君の眼と精神

鈴鳴

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その日はすごくいい天気で、太陽の明るさに何かがふと照らされて目の当たりにするみたいだった。
明るいなんて異様だ。笑っている人間とか、怖くて見ていられない、眩しすぎる光に照らされると何も見えなくなる。何かを描ければいいのにちょうどいいモチーフが今は手元になかった、どうしてこの部屋は最近がらんとしてるんだっけ。恐ろしくなって、僕は部屋を出た
出ようと、した。
でもドアノブに手を掛けた時コンコンとノックされる音が響いた。ここは僕だけしか使わない部屋だからこんなふうに誰かがノックをすることなんてない。
驚いて体が固まる。
……淡い薄緑のような色合いの木製のドア。体当たりすれば砕くことだってできるだろう。
どうしようか考えたけど頭が働かないみたいだった。ドアにはのぞき窓もない、インターホンもない、外に何がいるかなんてわからなくて、何が居たって大抵の相手より僕は大きいだろうし力も強いだろうけど、だからって開けるのかどうか決められない。そんなことで何も変わらないんだとしても。変わらないんだろうから。
ドアの前で躊躇って立ったままただ無為に時間を過ごしてるうちにノックの音は幻覚だったような気がしてきた。
部屋に引き返そうとして振り返った僕の目の前には真っ赤な夕日が広がっていた、開け放したままだったカーテンの 掃き出し窓から見える夕焼け
血の色みたいで、
花の色みたいで
あの踏切の 音が、耳の奥で響く
膨張する
ガチャンと別の音に割られて気づいたらふらついた僕の手はドアノブを下げ切ってドアを開けてしまっていた。
「わ」
背中を誰かに支えられる。誰かに、ドアの外にいた人。
幻聴だったはずの存在は僕の体を触れて支えていて、190近くある僕の身長とそんなに変わらないくらいの位置で肩に手が添えられた。
赤い色が 目の端にかかる
咄嗟に飛び退くように室内へ戻ろうとして、尻餅をついた。床に手をついたせいで散乱していた釘が何本か手のひらに刺さる。
みっともなく動揺する僕に何を思っているのか、赤い髪をかすかに揺らして相手は首を傾げて、室内に一歩踏み込んできた。
「……きみ は、…」
彼を真正面からはっきりと見る。やっぱり僕と同じくらい背が高い、足元はスニーカーでデニムの褪せたズボンを履いてて、上の服はゆるっとしたニット、全体にダボ付きがあるから余計にシルエットは大きく見える、皺の寄り方から見るに逆三角形の体型だけど威圧感のない植物のような佇まいの、細身の青年だ、枯れ草色のニットの袖から少し手が出ていてその手を胸元で握るようにしてこちらを見下ろしてる、肌の色は小麦色か少し白くて赤い髪で、そばかすとかありそうなクォーターにでもいそうな色素の、
その顔は 花が咲いたように美しく壊れていた。
目元から …頬 ところどころ首筋にもかけて、痣と 細かな凹凸の 陰影が、びっしりと顔の上半分を覆っている
こちらを視線が向いているかも分かりづらい、目を閉じているのと開いているのが同じような花の虹彩が 夕日を反射している。
「綾瀬香澄だよ。直人に会いにきたんだ」
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