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第一章 指を締め付ける鎖
5 結婚を終わらせる覚悟
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◇◇
太陽が顔に当たり、激しい頭痛に少し顔を顰めながら目を開ける。ベッドには俺一人だ。だけど伸ばした手はしっかりとリースの両手に握られている。彼はベッド横の床に座り、頭を淵に乗せて寝ている。
僅かに動くだけでリースはすぐに目を覚ます。
「少し水を飲めますか?」
頷くと彼は手を離し、離れたテーブルから水を持ってくてくれる。頭を少し上げ、それを数口飲んでから再び横になる。
「……抱かなかったの?」
もはや自分の声らしからぬほどがらがらとした声だ。
「貴方自身が俺と抱き合いたいと思ってくれない限りは手を出しませんよ」
彼は少し姿勢を正す。包み込むような優しい声で問う。
「昨夜の事、話したいですか?」
――――ずっと、誰も、そんな事聞いてくれなかったな
誰も手を差し伸べてくれなかった。
だって、これは俺自身が選んだ人生だから。
俺は静かに最初から話し始めた。
話は長かった。
溜め込んでいた悲しみも怒りも絶望も、全て話した。
された酷い事を話すと彼自身が痛みを感じるように体をびくつかせ、夫の不貞を話すと怒りで手を振るわせてくれる。やがて、昨夜の話をすると彼は堪えきれないように両手で俺の手を握ってくれる。
「彼をまだ、愛していますか?」
俺は少し躊躇をしてから頷く。
「だけど、赤ちゃんがいるのならば、状況が違う。もう一緒にはいられない」
「彼を恨まないのですか?」
「……俺といたせいでこういう生活になったのだったら、これは俺自身が招いた結果だよ。それに彼は最初から男は無理だってちゃんと言った。それでもいいって思った。思っていた」
「彼は何故貴方と結婚をしたのですか。貴方を縛り付ける為としか思えない」
彼は深く溜息を吐く。
「俺は今も貴方とパーティーを組みたい。特に貴方の日常を聞いてからは、絶対に、貴方をここから連れ去りたい。貴方は覚えていなかもしれませんが、寝ている時に俺に『助けて』とはっきりと言いました。だから俺は貴方を助けます。レンさんが決めてください。もしこのまま彼の近くにいるのならば、俺もこの街に残ります。だけど結婚を終わらせる覚悟があるのならば、俺が貴方をここから連れ去ります。貴方には、もっと素晴らしい人生を送る権利がある。貴方が今まで大切な男を護ってきたように、今度は俺が貴方を護ります」
――――『結婚を終わらせる覚悟』……
俺は左手の薬指の指輪を眺めながら体温で温かな金属に触れる。
この一番安い指輪を買った日は俺にとって一番幸せな日だった。カシンも笑っていた。体の関係はなくとも、彼なりに愛してくれていると思っていた。
この、俺の牢屋の鎖。
カシンは俺の看守だ。
「リースはなんで俺と組みたいの? 魔導師としても俺は物凄く強かった訳でもない。なんでそこまでしてくれる?」
「何を言っているんですか。結構強かったですよ。貴方はずっと俺の目標でした。お陰で今では自分の腕にそれなりの自信がありますよ。……貴方は俺の憧れであって、初恋です。久し振りに再会して、やっぱり貴方は素晴らしい男だと改めて思いました。俺の事を少しでも好きになってくれるかもしれないという下心はなくはないですが、それよりも今は貴方とパーティーを組みたい。いっぱい一緒に冒険をしたい」
彼は少し笑いながら答える。
「俺の事を男として好きにならないでもいい。一緒に楽しく冒険をして、貴方が笑ってくれればいい。勿論、俺の事を好きになって貰おうとなんでもしますよ。だけどもしそれでもレンさんが他の男にまた恋をしても、後悔はしない」
彼が笑うと場の雰囲気が少し和らいだ気がする。誰かが優しく俺に微笑んだのが久し振りだからだろうか。
「……連れて行って。俺を、連れ出して」
小さな囁きに彼は優しく微笑む。
「ありがとう」
――――『ありがとう』は俺のセリフなのに……
涙が流れる。
「……っ、ぅっ」
リースは無言で近くに座り、俺の涙が止まるのを待ってくれた。
太陽が顔に当たり、激しい頭痛に少し顔を顰めながら目を開ける。ベッドには俺一人だ。だけど伸ばした手はしっかりとリースの両手に握られている。彼はベッド横の床に座り、頭を淵に乗せて寝ている。
僅かに動くだけでリースはすぐに目を覚ます。
「少し水を飲めますか?」
頷くと彼は手を離し、離れたテーブルから水を持ってくてくれる。頭を少し上げ、それを数口飲んでから再び横になる。
「……抱かなかったの?」
もはや自分の声らしからぬほどがらがらとした声だ。
「貴方自身が俺と抱き合いたいと思ってくれない限りは手を出しませんよ」
彼は少し姿勢を正す。包み込むような優しい声で問う。
「昨夜の事、話したいですか?」
――――ずっと、誰も、そんな事聞いてくれなかったな
誰も手を差し伸べてくれなかった。
だって、これは俺自身が選んだ人生だから。
俺は静かに最初から話し始めた。
話は長かった。
溜め込んでいた悲しみも怒りも絶望も、全て話した。
された酷い事を話すと彼自身が痛みを感じるように体をびくつかせ、夫の不貞を話すと怒りで手を振るわせてくれる。やがて、昨夜の話をすると彼は堪えきれないように両手で俺の手を握ってくれる。
「彼をまだ、愛していますか?」
俺は少し躊躇をしてから頷く。
「だけど、赤ちゃんがいるのならば、状況が違う。もう一緒にはいられない」
「彼を恨まないのですか?」
「……俺といたせいでこういう生活になったのだったら、これは俺自身が招いた結果だよ。それに彼は最初から男は無理だってちゃんと言った。それでもいいって思った。思っていた」
「彼は何故貴方と結婚をしたのですか。貴方を縛り付ける為としか思えない」
彼は深く溜息を吐く。
「俺は今も貴方とパーティーを組みたい。特に貴方の日常を聞いてからは、絶対に、貴方をここから連れ去りたい。貴方は覚えていなかもしれませんが、寝ている時に俺に『助けて』とはっきりと言いました。だから俺は貴方を助けます。レンさんが決めてください。もしこのまま彼の近くにいるのならば、俺もこの街に残ります。だけど結婚を終わらせる覚悟があるのならば、俺が貴方をここから連れ去ります。貴方には、もっと素晴らしい人生を送る権利がある。貴方が今まで大切な男を護ってきたように、今度は俺が貴方を護ります」
――――『結婚を終わらせる覚悟』……
俺は左手の薬指の指輪を眺めながら体温で温かな金属に触れる。
この一番安い指輪を買った日は俺にとって一番幸せな日だった。カシンも笑っていた。体の関係はなくとも、彼なりに愛してくれていると思っていた。
この、俺の牢屋の鎖。
カシンは俺の看守だ。
「リースはなんで俺と組みたいの? 魔導師としても俺は物凄く強かった訳でもない。なんでそこまでしてくれる?」
「何を言っているんですか。結構強かったですよ。貴方はずっと俺の目標でした。お陰で今では自分の腕にそれなりの自信がありますよ。……貴方は俺の憧れであって、初恋です。久し振りに再会して、やっぱり貴方は素晴らしい男だと改めて思いました。俺の事を少しでも好きになってくれるかもしれないという下心はなくはないですが、それよりも今は貴方とパーティーを組みたい。いっぱい一緒に冒険をしたい」
彼は少し笑いながら答える。
「俺の事を男として好きにならないでもいい。一緒に楽しく冒険をして、貴方が笑ってくれればいい。勿論、俺の事を好きになって貰おうとなんでもしますよ。だけどもしそれでもレンさんが他の男にまた恋をしても、後悔はしない」
彼が笑うと場の雰囲気が少し和らいだ気がする。誰かが優しく俺に微笑んだのが久し振りだからだろうか。
「……連れて行って。俺を、連れ出して」
小さな囁きに彼は優しく微笑む。
「ありがとう」
――――『ありがとう』は俺のセリフなのに……
涙が流れる。
「……っ、ぅっ」
リースは無言で近くに座り、俺の涙が止まるのを待ってくれた。
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