上 下
101 / 192
天文28年

第五十四話 覚醒した力と妖狐の血

しおりを挟む
 私はお市。
 参加した猿式蹴鞠の試合で、私は信じられない光景を目の当たりにしている。

 うちの学院関係者の幼女組(一人は似非)の乗る守護者カーバンクルが金色の輝きを放ったかと思えば、人間が目視出来ない程の速さで動いて得点を量産していく。

 そちらも驚きだが、何と私の母である土田御前があやかしの妖狐であり、赤子の知能を加速させる雑賀衆の秘薬、賢者の石は彼女の血が使われているのだという。

 えーっと、つまりだな。
 私もあんな能力が使えるって事?

 そしてその理屈だとお犬や珠ちゃん、そして生駒いこま吉乃きつのの三人にも賢者の石が使われている事になるんだけど。

「あの子達が同世代の子から見ても明らかに逸脱した能力があるのは気づいていたでしょう?」
 と、いつの間にか私の傍らに来ていた母、土田御前が口を開く。

 確かに五歳の珠ちゃんの年齢で守護者や守護猫ケットシーを楽々操縦出来たり、お犬や吉乃が他人の絡繰人形を再現出来たりという事実に違和感を感じてもいた。

「そして仲間を傷つけられたという怒りが、彼女達の覚醒の引き金になったのね」

 そうか、市場ちゃんの。
 ずっと彼女は守護者に乗りたがってて今回が大舞台の実戦初参戦。
 そんな彼女が意識不明にされたのを見たら仲の良い友人なら義憤に燃えて、覚醒もするかもねえ。

 経緯は何となく分かった。
 問題はあの乗ってる守護者に何が起きているかだ。金色に光り輝いて信じられない動きをしている理屈がよく分からない。

「それこそ説明は一言で済むわ。
 守護者が妖怪あやかし化してるの」

 はああ?ぁ?

「守護者が付喪神であり三種の神器、八尺瓊勾玉で動いてるのは知ってるでしょ?」

 ああうん、宝石三兄弟の長男、紅玉ルビーくんだよね。
 付喪神は長い年月を経て物に心が宿った、いわばあやかしの類だ。
 守護者にはその分体である赤い石が嵌められており、陰陽師の技と融合して動いている。

「そして紅玉を動力としないで、守護者本体そのものの妖力により動かす事で、人間が中に入って動かす以上の力を発揮するって訳」

 ううむ、分かったような分からないような。
 というか妖力使ってるって既に人間止めてない?
 まさかそのまま彼女達が妖怪化するとかないよね?

「人の心配より、自分の心配をした方がいいわよお市」

 えっ、どういう事?
「実は私達妖狐には天敵が……って噂をすれば」

 ガキンッ!!

 いきなり母に刀で切りかかってくる男の攻撃を、彼女は懐から取り出した鉄扇で受ける。

「随分なご挨拶ねえ、キリシタン陰陽師のマノエルこと、勘解由小路かでのこうじ 在昌あきまさくん?」
「あやかしの撲滅は、我々退魔師エクソシストの悲願だ!
 何を企んでいるか知らんが、元凶ごと潰させてもらう!」

しおりを挟む
1 / 4

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

異世界迷宮のスナイパー《転生弓士》アルファ版

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:255pt お気に入り:584

婚約関係には疲れたので、しばらく義弟を溺愛したいと思います。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:16,535pt お気に入り:520

黒猫印の魔法薬 〜拾った子猫と異世界で〜

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:21pt お気に入り:218

俺を裏切り大切な人を奪った勇者達に復讐するため、俺は魔王の力を取り戻す

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:5,013pt お気に入り:93

親友の彼をNTRしようとして、失敗した私の話。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:63pt お気に入り:2

処理中です...