スローなライフにしてくれ

soue kitakaze

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第2章 的ななんかそいう感じの章

第42話 我が名はワンコロ

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 ほぼ岩石流と化した岩の破片は、全てコウイチの結界によって阻まれた。めでたしめでたしである。

「ぎゅぅぅ」
「め、めでたくないわっ!! なんだこれ、動けないぞ」
「ぎゅぅ?」
「コウイチ、この結界を解け。もういらないだろ。これじゃ戦闘に参加……ちょ、ちょっと、おかしなことをするな!」

「いや、するなと言われても結界を解かないといけないのだろぎゅぅぅが、マユ姉の全体重が俺にかかって重いぎゅぅぅ」

 ふたりは絡み合ったままでコウイチの結界の中にいた。おかげで大けがは回避できたのだが、不思議なことがおこっていた。

「くっぅぅぅぅ。だ、ダメだ、動けない。コウイチ、いつもの結界と違うじゃないか」
「それを俺に言われても。マユ姉が俺に襲いかかるから思わず避けようとして」
「襲いかかってなどおらんわ!」

 前に出たマユ姉がまさか自分を守るためだとは思わず、それ幸いとばかりに後ろから抱きしめてもみもみしたコウイチ。その顔面に肘打ちを食らわしたマユ姉。それで一瞬意識を飛ばしたコウイチは前のめりに倒れそうになりながらも、いじきたなく伸ばした左手をマユ姉の首筋に回して抱きついた。それからなんかかんかの複雑ないやらし攻防があって結界が発動し、結果として。

「なんで私たちの形をなぞるような形で結界が出来てんだよ!!」
「なんでマユ姉の尻が俺の右手の上に乗ってんだよ!!」

 コウイチにとってもこんなことは初めてである。コウイチの結界はだいたい本人が思った通りの形状になる。それが今回だけは絡み合ったふたりの外郭をなぞるようにその複雑な形状のままで発動されてしまったのだ。

 おかげで、ふたりはややこしい体勢で絡み合ったまま、指一本動かすことができない状態で固定されたのである。

「ぐぅぅぅぅわぁぁぁぁ!!……ダメだ動けん」
「マユ姉、こんな近くでそんな大声出すな。耳にキンキン響いてしょうがない」
「お前が結界を解けば済む話だろうが!!」

 なにがどうなったのか。コウイチの顔の目前にマユ姉の耳がある。コウイチの視界の8割がマユ姉の頭である。マユ姉の視線はまっすぐ前を向いている。だいたい龍のいる方向である。

「さっきからやってんだよ! だけどダメなんだ、なんど解除しようとしてもさっぱり反応しない」

 コウイチの左手はマユ姉の首の前を通って頭の後ろにある。右手は下向きのままで尻に敷かれている。その状態で結界に覆われ完全固定である。ほんの少しも動かせない。

「ちっとも楽しくねぇなおい!」
「私は不愉快だよ!! 早く離れろ!!」
「あぁ、右手がしびれてきた。マユ姉なんとかしてくれ」
「私に言うな。全てはお前の……ちょ、ちょっと待て。こら!! 指を動かすな指を!」

「だ、だって指がしびれてきているし、これが動かないと結界の解除ができないようなんだよ。結界の弾力を使って指がもうちょっと動けばもしかしてくねくね」
「だからってぇぇぇぇごらあぁぁ、すんなって言ってんだろが! ごんごんごん」
「いや、解除しろと言ったりするなって言ったり痛い痛い痛い」

 コウイチの顔の目の前にあるマユ姉の頭突き攻撃である。正確にはマユ姉の側頭部でコウイチのおでこを叩いている。
 コウイチの結界は、力を入れるとほんのちょっとだけたわむ性質がある。それを利用してのマユ姉の攻撃である。しかしコウイチの右手の指は、下に結界があってもさらにその下は硬い岩盤であり、動かそうとすればどうしても柔らかい方……に行かざるを得ないのだ。

 その合間にもタングステン龍とワンコロ・ネコウサとの戦いは続いていた。そこにようやく追いついたスギタ先生も加わって火焔魔法などを駆使して攻撃に参加している。
 さすがは冒険者7段の資格を持つスギタ先生である。その火力は並の魔物なら一撃で屠れるほどの威力がある。

 しかし、そもそも火属性のタングステン龍にはあまり効いている様子はない。ワンコロたちの攻撃にしてもどれもこれも、有効打にはほど遠いようである。

「まったく、ちょろちょろと、うっとうしいチビどもだ」
「ぐるるるるる。ここは通さないでござる」
「ソウダモん」

 神獣のくせになんで小声だよ。←読者のツッコみ

「ふん、犬ころの分際で生意気な。我の経験値となるが良い。我の攻撃が一度でも当たればお主など」
「なんだとう!!」
「わぁお、びっくりした。急にでかい声を出しおって」
「だれが犬ころだ!!!!」

「ふん、タイガーウルフと言いたいのだろうが、我からすれば犬ころとたいして変わりは」
「我に向かって失礼だとは思わんのか!!」

 龍が突然しゃべり出したことへのツッコみはないのか? ←読者に問うている。

「あ、いや。失礼とか言われてもだな。我は最強の龍であるぞ。その我から見れば」
「それにしたって失礼にも程がある! 我を犬ころなどと」
「怒ると語尾のござるがなくなるモん?」

「そ、そうか。タイガーウルフの子は珍しいことは珍しいのでいいだろう。じゃあお主が気に入るように呼んでやろう。なんて呼べば良いのだ。冥土の土産に名前ぐらい聞いておいてやるぞ」

「我が名はワンコロ!」
「ワン……はあ?!」
「ワンコロ、だと言っているのだ。以後見知りおけ」

「いやいやいや、待て待て待て。ワンコロだと? 犬ころとワンコロって作者も最初のうち混同していたぐらい似たようなものじゃないのか痛っ!!」

(それをバラすんじゃねぇよ) 作者のツッコみ。

 7本あるうちの足指の一本に噛みつかれて、さすがのタングステン龍も痛かったようである。

「わんほほはほひっておふてあほう」
「痛たたたた。なにを言ってるのか分からん!」
「ワンコロだと言っておるであろう、と言っているモん」

「ん? さらにちっこい犬ころ……じゃないワンコロなのか? が出てきたぞ」
「我が名はネコウサ! ワンコロとは失礼だモん!!」

「もうなんでもいい! 分かった分かった。ワンコロとネコウサな。それにプライドだかこだわりだかがあるんだな。分かった、分かった、そう呼んでやるからもう離せ」
「我らのご主人が付けた名前モん」
「そうなのか。ろくな主人じゃな痛たたたたた、余計に力を入れおった痛たたた」

「あれ? 痛いってことは、そこはタングステンじゃないモん?」
「ああ、我が硬いのは身体の背面だけでな、特に指とか……あ、しまった」
「良いことを聞いたモん。ボクも噛みついてみるモん」
「おいっ、止めろ!!」

 龍の足の爪(の裏側)に狙いを定め、ちょこまかと動いては近づこうとするネコウサとワンコロであったが、龍もさるものひっかくもの。おいそれと近づけさせはしない。うかつに近づけば先端の鋭い爪が彼らを襲う。ほんのちょっとでも触れば致命傷となる。
 
 弱点とはいえ、とても割に合う攻撃とはいえない。しかし、他に方法はなく、二匹は交互に地道な攻撃を加えるのであった。しかし、その攻撃も破綻するときが来る。
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