上 下
184 / 192
天正13年

第八十七話 地震兵器? 前編

しおりを挟む
 どうも、お市元官房長官です。
 震源地を飛騨に持つ今回の大地震はは、京に近い畿内一体に大きな被害をもたらした。

 ざっくり被害を受けた城だけでも近江の長浜城、越中の木舟城、美濃の大垣城、伊勢の長島城や尾張の蟹江城も壊滅、震源地の飛騨の帰雲城に至っては城主内ヶ島氏の一族が滅亡したという。

 当然庶民にも甚大な被害が出て、津波に噴火に地すべりに、街一つ壊滅した地域も少なくなかった。

 にも関わらず豊臣政権の災害復興に対する反応は鈍く、本来なら兵を動かしてでも災害で苦しむ人を助けるべきなのに、誰がそれを行うかが政府内で揉めて埒があかなかったので、私が愛染学院の商科の繋がりで人を派遣した。
 朝廷や寺院、国内キリスト宣教師にも声をかけたら喜んで協力してくれたよ。困った民を助けるのが彼らの役割だからね。

 そして今回対応が後手に回った最大の理由だが、大蔵大臣に就任し今は豊臣行長に改名した小西行長を議会で問い詰めたら驚きの事実が出てきたよ。

 本当ならこういう災害に備えて国で米などの備蓄をしているものだ。少なくとも織田の政権ではそうしていた。

 ところがこの無能大蔵大臣、将来海外派兵での戦でお金が必要になることを見越して、なんと備蓄食料を全部売ってお金に変えて運用していたのだ、頭いてぇ。

 無能は、その金で食料を買えば良いと言ったがそういう事じゃねえんだよ。
 必要な時にすぐ用意できなくてどうするのか、その為の備蓄だよなあ。
 幸い、そのお米は知り合いの愛染学院の卒業生が機転を効かせて買い取っていたので、直接困ってる人に先に配った後、お金を渡す方法を取ることにした。
……やれやれ。

 今回の災害に対する一連の対応の不味さで、豊臣政権の支持率もガタ落ち、先は長くないだろうと思う。

 正直そこはざまあ、なのだが実は今回の地震に対して陰陽師側から気になる報告が届いている。

 朝廷には平安の頃から占いを生業にしている直属の陰陽師がおり、信憑性と予算の問題から豊臣政権ではその職を廃され、干された状態だった。
 逆に野党に回った織田陣営の民主自由党では重用していたのだが。

「今回の地震が、あり得ない?」
 と織田信長の息子である元総理代行で民自党代表の織田長雲が声を上げる。

「ええ、星の動きから本来であれば3年ほど先に起きる筈でした」
 と返答するのは白服の狩絹を着た若い陰陽師、勘解由小路かでのこうじ  在綱ありつな

「あり得ないと言いつつ実際に起きているのだがな」
「ええ、ですので私はこれが災害ではなく」

 長雲の言葉に在綱は眉を顰めてこう言う。

「人為的なもの、例えば地震を起こす兵器によって発生したものと推測します」
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

陣代『諏訪勝頼』――御旗盾無、御照覧あれ!――

歴史・時代 / 完結 24h.ポイント:63pt お気に入り:11

真面目系眼鏡女子は、軽薄騎士の求愛から逃げ出したい。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:2,832pt お気に入り:245

吼えよ! 権六

歴史・時代 / 連載中 24h.ポイント:860pt お気に入り:3

名言

現代文学 / 連載中 24h.ポイント:547pt お気に入り:2

冷徹執事は、つれない侍女を溺愛し続ける。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,874pt お気に入り:178

妻が家出したので、子育てしながらカフェを始めることにした

ライト文芸 / 完結 24h.ポイント:85pt お気に入り:6

処理中です...