大好きな彼の婚約者の座を譲るため、ワガママを言って嫌われようと思います。

airria

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それぞれの御前試合

グルトの頼み

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『嘘と後悔』から続くお話です。

*********************************
マルグリット侯爵家での茶会の翌日。

昨日のレイリアとのやりとりを思い出し、騎士団に向かう足取りが重くなる。

そんな俺を出迎えたのは、グルトが保安局に出向した、という寝耳に水の話だった。

ロイリス ピートの情報をもらえる当てが外れて、更に気持ちが沈む。

大体、何で急に保安局なんだ・・保安局の空気感と、グルトのキャラは違いすぎるだろ。

グルトから手紙が来たのは、それから間も無くのことだ。

休みの日曜日に、剣術の練習に付き合ってほしいとのことだった。

去年、3回戦で敗退したグルトは、今年こそ決勝トーナメントに行きたいらしく、このままではそれが叶えられない、と手紙の中で嘆いていた。

(日曜か・・)

グルトには借りがある。

ハッキリとは書いていないが、グルトが保安局の交流研修に抜擢されたのも、ロイリス ピートの調査をしてた関係のようだし・・何となく責任を感じる。

日曜はレイリアとの約束の日だ。

レイリアに会いたい。でも、また拒絶されるかもしれない。

試合を観に来てほしいなんて、ただの俺のわがままだ。

せっかくここまでレイリアと楽しく過ごせてきたんだ。

試合の話題を避けたがっている様子のレイリアに会うのは、試合が終わってからの方がいいのだろう・・その後で、ちゃんと謝って、許しを乞おう。

グルトの練習に付き合うことに決めて、レイリアには手紙を出した。





「アマンド、ごめん!休みの日にまで付き合ってもらって・・」

グルトと練習する日曜日。

練習場所は、騎士団の練習場を使わせてもらうことにした。

「いや、いいんだ。俺の稽古にもなるし・・それより、保安局の方の仕事は慣れたのか?」

「それがさ・・保安局の奴ら、俺のことバカにするくせに、いちいち絡んできてさ。俺、笑い者にされてるんだよ!もう本当、イヤになる!」

保安局は特にエリート意識の強い所だと聞く。

母親が平民のグルトがその矢面に立たされやしないかという危惧は当たってしまったらしい。

「そうか・・大変だな。体調は?食事はちゃんと取れているのか?」

グルトが頬を膨らませる。

「それがさ、食事の時くらい1人になりたいのに、『お前はこんな高級な料理食べたことないだろ』って嫌味言われながら毎回連れ出されちゃうんだ!」

「・・へぇ」

「御前試合に出ることもバレちゃってさ、『お前の剣術を冷やかしに見に行ってやる』ってわざわざ試合にまで、俺のこと笑いに来るんだから!」

「・・そうか。」

本人の自覚が足りないだけで、グルトは順調に可愛がられているようだ。  

心配は杞憂だったか。

ロイリス ピートについても話題が及び、レイリアとの接触は今のところなさそうだと報告を受けて安堵した。

「それじゃグルト、まずは素振りからやろう」

「イエッサー!」


翌週。

「よし!先週と同じく、まずは素振りからやるぞ!」

「「「イエッサー!」」」

翌々週。

「よし、まずは恒例の素振りから始めるぞ!」

「「「「「「「「イエッサー!」」」」」」」」

増えてる!

なんかどんどん練習に参加する騎士たちが増えている!

そりゃ確かに俺とグルトの練習を見かけた後輩が自分も練習させてほしいと言いに来て、許可した覚えはあるが、こんなに人数が集まるとは聞いてない。

「イエッサー!」ってノリノリな中に、上官もいたんだが!?

「おいグルト・・何でこんなに人が・・!」

「あ、何か噂になっちゃったみたいで。誰か親切な人が、ポスター貼ってくれてたみたい!」

「ポスター?」

これこれ。と差し出されたポスターを見て頭を抱えた。

【シーリーウッド騎士団公認!自主強化練習会!】
日時:御前試合までの毎週日曜 10時から16時まで
対象:御前試合出場予定者
予約:不要
料金:無料 
持ち物:木剣、防具、飲み物、昼飯
指南役:アマンド ガーナー士官
注意事項:練習中の事故や怪我に関して一切の責任を負いません。
参加者の声:これ以上俺のランクは上がらないと諦めていた俺でしたが、この自主練習会を経て、ガーナー士官のおかげで"技に力を乗せる"ことを身をもって体感することができました。技の精度はまだまだですが、引き続き頑張っていきたいですーー

これかーーー!

「アマンド!来週もこの時間でいいな?よし、皆!来週も10時開始だ!」

「アマンド士官に稽古をつけて頂けるなんて夢のようです!」


・・・・・


同時に複数人を相手にして戦う練習もできたのは、良かったのかもしれない。

これが後に、シーリーウッド騎士団躍進の貢献に繋がるのだが、それはまた別の話である。



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