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仮面皇妃編
❖豚小屋の子と兄弟達
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イスパニア国の中部に位置する都市、トルヒージョ。
そこにフランコことフランシスコ・ピサロの実家がある。
イスパニアに戻った彼は、最初はインカ帝国出兵の要請に国王カルロスとの謁見を求めたが多忙を理由に叶わず、逆に生家から呼び出しを受けた。
彼的には正直気が進まなかったが。
実はフランコは私生児で、子供の頃は酷い扱いを受けていたのだ。
「久しぶりだね、フランコ」
そう声をかけるのはピサロ家の長男エルナンド。
トルヒージョの郷士でフランコの父でもあるゴンザロ・ピサロの正妻の子で、正式な唯一の跡取りである。
そして女関係に奔放なゴンザロは方々に隠し子がいた。
フランコと同じ私生児だが母親違いで父と同じ名前のゴンザロ、その弟のファアンもこの場に同席していた。
更にフランコの実母の新夫アルカンタラの間に生まれたマルティンまでも。
「これはこれは一同お揃いで、オレに何を……」
「エルナンド様にその生意気な態度は何だ、豚小屋の子!」
「ちょ、ちょっとファアン。言い過ぎなんだな」
「何だよ、ゴンサロ兄ぃは豚飼いの肩を持つのか?」
「そ、そう言うわけじゃないんだな。
で、でも兄弟は仲良くすべきなんだな」
ずんぐりとした体系で背が低くドモリ癖のある兄ゴンザロに対し、よく言えば聡明、悪く言えば強気なファアンは同じ父母から生まれたとは思えないほど見た目も性格も対照的であった。
「まあまあ、ファアンは僕の事を思って先走った発言をしたようだが。
フランコ、どうか気を悪くしないでくれたまえ」
そんな二人に対してエルナンドがそう発言をするが、茶番だな、とフランコは思った。
エルナンドはいつだって他人を使って、自分は味方ですよという態度を取りつつ相手を追い込む策士であった。
そしてフランコの母フランシスカは農家の出で、ピサロ屋敷では豚の飼育をしていた。
その豚飼い娘から生まれた子であるフランコはピサロ一族から蔑まれ、母の仕事を手伝い文字を教わることなく育ったため、今でも読み書きを他人に任せるほどの文盲だった。
言ってみればそんな境遇が嫌で、同じく非嫡子だったディエゴ・デ・アルマグロと意気投合して冒険家になったとも言える。
「ところで先日送ってもらった、あの首長でモフモフな羊駝という生き物は実に良いね」
フランコはイスパニアに、南米固有の生物であるリャマを数匹送っていた。
全て国王の献上品にとフランコは伝えたはずだが、エルナンドはどさくさに紛れて一匹くすねたようだ。
「あんな面白い動物を連れて来るなんて、流石は豚飼いの子……おっと、これは皮肉じゃないよ」
そう言ってフフフと笑うエルナンド。
フランコにしてみれば、それが皮肉だろうが本心だろうが良い気分ではない。
「ああ話が外れてしまったね、本題といこうか。
君の冒険資金への増額をしよう、悪くない話だろう?」
南米への遠征には何かとお金がかかる。ましてこれから帝国を侵略となれば兵士も増やしておきたい。
フランコにしてみれば願ってもない話であるが。
「で、代わりに何か要求があるんだなエルナンド様?」
「流石分かってるねフランコ。
何、そんな難しい話じゃないさ」
そう言ってエルナンドは、背後にいる兄弟や身内をぐるりと見回して。
「僕と彼らを、今後の遠征に同行させる事が条件。ね、簡単だろう?」
これは貴族の遊びじゃないんだぞ、とフランコは喉まで出かかったが、エルナンドの貴族としての戦力と政治手腕は正直使えるかもしれないと思ったのだった。
そこにフランコことフランシスコ・ピサロの実家がある。
イスパニアに戻った彼は、最初はインカ帝国出兵の要請に国王カルロスとの謁見を求めたが多忙を理由に叶わず、逆に生家から呼び出しを受けた。
彼的には正直気が進まなかったが。
実はフランコは私生児で、子供の頃は酷い扱いを受けていたのだ。
「久しぶりだね、フランコ」
そう声をかけるのはピサロ家の長男エルナンド。
トルヒージョの郷士でフランコの父でもあるゴンザロ・ピサロの正妻の子で、正式な唯一の跡取りである。
そして女関係に奔放なゴンザロは方々に隠し子がいた。
フランコと同じ私生児だが母親違いで父と同じ名前のゴンザロ、その弟のファアンもこの場に同席していた。
更にフランコの実母の新夫アルカンタラの間に生まれたマルティンまでも。
「これはこれは一同お揃いで、オレに何を……」
「エルナンド様にその生意気な態度は何だ、豚小屋の子!」
「ちょ、ちょっとファアン。言い過ぎなんだな」
「何だよ、ゴンサロ兄ぃは豚飼いの肩を持つのか?」
「そ、そう言うわけじゃないんだな。
で、でも兄弟は仲良くすべきなんだな」
ずんぐりとした体系で背が低くドモリ癖のある兄ゴンザロに対し、よく言えば聡明、悪く言えば強気なファアンは同じ父母から生まれたとは思えないほど見た目も性格も対照的であった。
「まあまあ、ファアンは僕の事を思って先走った発言をしたようだが。
フランコ、どうか気を悪くしないでくれたまえ」
そんな二人に対してエルナンドがそう発言をするが、茶番だな、とフランコは思った。
エルナンドはいつだって他人を使って、自分は味方ですよという態度を取りつつ相手を追い込む策士であった。
そしてフランコの母フランシスカは農家の出で、ピサロ屋敷では豚の飼育をしていた。
その豚飼い娘から生まれた子であるフランコはピサロ一族から蔑まれ、母の仕事を手伝い文字を教わることなく育ったため、今でも読み書きを他人に任せるほどの文盲だった。
言ってみればそんな境遇が嫌で、同じく非嫡子だったディエゴ・デ・アルマグロと意気投合して冒険家になったとも言える。
「ところで先日送ってもらった、あの首長でモフモフな羊駝という生き物は実に良いね」
フランコはイスパニアに、南米固有の生物であるリャマを数匹送っていた。
全て国王の献上品にとフランコは伝えたはずだが、エルナンドはどさくさに紛れて一匹くすねたようだ。
「あんな面白い動物を連れて来るなんて、流石は豚飼いの子……おっと、これは皮肉じゃないよ」
そう言ってフフフと笑うエルナンド。
フランコにしてみれば、それが皮肉だろうが本心だろうが良い気分ではない。
「ああ話が外れてしまったね、本題といこうか。
君の冒険資金への増額をしよう、悪くない話だろう?」
南米への遠征には何かとお金がかかる。ましてこれから帝国を侵略となれば兵士も増やしておきたい。
フランコにしてみれば願ってもない話であるが。
「で、代わりに何か要求があるんだなエルナンド様?」
「流石分かってるねフランコ。
何、そんな難しい話じゃないさ」
そう言ってエルナンドは、背後にいる兄弟や身内をぐるりと見回して。
「僕と彼らを、今後の遠征に同行させる事が条件。ね、簡単だろう?」
これは貴族の遊びじゃないんだぞ、とフランコは喉まで出かかったが、エルナンドの貴族としての戦力と政治手腕は正直使えるかもしれないと思ったのだった。
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