もう我慢しなくて良いですか?

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第一部

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パーティーからの帰りも行きと同様の辻馬車で帰宅したが、道中でメリシャはパーティーの疲れから眠りに着いてしまった。宿へ着いた後、メリシャを寝室に寝かせた枢機卿は窓辺に設置された小さなテラスにて夜空の下でワインを開けた。
その対面となる席にはルーが大型犬サイズで座り、テーブルにはネリが重量を感じさせたいほど軽く降り立った。

「ルー様。ネリ様。此度は手助けしていただき、誠に感謝したく存じ上げます。」

『それより何かあの王子に疑念を抱いておるな?それを話せ。』

「ははは。やはり神獣様には見抜かれてしまいましたか。私も人伝にて聞き及んでいた程度であります故、本当の事が何処までかは存じ上げません。本来婚約者であれば、王子がメリシャを伴って貴族たちと挨拶を回ると思っておりました。」

耳をピンと立てたルーが鋭い目付きで枢機卿の目を睨み返しながら話を促す。

『ふむ。それで?』

「ですが神獣様も見ましたように、ギェリブ王子はメリシャとダンスを踊った後、何も言わずに立ち去って行きました。これに私は異常だと感じ取りました。現状では、こちらから拒絶することは叶いませんが、此度の婚約の裏に何が隠されているか不安しかありません。」

『では、あの王子はメリシャ様を蔑ろにしたというのだな?』

『今からでも指の数本でも不祥事で折りに行くか。我らの主に手を出そうとは』

今にも行動を起こしそうな二体の神獣に枢機卿は必死に訴えることに徹した。彼らが動けば、間違いなくが起こるだろう。

「お待ちください。これは私の見解であって、事情は分かりません。この国の王族の常識が違うのかもしれません。仮に手を出してしまえば、メリシャ様が国に留まれなくなってしまいます。そうなれば悲しまれるのはメリシャ様でございます。どうか御再考ください。」

『ふむ。ルーよ、メリシャ様に責任が向かうのは流石に許容出来かねんぞ。我等のみで行動するわけにも行くまい。』

『むぅ。腹立たしいが、仕方ないな。だが枢機卿、仮にメリシャ様が悲しむような事態に陥った際には分かっておろうな。』

「はっ!そのような事が起こらぬよう、徹底いたします。ですが行動に出る前に、せめてメリシャ様の御許可だけは得てくださいませ。」

『『留意しておこう。』』

その晩は朝日が昇るまで夜会が続き、翌朝、枢機卿は寝不足かつ二日酔いで身動きが取れない状況に陥ってしまった。その日は教会に枢機卿を預けて、勉強会で仲が良くなった神官と、入学に向けた物件探しへと赴くのだった。
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