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殿下の質問タイム
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セイラムの電撃訪問の翌日。
今日は結婚後初めてとなる、二人揃っての正式な公務の日だ。
王都から少し外れたところにある国教の大神殿の改修工事が終わり、そのお披露目式に立ち会うことになっていた。
宗教行事に合わせ、清楚な白いドレスに身を包んだリリアナは、セイラムの前まで歩みを進めると、挨拶とともに優雅なカーテンシーを披露した。
正殿の正面玄関に二人、並んで立つ。
「間もなく馬車が参りますので、こちらで少々お待ちください」
セイラムの側近、ジェスが丁寧にお辞儀する。
馬車が停まり、乗車のためのエスコートをしようと二人が向き合うと、セイラムが声を発した。
「そなた・・・いや、いい」
「?」
馬車ではいつもお互い押し黙って、到着まで外の風景を眺めているのが通常だったが、馬車が発車すると早速セイラムが声をかけてきた。
「リリアナ、幾つか質問してもいいだろうか?」
「どんな質問でしょう?」
「昨日のリリアナは普段と比べて、ずいぶん背が低いように思ったのだが、いつもどのような靴を履いているのだ?」
リリアナはこの国の女性の平均身長と比べると低い方だ。対して、セイラムは男性の中でも高い方なので、均整を取るため、厚底で、且つヒールも高い靴が欠かせない。
馬車に乗る前に何か言いかけていたのは、多分昨日のリリアナとの身長差を思い出したのだろう。
「・・・ご覧になりますか?」
百聞は一見にしかず。下品にならない程度に、裾から靴だけを出して見せると、セイラムがハッと口を押さえ、「何と・・な・・あ、歩きにくくはないのか?」
「まぁ、素足よりは歩きにくいかと思いますが、何年も履いておりますので慣れました。」
「そうか・・大義だな」いちいち感慨深そうに話すセイラムに調子が狂う。
その後は、概ねミリアに関する質問だった。
自分のことを聞かれるよりも、ミリアのことを聞かれた方が答えやすい。
ミリアの好きな食べ物やおもちゃなど、出された質問にポツポツと答えていると、セイラムも柔らかい表情で相槌を打っており、きっと殿下は猫が好きなのだろう、とリリアナは結論付けた。
護衛を見かけると脱兎のごとく逃げることや、最近はリリアナの私室から脱走しようとするミリアに手を焼いていることまで話したところで、馬車のドアが軽くノックされた。
「殿下、妃殿下。間もなく神殿に到着いたします。」
え、もう?王宮から大神殿まで、馬車で一刻ほどのはずだが、移動中ずっと話をしていたせいか、まだそれほど時間が経っていないように感じていた。
「もう着くのか?」
セイラムも同じことを思ったようでお互い顔を見合わせる。
セイラムは少し考えるような素振りを見せて、またリリアナに向き合った。
「最後に一つだけ聞きたいことがあるのだが・・・」
またミリアに関することだろうと高を括っていたリリアナだが、この後の質問を受けて、大きく肩を揺らすことになる。
「昨日の夜着はどこのものだ?」
今日は結婚後初めてとなる、二人揃っての正式な公務の日だ。
王都から少し外れたところにある国教の大神殿の改修工事が終わり、そのお披露目式に立ち会うことになっていた。
宗教行事に合わせ、清楚な白いドレスに身を包んだリリアナは、セイラムの前まで歩みを進めると、挨拶とともに優雅なカーテンシーを披露した。
正殿の正面玄関に二人、並んで立つ。
「間もなく馬車が参りますので、こちらで少々お待ちください」
セイラムの側近、ジェスが丁寧にお辞儀する。
馬車が停まり、乗車のためのエスコートをしようと二人が向き合うと、セイラムが声を発した。
「そなた・・・いや、いい」
「?」
馬車ではいつもお互い押し黙って、到着まで外の風景を眺めているのが通常だったが、馬車が発車すると早速セイラムが声をかけてきた。
「リリアナ、幾つか質問してもいいだろうか?」
「どんな質問でしょう?」
「昨日のリリアナは普段と比べて、ずいぶん背が低いように思ったのだが、いつもどのような靴を履いているのだ?」
リリアナはこの国の女性の平均身長と比べると低い方だ。対して、セイラムは男性の中でも高い方なので、均整を取るため、厚底で、且つヒールも高い靴が欠かせない。
馬車に乗る前に何か言いかけていたのは、多分昨日のリリアナとの身長差を思い出したのだろう。
「・・・ご覧になりますか?」
百聞は一見にしかず。下品にならない程度に、裾から靴だけを出して見せると、セイラムがハッと口を押さえ、「何と・・な・・あ、歩きにくくはないのか?」
「まぁ、素足よりは歩きにくいかと思いますが、何年も履いておりますので慣れました。」
「そうか・・大義だな」いちいち感慨深そうに話すセイラムに調子が狂う。
その後は、概ねミリアに関する質問だった。
自分のことを聞かれるよりも、ミリアのことを聞かれた方が答えやすい。
ミリアの好きな食べ物やおもちゃなど、出された質問にポツポツと答えていると、セイラムも柔らかい表情で相槌を打っており、きっと殿下は猫が好きなのだろう、とリリアナは結論付けた。
護衛を見かけると脱兎のごとく逃げることや、最近はリリアナの私室から脱走しようとするミリアに手を焼いていることまで話したところで、馬車のドアが軽くノックされた。
「殿下、妃殿下。間もなく神殿に到着いたします。」
え、もう?王宮から大神殿まで、馬車で一刻ほどのはずだが、移動中ずっと話をしていたせいか、まだそれほど時間が経っていないように感じていた。
「もう着くのか?」
セイラムも同じことを思ったようでお互い顔を見合わせる。
セイラムは少し考えるような素振りを見せて、またリリアナに向き合った。
「最後に一つだけ聞きたいことがあるのだが・・・」
またミリアに関することだろうと高を括っていたリリアナだが、この後の質問を受けて、大きく肩を揺らすことになる。
「昨日の夜着はどこのものだ?」
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