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第二章 年下冒険者は俺の痛みを受け止める
7 俺のパートナー
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◇
神殿は問題なく俺の書類を受け取った。
あれだけ俺を苦しめた結婚生活五年間に、あっけなく幕が降りた。
家からは何も持たずにそのままリースと旅路に着く事にした。先ずはここから三週間かかる海へと向かう。彼によると暴れる精霊を鎮める依頼があるらしい。精霊系は俺が昔から得意としていた分野で丁度いいい依頼である。次の三週間は俺のリハビリも兼ねてゆっくりと進む予定だ。
「本当に何も持たなくっても良かったのですか?」
「うん。あの日常をもう思い出したくないから」
お金は彼から借りて必要な物を買う事にし、手ぶらのまま店へと向かう。どの道俺の持っていた服は旅には向かない。お金も全てカシンが取り上げた。
「ねぇ、敬語はやめられそう?」
「落ち着きませ、……ない、……か?」
俺はそのぎこちない言い方に少し笑いながら頷く。
「レンさん、服ぐらい買わせてくださ……、れって。新しい門出のお祝いで」
「もう恩返し出来ないぐらいの恩を貰ったのに悪いよ」
「俺はまだ何もしていない。逆に貴方が俺の夢を叶えてくれているのだから、本当に気にしないで欲しいです。服の好みはありますか?」
いつの間にか敬語に戻っている事に気付いていなさそうだ。それが少し面白く、自然に任せる事にする。首を傾げる。
「何でもいいよ。今の流行りの冒険服って全然分からないし」
「あー……そうですね、流行りは気にしなくともいいのですが、レンさんは絶対に細身の服がいいですよね。あとは久し振りなので軽い革の防具を兼ねた物で……。これなんかどうですか?」
それはとても綺麗な淡い紫の細身の服にベージュ系の革防具が付いた物だ。俺が魔術を使っても邪魔にならない感じの形と重さで、何気に彼の魔導師に対する認識の正確さを物語っている。
「きれ……、いや、やっぱりそれ以外で」
値段を一目見て冷汗が脇の下をしっとりと濡らす。
「お祝いなので値段は気にしなくていいですよ。もっと高いのでもいいですし。それにこれは結構質良さそうで耐性ありそう。いいじゃないですか」
「にしても、ちょっと高過ぎるっ」
「貴方がずっと身に着けてくれるので高過ぎる事はないですよ。それにこんなんでも、ちゃんとそれなりの貯金があります」
「いらっしゃ……、あら……ねぇ、ここは休憩処じゃないよ」
店の女主人は俺の顔を見ると露骨に嫌そうに顔を歪める。リースは俺達の間に入ると彼女に服を渡す。
「これをくれ。あと、俺のパートナーにその態度について謝って貰おう」
「え? ……え? パートナーって……え?」
彼女は困惑をした表情で服を受け取り、俺とリースの顔を行ったり来たりする。
「謝れ」
リースの低く抑えた声は結構な迫力だ。女主人は青褪め、慌てて俺に謝罪をする。リースがお金を払い終わるとすぐに服を俺に渡す。
「着替えたい」
「あの角のブースで着替えられるよ。……一人ずつしか入っちゃダメだからね!」
先入観はなかなか拭えないものらしい。俺はその慣れた他人の態度をなんとも思わないが、リースのこめかみには青筋が立っている。
すぐに奥に引っ込み着替える。冒険者用の服を着ていくと自分がいかにも痩せてしまったのかよく分かる。だが防具を身に着けていると分かっているだけで気持ちが引き締まる。そのとても懐かしい感覚に小さな笑みを浮かべる。
ブースの鏡の中で自分が見つめ返す。線の細い顔、不健康そうな白い肌、濃い灰色っぽい髪に濃淡のはっきりした綺麗な紫の瞳。自分の顔だが色気はあると思う。残念ながら冒険者として威圧感や雄々しさは全くない。
ブースから出て行くとリースがいい表情で笑う。
「レンさん、思った通りよく似合っています。瞳の色が引き立つ。久しぶりの冒険者用の服、どうですか?」
「凄く嬉しい。ありがとう。本当に、色々と……」
「何を言っているんですか。これから貴方のドキドキワクワクな冒険の毎日が再開するんですよ!」
「だけど、本当にもう5年ほど魔導師をしていないから……」
「この街を離れたら先ずは練習しませんか? 俺も貴方の今の力量が知りたいです。カバーするのもして貰う時も守備範囲とかを知らないと」
俺達は会話をしながら街の出口の方へと向かっている。
俺の牢屋の出口だ。
「レン! 勝手に仕事辞めて良いと思っているのかよ!」
怒声に振り返るとアールといつものお得意さんが二人いる。確かその一人がアールを紹介したと聞いた気がする。
「レンさん。こういう馬鹿は俺に任せてくれませんか?」
「……構わないけど、今回は少し力を試してみてもいい? 久し振り過ぎてどうなるか分からないけど」
「勿論いいですよ。技が発動しなければ俺が斬ります。逆に暴発して街が崩壊したら一緒に逃げましょう」
――――凄く、嬉しい提案だなぁ
神殿は問題なく俺の書類を受け取った。
あれだけ俺を苦しめた結婚生活五年間に、あっけなく幕が降りた。
家からは何も持たずにそのままリースと旅路に着く事にした。先ずはここから三週間かかる海へと向かう。彼によると暴れる精霊を鎮める依頼があるらしい。精霊系は俺が昔から得意としていた分野で丁度いいい依頼である。次の三週間は俺のリハビリも兼ねてゆっくりと進む予定だ。
「本当に何も持たなくっても良かったのですか?」
「うん。あの日常をもう思い出したくないから」
お金は彼から借りて必要な物を買う事にし、手ぶらのまま店へと向かう。どの道俺の持っていた服は旅には向かない。お金も全てカシンが取り上げた。
「ねぇ、敬語はやめられそう?」
「落ち着きませ、……ない、……か?」
俺はそのぎこちない言い方に少し笑いながら頷く。
「レンさん、服ぐらい買わせてくださ……、れって。新しい門出のお祝いで」
「もう恩返し出来ないぐらいの恩を貰ったのに悪いよ」
「俺はまだ何もしていない。逆に貴方が俺の夢を叶えてくれているのだから、本当に気にしないで欲しいです。服の好みはありますか?」
いつの間にか敬語に戻っている事に気付いていなさそうだ。それが少し面白く、自然に任せる事にする。首を傾げる。
「何でもいいよ。今の流行りの冒険服って全然分からないし」
「あー……そうですね、流行りは気にしなくともいいのですが、レンさんは絶対に細身の服がいいですよね。あとは久し振りなので軽い革の防具を兼ねた物で……。これなんかどうですか?」
それはとても綺麗な淡い紫の細身の服にベージュ系の革防具が付いた物だ。俺が魔術を使っても邪魔にならない感じの形と重さで、何気に彼の魔導師に対する認識の正確さを物語っている。
「きれ……、いや、やっぱりそれ以外で」
値段を一目見て冷汗が脇の下をしっとりと濡らす。
「お祝いなので値段は気にしなくていいですよ。もっと高いのでもいいですし。それにこれは結構質良さそうで耐性ありそう。いいじゃないですか」
「にしても、ちょっと高過ぎるっ」
「貴方がずっと身に着けてくれるので高過ぎる事はないですよ。それにこんなんでも、ちゃんとそれなりの貯金があります」
「いらっしゃ……、あら……ねぇ、ここは休憩処じゃないよ」
店の女主人は俺の顔を見ると露骨に嫌そうに顔を歪める。リースは俺達の間に入ると彼女に服を渡す。
「これをくれ。あと、俺のパートナーにその態度について謝って貰おう」
「え? ……え? パートナーって……え?」
彼女は困惑をした表情で服を受け取り、俺とリースの顔を行ったり来たりする。
「謝れ」
リースの低く抑えた声は結構な迫力だ。女主人は青褪め、慌てて俺に謝罪をする。リースがお金を払い終わるとすぐに服を俺に渡す。
「着替えたい」
「あの角のブースで着替えられるよ。……一人ずつしか入っちゃダメだからね!」
先入観はなかなか拭えないものらしい。俺はその慣れた他人の態度をなんとも思わないが、リースのこめかみには青筋が立っている。
すぐに奥に引っ込み着替える。冒険者用の服を着ていくと自分がいかにも痩せてしまったのかよく分かる。だが防具を身に着けていると分かっているだけで気持ちが引き締まる。そのとても懐かしい感覚に小さな笑みを浮かべる。
ブースの鏡の中で自分が見つめ返す。線の細い顔、不健康そうな白い肌、濃い灰色っぽい髪に濃淡のはっきりした綺麗な紫の瞳。自分の顔だが色気はあると思う。残念ながら冒険者として威圧感や雄々しさは全くない。
ブースから出て行くとリースがいい表情で笑う。
「レンさん、思った通りよく似合っています。瞳の色が引き立つ。久しぶりの冒険者用の服、どうですか?」
「凄く嬉しい。ありがとう。本当に、色々と……」
「何を言っているんですか。これから貴方のドキドキワクワクな冒険の毎日が再開するんですよ!」
「だけど、本当にもう5年ほど魔導師をしていないから……」
「この街を離れたら先ずは練習しませんか? 俺も貴方の今の力量が知りたいです。カバーするのもして貰う時も守備範囲とかを知らないと」
俺達は会話をしながら街の出口の方へと向かっている。
俺の牢屋の出口だ。
「レン! 勝手に仕事辞めて良いと思っているのかよ!」
怒声に振り返るとアールといつものお得意さんが二人いる。確かその一人がアールを紹介したと聞いた気がする。
「レンさん。こういう馬鹿は俺に任せてくれませんか?」
「……構わないけど、今回は少し力を試してみてもいい? 久し振り過ぎてどうなるか分からないけど」
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