夫に売られていた不憫な魔導師は年下冒険者と使い魔に溺愛される

如月紫苑

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第二章 年下冒険者は俺の痛みを受け止める

14 神の加護

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「君のお家に邪魔してごめんね。少しお話がしたいけど、俺の声はよく聞こえる? それとももっと違う場所に移動した方が嬉しい?」
「……そこで話せ」
 声は一瞬躊躇をしてから俺に答える。気のせいか俺の下手な態度に戸惑いを見せている。
「俺は魔導師のレン。ここの狩人達が狩り出来なくて困っている。きっと君が誰も入山されたくない正当な理由があると思うから、それが知りたいんだ。教えてくれませんか?」
 少し後ろの方にいるリースがまた俺の事を見ている。
「理由を言っても誰も聞かねぇよ」
 声が返す。けれども先ほどの勢いはなく、少しぼやきに近い雰囲気だ。そして案外若い口調に少しびっくりする。
「俺は聞きたい」
「聞いてどうするんだよ」
「何か問題を抱えていて、俺が手を貸せる事ならば是非手を貸したい。そして狩人達と和解が可能であって欲しい」
 声が静かになる。五分、十分と時間が過ぎる。リースは俺に近寄り小さな声で囁く。
「精霊はもうどこかへ行っちゃいましたか?」
「ううん、多分、俺達を見ている」
 確信はないがそんな気がする。
 葉っぱの揺れる音がして巨大な猫の姿をした精霊が姿を現す。俺を噛んだ化け猫神と少し似た姿だが、精霊のふわふわと広がる毛が光って揺れている。黒と金の艶やかなサビ模様、短毛にふわっとした縞々模様の長い尾。そして黄金に輝く大きな瞳。立派な猫の精霊である。
「へぇ、太陽と夜が混ざったような毛色! 初めて見たよ、凄く綺麗だね」
 素直に感想が口から出ると精霊は一瞬ビクッと跳ねる。
「……魔導師のレン。本当に、俺の理由を聞きたいのか?」
「うん、聞かせて欲しい」
「人間、ついて来い」
 リースも歩き出すと精霊は頭を振る。
「ダメだ、彼だけ」
「それは無理だ」
「リース、俺は大丈夫」
 心配と不満が入り混じった表情をしたリースは俺が視界に入っていないと落ち着かないのだろう。『止めよう』と言いかかっているのを遮る。
「大丈夫。敵意はない」
「だけどもし何かあったら遅いです」
「神の加護を受けし者。簡単には攻撃しない」
 その精霊の言葉に俺とリースはお互いの顔を見る。
「レンさん、神の加護を与えられていたのですか?」
「俺も初耳だけど」
「その指の付け根の赤い逆三角形」
 精霊の言葉にあの化け猫神につけられた痕を見る。
「これって加護だったんだ」
「凄いですよ、レンさん! 神の加護を授かる人間って少ないです」
「……ついて来い」
 精霊の声を合図に、はしゃぐリースに微笑む。
「俺、今リースとパーティー組んでいて楽しいんだ」
「私もですよ!」
「もっと続ける為にもまだ死ぬつもりはないし、怪我も痛いから嫌かな。それにこの依頼で怪我や死人は出ていないよね?」
「出ていませんが……単身で精霊について行った人もいませんよ」
 なかなか反論しづらい指摘に困った苦笑を浮かべるとリースが俺に短刀を渡してくれる。
「何かあれば、必ず使ってください。もしくは空に魔法を飛ばしてください。すぐに走っていきます」
 短刀をベルトに刺し、大きな葉っぱや太い幹を周りながらゆっくりと歩く精霊についていく。
 やがて小さな空間にいる無数の小さなモンスターへと到着をする。どのモンスターも怪我をしていて元気がない。そして痛そうな鳴き声を上げている。小鳥や小動物のようなモンスター達は震えながら俺から距離を取ろうと後ずさる。
「これ……どうしたの?」
「人間」
 その一言で人間に傷つけられたモンスター達だと理解をする。人間に危害を加えてその反撃だったのかどうかは知らない。それでも痛そうに身を捩っているのを見て何もしないのは無理だ。人間だろうがモンスターだろうが精霊だろうが、痛いのは痛い。
「……リースが心配すると思うから、今日は丸一日時間かかりそうだって伝えてくれる? その間、俺は彼等に出来る事はやるから」
 黄金の瞳が俺を見てから今来た道を引き返す。
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