11 / 16
第二章 年下冒険者は俺の痛みを受け止める
11 自制と我慢
しおりを挟む
「解いて欲しいの?」
「貸してください」
リースは俺の手に優しく触れると、その包帯を解いていく。彼の乾いた大きな手はまるで俺が壊れ物であるかのようにとても大事そうに支えてくれる。こんな状況なのに触れられている事に体が少し疼き出す。
包帯が取れると噛み傷は黒く変色している。リースはそれを見ると無言になるが俺はその手をモンスターに差し出す。
化け猫神は耳を後ろに倒して全身で謝っている。悪事を悔いているように尻尾が元気なく垂れている。その小さな口から舌を伸ばし、俺の傷を噛める。物凄く冷たい舌先が触れるとピリッと電気が走る。
「……っ」
その少しザリザリとした感触に少し跳ねる。そして異様に温かな感覚がその場所から広がっていく。
モンスターの小さな舌はゆっくりゆっくりと動く。すでに欲求不満を感じている体に、それはとても辛い感覚だ。
「レンさん、見てください!」
黒く腫れていた傷口の色が抜けて肌色へ戻り、傷口も徐々に閉じていく。
「このモンスターって、治癒能力があるんですか?」
「自分の呪い噛みにだけ効く治癒能力だよ」
俺は手を眺めてからそのモンスターの体に触れる。なるべくゆっくりとした動きで、びっくりさせないように。
「ありがとう。もう痛くないよ」
耳の方を撫でると目を閉じて気持ち良さそうにゴロゴロと喉を鳴らし始める。頭を丸ごと俺の手に押し付ける可愛らしい姿は猫そのものだ。髭の後ろの方を掻いて上げると髭が全部前を向くように出て物凄く可愛い。
「凄い。モンスターを手懐けた人……初めて見ました……」
「手懐けているわけじゃないよ。敬意を払うべき存在にちゃんと敬意を払うと、彼等もきちんと向き合ってくれる」
化け猫神は俺の言葉を理解しているかのように頭を持ち上げて顔を見る。大きな目に自分の姿が映る。その瞳の透明度に吸い込まれそうになって目を合わせていると、唐突、親指と人差し指の間の付け根を甘噛みされる。
モンスターは立ち上がって尻尾を揺らしながら夜の影に溶け込んでいく。
甘噛みされた場所が少し疼く。見てみると赤い点が三つ、小さな逆三角形の形で痕になっている。
「なんですか、それ?」
「なんだろう? 俺も初めて見る」
「えっ、ちょっとやばくないですか? もしかしたら良くない事かもしれないじゃないですか!」
「でもごめんなさいって言っていた気がするから心配ないよ。明日には消えているんじゃない?」
「消えなかったらどうするんですか⁉︎」
「そうなればその時に考えればいいよ」
俺が少し微笑むと、彼は少し眉毛を寄せる。
「俺にも……少しは心配させてくださいよ」
俺はその小さな呟きに首を傾げる。
――――もうすでにいっぱい心配をかけていると思うのだが
「魔力切れの方は……」
「そっちは少し回復出来たからもう大丈夫」
二人の間に少しぎこちない静けさが落ちる。
まだ彼に触れている体の側面が熱い。彼の鼓動も速いままだ。
彼は俺の世話を焼きたがる。物凄く優しく、いつもとても紳士的だ。着替えや泉で水浴びをする時は必ず俺に背を向ける。
俺は彼の優しさに安心をしている。
安心をする反面、何故か物足りない。
何年も毎日のように激しく凌辱されてきた体にとって、それが普通の事になってしまっている。
大切な壊れ物のように彼は最低限しか触れてこない。いつも一定の距離を保ち、決して踏み込んで来ない。その境界線を僅かに踏んでいるのが、今だ。彼は少しぎこちなく俺と視線を合わせない。
そして無言で立ち上がり、俺から離れる。
彼のこの距離が苦しい。
紳士的な振る舞いが、今はきつい。
客に触れられるのは生理的に嫌なのに、今は触れられていない事が嫌だ。
離れたリースが心配そうにこっちを見る視線を感じる。遠慮がちな、視線。
「貸してください」
リースは俺の手に優しく触れると、その包帯を解いていく。彼の乾いた大きな手はまるで俺が壊れ物であるかのようにとても大事そうに支えてくれる。こんな状況なのに触れられている事に体が少し疼き出す。
包帯が取れると噛み傷は黒く変色している。リースはそれを見ると無言になるが俺はその手をモンスターに差し出す。
化け猫神は耳を後ろに倒して全身で謝っている。悪事を悔いているように尻尾が元気なく垂れている。その小さな口から舌を伸ばし、俺の傷を噛める。物凄く冷たい舌先が触れるとピリッと電気が走る。
「……っ」
その少しザリザリとした感触に少し跳ねる。そして異様に温かな感覚がその場所から広がっていく。
モンスターの小さな舌はゆっくりゆっくりと動く。すでに欲求不満を感じている体に、それはとても辛い感覚だ。
「レンさん、見てください!」
黒く腫れていた傷口の色が抜けて肌色へ戻り、傷口も徐々に閉じていく。
「このモンスターって、治癒能力があるんですか?」
「自分の呪い噛みにだけ効く治癒能力だよ」
俺は手を眺めてからそのモンスターの体に触れる。なるべくゆっくりとした動きで、びっくりさせないように。
「ありがとう。もう痛くないよ」
耳の方を撫でると目を閉じて気持ち良さそうにゴロゴロと喉を鳴らし始める。頭を丸ごと俺の手に押し付ける可愛らしい姿は猫そのものだ。髭の後ろの方を掻いて上げると髭が全部前を向くように出て物凄く可愛い。
「凄い。モンスターを手懐けた人……初めて見ました……」
「手懐けているわけじゃないよ。敬意を払うべき存在にちゃんと敬意を払うと、彼等もきちんと向き合ってくれる」
化け猫神は俺の言葉を理解しているかのように頭を持ち上げて顔を見る。大きな目に自分の姿が映る。その瞳の透明度に吸い込まれそうになって目を合わせていると、唐突、親指と人差し指の間の付け根を甘噛みされる。
モンスターは立ち上がって尻尾を揺らしながら夜の影に溶け込んでいく。
甘噛みされた場所が少し疼く。見てみると赤い点が三つ、小さな逆三角形の形で痕になっている。
「なんですか、それ?」
「なんだろう? 俺も初めて見る」
「えっ、ちょっとやばくないですか? もしかしたら良くない事かもしれないじゃないですか!」
「でもごめんなさいって言っていた気がするから心配ないよ。明日には消えているんじゃない?」
「消えなかったらどうするんですか⁉︎」
「そうなればその時に考えればいいよ」
俺が少し微笑むと、彼は少し眉毛を寄せる。
「俺にも……少しは心配させてくださいよ」
俺はその小さな呟きに首を傾げる。
――――もうすでにいっぱい心配をかけていると思うのだが
「魔力切れの方は……」
「そっちは少し回復出来たからもう大丈夫」
二人の間に少しぎこちない静けさが落ちる。
まだ彼に触れている体の側面が熱い。彼の鼓動も速いままだ。
彼は俺の世話を焼きたがる。物凄く優しく、いつもとても紳士的だ。着替えや泉で水浴びをする時は必ず俺に背を向ける。
俺は彼の優しさに安心をしている。
安心をする反面、何故か物足りない。
何年も毎日のように激しく凌辱されてきた体にとって、それが普通の事になってしまっている。
大切な壊れ物のように彼は最低限しか触れてこない。いつも一定の距離を保ち、決して踏み込んで来ない。その境界線を僅かに踏んでいるのが、今だ。彼は少しぎこちなく俺と視線を合わせない。
そして無言で立ち上がり、俺から離れる。
彼のこの距離が苦しい。
紳士的な振る舞いが、今はきつい。
客に触れられるのは生理的に嫌なのに、今は触れられていない事が嫌だ。
離れたリースが心配そうにこっちを見る視線を感じる。遠慮がちな、視線。
17
あなたにおすすめの小説
世間知らずな山ごもり薬師は、××な騎士団長の性癖淫愛から逃げ出せない
二位関りをん
恋愛
平民薬師・クララは国境沿いの深い山奥で暮らしながら、魔法薬の研究に没頭している。招集が下れば山を下りて麓にある病院や娼館で診察補助をしたりしているが、世間知らずなのに変わりはない。
ある日、山の中で倒れている男性を発見。彼はなんと騎士団長・レイルドで女嫌いの噂を持つ人物だった。
当然女嫌いの噂なんて知らないクララは良心に従い彼を助け、治療を施す。
だが、レイルドには隠している秘密……性癖があった。
――君の××××、触らせてもらえないだろうか?
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される
秋津むぎ
BL
第13回BL大賞奨励賞頂きました!
最終17位でした!応援ありがとうございます!
あらすじ
魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。
ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。
死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――?
傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。
美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
終焉の晩餐会:追放される悪役令息は、狂欲の執事と飢えた庭師を飼い慣らす
河野彰
BL
かつて、ローゼンベルグ家の庭には白薔薇が咲き誇っていた。嫡男リュシアンは、そのバラのように繊細で、風が吹けば折れてしまいそうなほど心優しい青年だった。しかし、名門という名の虚飾は、代々の放蕩が積み上げた「負の遺産」によって、音を立てて崩れようとしていた。
悪役になり切れぬリュシアンと彼を執拗にいたぶる執事のフェラム、純粋な愛情を注ぐ?庭師のルタムの狂気の三重奏。
宰相閣下の執愛は、平民の俺だけに向いている
飛鷹
BL
旧題:平民のはずの俺が、規格外の獣人に絡め取られて番になるまでの話
アホな貴族の両親から生まれた『俺』。色々あって、俺の身分は平民だけど、まぁそんな人生も悪くない。
無事に成長して、仕事に就くこともできたのに。
ここ最近、夢に魘されている。もう一ヶ月もの間、毎晩毎晩………。
朝起きたときには忘れてしまっている夢に疲弊している平民『レイ』と、彼を手に入れたくてウズウズしている獣人のお話。
連載の形にしていますが、攻め視点もUPするためなので、多分全2〜3話で完結予定です。
※6/20追記。
少しレイの過去と気持ちを追加したくて、『連載中』に戻しました。
今迄のお話で完結はしています。なので以降はレイの心情深堀の形となりますので、章を分けて表示します。
1話目はちょっと暗めですが………。
宜しかったらお付き合い下さいませ。
多分、10話前後で終わる予定。軽く読めるように、私としては1話ずつを短めにしております。
ストックが切れるまで、毎日更新予定です。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる