花は風と共に散る【美醜逆転】

待鳥園子

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「王はもう知っている。…そして出来ればレオンハルトが好ましく思っている君が妃になることをお望みだ」
「…そんな…」
「…ガードルート、レオンハルトは嫌いか?」
静かにリプリ団長が聞いた。私は首を振った。嫌いではなかった。どちらかというと好ましく思っていた。
「もし良かったら一度彼と話してもらえないか?」
「わかりました…でも、前回のようなことがあったら、絶対に許しません。リプリ団長、あなたもです。もう絶対に、城には戻らないと思います」
「約束する。僕の名誉に賭けて」
私は後ろにいたヴィンセントさんの手をギュッと握った。


「ガードルート、済まなかった。僕の責任だ」
「頭を上げてください。貴方も被害者であることは分かっています」
私は深く頭を下げるレオンに向かって言った。いつも煌めいて見える彼の金髪もどこか色あせて見えるくらい憔悴してしまっている。
「あんな…あんな真似をするなんて…本当に申し訳ない…」
綺麗な青い宝石のような目からははらはらと涙が出てこぼれて、私も胸が苦しくなった。
「レオン…」

「揃ったか」
突然かけられた言葉に振り向けば、豪奢な衣装を着た壮年の男性が立ったまま私たちを見下ろしていた。
「父上!何故…」
レオンの父上?ということは王様?
なんで私の前に王様が?混乱する頭を落ち着かせるように膝の上で両手をギュッと握った。
「レオンハルト。お前はそのまま聞け」
動けないまま固まってしまった2人を横目に悠々と近くまで歩いてきた。
「君がガードルートだな」
「…はい」
「君には頼みたいことがある。よく聞いてくれ」
私はぎこちなく頷いた。
「時間もないので率直に言う。ガードルート、レオンハルトを君の恋人の1人に加えてもらえないか」
「なっ、父上!」
「別に他の恋人達と別れろとは言わない。レオンハルトを哀れと思うなら叶えて欲しい」
「それは、どういう?」
「君がというのは良く知っている。最初に会った時リプリの顔を見ても眉一つ動かさなかったそうだな。それに恋人達についても、聞いている…そんな君になら、私の大事な息子を任せられる。…レオンハルトの母親はリプリの母親の妹にあたるんだ。私が人生でこの人だと決めた人との息子でね、親馬鹿と言われようが、地位ではなく純粋に愛されて欲しいと願っている。心からね」
「父上、やめて下さい。お願いし」
「レオンハルト、お前はいつも我慢ばかりだったな…人生で一度くらい欲しい物を願ってみろ」
「…ガードルートに負担はかけられません」
「レオンハルト、一生後悔するぞ。ガードルート…君の恋人達は全員黒竜騎士団のようだな」
「えっと、はい。そうです」
私は戸惑いながら、頷いた。
「危ない前線に行くことも多いだろう。気をつけた方が良いな。
平然と放たれた言葉に目の前が真っ暗になった気がした。察しの悪い私でもわかる。

この人の言葉に従わないなら、恋人達の命はない、と。
そう言われたんだ。
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