秋月の鬼

凪子

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五、

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準備ができたらしく、次の五名が呼び出される段になって、常盤はお芙沙が自分と同じ組であることに気づいた。

お芙沙はもう常盤を面と向かって罵りはしなかったが、にやりと不敵な笑みを浮かべ、眼を逸らした。

お芙沙と彼女の侍女の他には、見たことのない者が二人。

うちの一人は、常盤とさして身分の違いもない町民のようだった。

五人を呼びに来た召使らしき男が、最後の一人――どこぞの武家の姫らしき少女を見るなり、息を呑んだ。

初姫ういひめ

初姫、と呼びかけられた少女は、ゆったりと振り向き、目を細めた。

目が合うなり、召使は恐れ入ったように叩頭し、

「――大変ご無礼つかまつりました」

少女は桜色の唇にうっすらと笑みを浮かべ、何も言わずに歩きはじめた。

引きずるように長い絹の裳裾が、床に紋様のごとく広がる。

「どういうこと」

後ろにいたお芙沙が、傍仕えの侍女に耳打ちしている。

侍女は恐縮したように首を左右に振り、

「いいえ、そんなはずは」

「馬鹿おっしゃい」

ぴしゃりとお芙沙は言い捨てた。

耳を澄ますまでもなく、二人の会話の切れ端が耳に入ってくる。

「初姫は……お方様は五年前に亡くなったはず」

「では何なの。幽鬼になって化けて出たとでも言うの」

嘲るようにお芙沙は笑った。

「それもいいかもしれないわね。何せ、あの御方は逆賊の汚名を着せられたまま死んだのだから」

聞くとはなしにその居丈高な声を拾いながら、常盤は茶室に入った。

姫君たちは淀みなく、流れるように座につく。

だが常盤には、どこが上座でどこが下座かという知識すらない。

ともかく、部屋の中にいた威厳ある女性を避けるようにして、部屋の隅に座った。

かすかな失笑が起こる。

何かを間違えたのだと分かったが、どうすればいいのか分からなかった。

だがその笑い声も、女性が胸元にさした扇を音を立てて置いた途端、瞬時におさまった。
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