類袋を片手に広い城の中で絶賛迷子中。
最初にあの赤い髪を見つけたと思って曲がった通路が悪かったのかなぁ。誰もいない大きな廊下に立ち止まっていても事態は好転しないので反省しながら歩き出す。

その時、ふわっと光が揺れた気がした。違う、金髪碧眼、リプリ団長のような色合い、そう、私が見ると美男子が現れた。多分世間的に見ると凶暴な顔立ちだと思う。
「…君は？ここは立ち入り禁止になっているはずだが」
やっぱり声も魅力的だった。
「あ、申し訳ありません。恥ずかしながら迷子になってしまって…会議棟への道を教えて頂けますか？」
子供じみたお願いに顔を赤く染めながらお願いする。立ち入り禁止の場所にいるこの人は誰なんだろう？

「…君は僕を怖くないのか？」
「え？ええっと、別に怖くないです」
「そうか、変なことを聞いてすまない。すごく、反応が新鮮だったんだ」
「私、よく変わっているって言われます」
ふふっと笑うと名も知らぬ彼もまた笑う。
「そうか…そうだろうな…若い女の子とこんなに話したのは初めてだ」
「あの、もしかしてリプリ団長のこと知っていますか…？」
私は気になって尋ねた。あまりにも色彩や顔立ちが似ているからだ。
「…リプリは母方の従兄弟だ。君はリプリとは？」
「ええっと、黒竜騎士団の寮で今はお勤めさせて頂いています。ガードルートと言います」
「…そうか、僕は…名乗るほどでもないな…」
寂しげな笑みを浮かべると、彼は俯いた。すこし長めの金色の髪が揺れる。
「こちらを真っすぐ行けば主塔の方に出られるはずだ」
道の先を指差すと、彼は綺麗な顔で笑った。そんな仕草も見惚れてしまうくらい綺麗な人だ。
「ありがとうございました」
と、私がお礼を言うのも早々に来た道を戻って行ってしまう。
こんなところに1人、居るんだなぁ？リプリ団長の従兄弟だというし、また聞いてみよう。私は首を捻りながら、寮への道を帰って行った。