秋月の鬼

凪子

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六、

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翌朝、まんじりともしないで夜を明かした者も多く、辞退者が続出した。

清子や容花の疲労の色も濃いが、夕霧の顔はまるで紙のように真っ白で、一晩にしてやつれたような様子は、皮肉なことにろうたけた美貌がいっそう水際立っている。

「真覚さん」

身支度を整えていた真覚に近づき、背後から声をかけると、彼女は後ろに目があるかのようにぱっと振り向いた。

「おはようございます、常盤様」

「昨日のことなのですが」

常盤が切り出すと、真覚の顔が曇った。

声をひそめて、

「詮索は無用とのお上のお達しです。常盤様も、この件に自らの予見を差し挟まないのが賢明かと」

詮索は無用――か。

常盤は眉をしかめた。

「つまり、お上は何もしてくださらないということですね。この嫁選びは続行で、下手人を捕らえることは責務ではないと」

「そのようなことを吹聴なさらないほうが御身のためです」

真覚は淡々と言った。

その顔には諦念が滲んでいる。

自分とそう年も変わらないはずなのに、この、まるで悟りきった者のような雰囲気。

まだ何か知っているのかもしれない。だが、それを明かすつもりはないのだろう。

常盤は肩をすくめた。

「ありがとうございます」

そこへ夕霧が割り込んできた。

気配もなく亡霊のような足取りに、常盤はぎょっとした。

「お早うございます。夕霧姐さん」

「……」

返事がない。

明るく快活で、多少のことなら笑い飛ばしてしまえるような強靭さを備えた彼女が、今や絶望の色を露わに顔を歪めている。

無理もないことだ。

同じ建物の中で人死にがあったうえに、それが不問に付されたも同然なのだ。

次は我が身と考えないほうがどうかしている。
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