スローなライフにしてくれ

soue kitakaze

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第2章 的ななんかそいう感じの章

第36話 どうよ?

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 そんなこんながあって11ヶ月というとても半端な時間が過ぎた。この学校(というより塾みたいだが)は、6級までがグリーンランド市の管轄で、5級からはチュウノウ国の管轄になるらしい。住むところは変わらないし、授業内容も講師もほとんど変わっていない。ただ、内容が少しだけ高度になった。そして小銭が貯まった。

 国語に漢字が入り(どの国のだよ)、算数とそれに魔物退治に関する実技が追加された。

 同時に、進級試験は月に1回だけとなり飛び級という制度はなくなった。だが、小銭は溜まった。

「小銭持ちを自慢したいモん?」
「我の借金も忘れてもらえるとありがたいでござるが」
「そうはいくか!」
「ですよね(´・ω・`)」

 そして俺は6級から3級になっていた。

「毎月試験があって11ヶ月も経っているのに、なんでまだ3級なのかと」
「オツはうるうるうるさいよ。どういうわけか進級試験に受からなかっただけだ」
「いや、理由ははっきりしているモん」

 その間に、カズ、ヒロミ、ジェーン、アッペは共に2級、マユ姉にいたっては1級になっていた。ただし、3級から1級までクラスは同じである。現在、俺たちを含めて14人の生徒が所属している。ちなみに、飛び級試験で俺がぼこぼこにしたヤマシタはいまだに9級である。ざまぁ。

「オヨリさんはすでに2段になっているけどな」
「ふぁぁぁ!?」
「知らなかったのか?」
「マユ姉に聞くまで知らなかったよ。1級より上があるってことに」
「そっちかよ! それも授業で散々習ったであろうが」

 俺の知らないうちに、謎の組織による陰謀が巡らされていたようだ。

「謎じゃないから。単なるカリキュラムだから」
「なんでも陰謀にして誤魔化すのは良くないモん」

 分かってるよ! 悔し紛れの捨て台詞だ。それよりもだ。

「なんでみんな俺より先に上級に行くんだよ」
「「「努力したからだ!!」」」
「はっきりしてたでござるな」

 息が合ってやがる。こいつらいつの間にか仲良くなりやがったんだ。

「コウイチの扱いに慣れてきただけだと思うぞ」
「ぐぐぐぐぐ」

 進級試験は学科と実技とに別れている。学科は簡単なので俺が落ちることはない。

「それにしては満点を取ったったことはなかったが」
「オツは黙ってなさい。ポカミスは世の常だ」
「マユ姉は全試験で満点取ってるモん」
「お前も黙ってろ!」

 試験なんてのは合格すれば良いのであって、満点など必要ない。実技試験には落ち続けているわけだがちくしょ。

 実技試験は、受験者が全員集まって(毎回10名程度が受験している)自分の使える魔法を試験官に披露することから始まる。

 会うのはこれが初めての試験官(あの神官の上司に当たるらしい)のお言葉。

「とっくに知っていると思うが、2級からは実技がさらに重視される。強度はともかくとして、最低でも3種類の魔法を操れることが合格のための必須条件だ。まずはそれを見せて貰おう」

「おいおいマユ姉。魔法が3種類必要なんて俺は聞いてないぞ?」
「アホか! 授業で何度も教師が言っていただろうが」
「そんな大事なことは俺が起きているときに言ってくれ」
「寝ているやつが悪いわ!!」

 またそのパターンかよ。そんなわけで俺は試験会場にいるわけだが。

「まずは一つ目。やってみろ」
「ケツ!」

 もう見慣れた俺の結界である。10コイチ四方で作ってみた。

「おおっ。これが結界魔法か。噂には聞いていたがこれほどのものが作れるとは。扱えるだけでもすごいのに、こんなに大きなサイズとはまたすごい。ここの卒業生でも数人いるかどうかというすごい魔法だ。良いものを見せて貰った。これなら合格は確実だろう」

 すごいが3回入ってる。こんな素直に褒められたのは前の世界にいたときを含めても人生初かも知れない。これならいけるかも知れない。

「むほほ。そうだろそうだろ」
「だからって調子に乗らないほうが良いモん」
「お前は黙ってろっての」

「で?」
「で? とは?」
「あとふたつの魔法だ。結界魔法が使えるぐらいなら、いくらでも使えるだろ? どれでもいいからあとふたつを見せてくれ」

「ケツ」
「いや、結界魔法以外のものをだな」
「結界の上に結界を重ね掛けしてみた」
「いや、youtubeで演奏してみた、じゃないから」
「それとほら、こんな感じで」

 角の取れた四角い結界を重ねてみた。なにが出るかなサイコロ形状である。

「いや、それも結界魔法」
「これで3種類な」
「他の魔法は?」
「いや、特にこれといって」
「失格!!」
「ふぁぁ!?」

 別の日。

「今度こそ3種類だぞ」
「分かってるって。まずはケツ!」
「それは前回見た。それ以外で」
「ほい」
「は?」
「こいつはネコウサ。俺の魔法で出した」
「いや、それはお前の眷属だろうが。魔法ではない」
「じゃあ、こいつでどうだ。ワンコロだぞ」
「だからそれも眷属……その角、もしかしてタイガーウルフ!? おいおいおい、絶滅したという噂で持ちきりだったのに、まだ生存して……というかお前はタイガーウルフになにをした!?」
「これで3種類な」
「失格!!! あとで職員室に来い!!」
「ふぁぁ?!」

 そのあと、絶滅危惧種をさらに絶滅の危機に追いやったことについて、根掘り葉掘り聞かれ小1時間説教された。こちらに来たばかりで知らなかったんだからしょうがないだろと言っても、俺の普段の行動が行動だけにってやかましいわ! と言ったらまた余計に小1時間説教くらったこんちくしょ。いらんことを言ってはいけないと学んだ俺である。

「いまごろでござるか」

 で。また試験に戻るのだが。

「ケツ! 俺の結界は自分にも掛けられるのだ」
「いや、だからそれも同じ」
「ケツ! ほら、俺の眷属にも掛けられるのだ」
「ふぁっモん!?」

「いやだからそれはもう」
「いいか、良く見ててくれ。これからがすごいんだぞ」
「なにをするモん?」

 俺は自分の結界の中で、小さい結界で閉じ込めたネコウサを手に持ち、ぐいぐいと結界の壁に押しつける。

「ぐりぐり、ぐぐぐ、ぐるじい……ような気がするモん」
「んなはずないだろが、ぐいぐいぐ……ポンっ!」

 結界に囲まれたネコウサを、最初に張った結界の外に出すことができたのだ。

 つまり、結界を壊すことなく、ネコウサを出すことができるのだ。これはネコウサだけじゃなく、ワンコロでもムックしゃんでも石ころでも可能である。

「我らと石ころを同列に語らないで欲しいでござる」
「あたしもよ!」

 魔物でも生物でも無機物でも可能なので、なにげに使える魔法である。これならいいだろ。

「で、神官さん、どうよ?」
「あ、いや、それはそれで結構すごいのだが」
「だろ? これならもちろん」
「失格!!」
「なんでだよ!?」
「結局、結界魔法しか使ってないではないか。それで合格にはできん」

 くっそ、融通の利かない神官だ。

「判定する人が融通を利かせていたら、正当性が失われるだろうが」
「マユ姉は、自分だけさっさと1級になれたものだからそんなことを言うが、俺の身にもなってくれ」
「「「授業をちゃんと聞かないお前が悪い!」」」

 またみんなに怒られた。なんかクセになりそう。

 そんなわけで最近では試験を受けてさえいないのである。

「魔法を覚えられないからか?」
「いや、ボケのネタが尽きたから」
「その発想止めろ!」

 ところが、そんな俺に幸運が舞い込むことになる。それは毎月恒例である魔獣狩りでのことであった。
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