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145話目 RaffHelgenというチーム
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地面に当たった音符猫の火球は草の生い茂ったこの草原の一部を枯地へと変えている。
サラサラな灰になった草を思いっきり蹴り上げ、相手の魔法使いの顔をめがけて振りかける。
「ううぇッ!?」
そのまま突撃してきて手に握った双剣で攻撃するかと思いきや、直前で止まって足を大きく振り上げた。
その行動に驚いたらしく、魔法使いはなかなか特殊な叫び声を小さく上げた。
振り上げた右足とは反対の左足を軸として、右足にのみ空中ジャンプのスキルを発動すると、発動者である私が驚くレベルで勢いのついた右足は、相手の顔に見事クリーンヒットした。
またもや特殊な叫び声を響かせながら飛んで行った彼は、起き上がるとこちらを見ながら顔を紅潮させた。
そして、私の目を見ると、にやりと笑って見せた。
その瞬間、私の背筋がヒヤリと凍ったように感じた。
それとともに、とてつもない罪悪感が私の思考を支配する。
目の前にいるのは中学生くらいの男の子、私が思いっきり蹴ると顔を紅潮させながらこちらに笑いかけている。
私が悪いのだろうか……
恐怖が芽生えてくるほどのこの感情を鎮めるため、私は心を無にして相手に近づき、切り捨てた。
私が近づいたとき、「新たな扉……!」などと抜かしていたが、この草原には扉など存在しないので聞き間違えだろう。
聞き間違えだと思いたい。
思わせてくれッ!!
「ユウヒ……」
「なんちゅう顔でこっちを見てるんだ……」
なぜかうれしそうな顔をしながらこちらに近づいてくる音符猫、開いている両手を使って魔法で牽制することは忘れない。
「新たな扉……!」
にやにや笑いながらそう言ってくるものだから、「お前のも開いてやろうか。」と返しておいた。
ああ、申し訳ない少年よ。
何が申し訳ないっておそらく音符猫に目をつけられてしまっていることが申し訳ない。
きっとゲーム内で出会ったら馬鹿にされるんだろう。
「そういえばさっきのやつ、私のリア友なんだよね。」
「申し訳ないッ!!!!!」
最大限の謝罪を込めて……。
「誰に手を合わせてんだよ」
少年に向かって手を合わせながら謝罪をしていると、横から突っ込みが入った。
気にせず頑張ろう。
あちらこちらで繰り広げられている戦いは、少しずつだが進行している。
私が先ほど倒した少年のほかにも、すでに2人倒れている。
現在の状況は3対2対2でCentres Gamingが有利だ。
ただ、隠れている2人を開放すれば私たちの有利だ。
「Centresじゃない方ってチーム何?」
そういえば先ほどから気になっていたことである。
私が見たことのないチーム、ただ視界の端に映っているプレイスタイルは洗練されていて素晴らしい。
ただ、カバーが遅いのがここまで押されている原因なのだろう。
「ああ、あのチームはRaffHelgenっていうチームだよ。もともと私がいたところ。」
音符猫がもともといたチーム……通りでカバーが遅れているわけだ。
音符猫は魔法使いなのだからもちろん遠距離からのカバーができる。
それに、接近戦でも極めて高い戦闘能力を発揮する彼女には、通常必要な魔法使いに対するカバーが必要ない。
彼女はRaffHelgenでカバーの大半を任されていたのだろう。
確かに個々の戦闘能力も大事だ。
ただ、カバーの方が大事だ。
カバーが優れているチームはここの実力がボチボチでも何とかやっていける。
誰かが倒されてもすぐにその相手を倒すことで、人数状況を常にイーブンに保つことができる。
それは有利不利の状況が生まれにくく、相手にペースも掴まれない。
そのカバーの要であった音符猫がいない。
単独でその役割を任せすぎていたのが悪かったのかもしれないな。
サラサラな灰になった草を思いっきり蹴り上げ、相手の魔法使いの顔をめがけて振りかける。
「ううぇッ!?」
そのまま突撃してきて手に握った双剣で攻撃するかと思いきや、直前で止まって足を大きく振り上げた。
その行動に驚いたらしく、魔法使いはなかなか特殊な叫び声を小さく上げた。
振り上げた右足とは反対の左足を軸として、右足にのみ空中ジャンプのスキルを発動すると、発動者である私が驚くレベルで勢いのついた右足は、相手の顔に見事クリーンヒットした。
またもや特殊な叫び声を響かせながら飛んで行った彼は、起き上がるとこちらを見ながら顔を紅潮させた。
そして、私の目を見ると、にやりと笑って見せた。
その瞬間、私の背筋がヒヤリと凍ったように感じた。
それとともに、とてつもない罪悪感が私の思考を支配する。
目の前にいるのは中学生くらいの男の子、私が思いっきり蹴ると顔を紅潮させながらこちらに笑いかけている。
私が悪いのだろうか……
恐怖が芽生えてくるほどのこの感情を鎮めるため、私は心を無にして相手に近づき、切り捨てた。
私が近づいたとき、「新たな扉……!」などと抜かしていたが、この草原には扉など存在しないので聞き間違えだろう。
聞き間違えだと思いたい。
思わせてくれッ!!
「ユウヒ……」
「なんちゅう顔でこっちを見てるんだ……」
なぜかうれしそうな顔をしながらこちらに近づいてくる音符猫、開いている両手を使って魔法で牽制することは忘れない。
「新たな扉……!」
にやにや笑いながらそう言ってくるものだから、「お前のも開いてやろうか。」と返しておいた。
ああ、申し訳ない少年よ。
何が申し訳ないっておそらく音符猫に目をつけられてしまっていることが申し訳ない。
きっとゲーム内で出会ったら馬鹿にされるんだろう。
「そういえばさっきのやつ、私のリア友なんだよね。」
「申し訳ないッ!!!!!」
最大限の謝罪を込めて……。
「誰に手を合わせてんだよ」
少年に向かって手を合わせながら謝罪をしていると、横から突っ込みが入った。
気にせず頑張ろう。
あちらこちらで繰り広げられている戦いは、少しずつだが進行している。
私が先ほど倒した少年のほかにも、すでに2人倒れている。
現在の状況は3対2対2でCentres Gamingが有利だ。
ただ、隠れている2人を開放すれば私たちの有利だ。
「Centresじゃない方ってチーム何?」
そういえば先ほどから気になっていたことである。
私が見たことのないチーム、ただ視界の端に映っているプレイスタイルは洗練されていて素晴らしい。
ただ、カバーが遅いのがここまで押されている原因なのだろう。
「ああ、あのチームはRaffHelgenっていうチームだよ。もともと私がいたところ。」
音符猫がもともといたチーム……通りでカバーが遅れているわけだ。
音符猫は魔法使いなのだからもちろん遠距離からのカバーができる。
それに、接近戦でも極めて高い戦闘能力を発揮する彼女には、通常必要な魔法使いに対するカバーが必要ない。
彼女はRaffHelgenでカバーの大半を任されていたのだろう。
確かに個々の戦闘能力も大事だ。
ただ、カバーの方が大事だ。
カバーが優れているチームはここの実力がボチボチでも何とかやっていける。
誰かが倒されてもすぐにその相手を倒すことで、人数状況を常にイーブンに保つことができる。
それは有利不利の状況が生まれにくく、相手にペースも掴まれない。
そのカバーの要であった音符猫がいない。
単独でその役割を任せすぎていたのが悪かったのかもしれないな。
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