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第2章 的ななんかそいう感じの章
第43話 ネコウサの失態
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そのときネコウサは考えた。指を普通に狙っても相手が警戒している以上、近づくことも難しい。その上攻撃ができたとして自分の歯では威力に乏しい。ここは逆転の発想だ。上から攻撃して、あの背中を滑り降りて足にたどり着いたら思い切りかぶりつく……よしっ、これだ!
思い付くやいなや、ネコウサは近くのなるべく高い木を選んで登り始めた。木登りは得意である。そして木のてっぺんに到達すると、近くを龍が来るのを待った。
「早く来いモん」
待った。
「早く来いモん」
そして待った。
「早く来いモん」
待ちに待った。しかし、そういうときに限ってなかなか来ないのである。
「早く来ればいいモんうぅぅぅ」
唸るしかないネコウサなのであった。もう少し考えてから登れば良いようなものだが、そこはあのネコウサである。
下ではアノウが、ワンコロが、そして遠巻きながら生徒達が、それぞれの特技を生かした攻撃を続けている。スギタ先生の姿は見えないようであるが、有効打にはほど遠いものの、足止めぐらいにはなっているようだ。
「ボクだけなにもしてないモん……これではサボってるみたいだモん」
「ボクはコウイチじゃないモん。なにもせずにホゲホゲとか嫌だモん」
「あ、こっち来る……ようでまたあっち行っちゃった。あぁ、どんどん離れて行く……、あ、こっち向いた……だけで来ない。もうどうすればいいモん」
ネコウサのひとりよがりは功を奏すことなく、時間だけが過ぎていった。それでもじっくり構えていれば、いつかは狙い通りの場所に来たかもしれないのだが、そんな我慢強さはネコウサにはなかった。
早い話が、待つことに飽きたのである。それで
「もういいや、降りよう」
そして適当なところで飛び降りたのだが、その直後に奇跡というか悲劇が待っていた。
タングステン龍がなにげに振り向いたのである。その目と鼻の先にいたのが、自由落下中のネコウサであった。
「「ふぁっ!?!?!?」」
驚いたのは二匹同時であった。だが飛ぶスキルのないネコウサにとってできることはなにもない。龍にとっては飛んで火に入るなんとかである。邪魔っけなやつを1匹でも退治すれば、この膠着状態から抜け出せる。
とっさにそう考えたタングステン龍は短い時間のうちに狙いを定め口に炎をためた。
その頃、くんずほぐれつつなふたりはといえば。
「マユ姉。ちょっとだけ、尻を持ち上げてくれないか」
「いいいいいったい何をするするつもりつもりだりだりだ?!」
「なんでそんなに動揺してんだよ。俺が手を抜けば結界を解除できるんじゃないかと思ってな。1cmでいい、尻を浮かせてくれれば抜けそうな気がする。そしたらこの結界を解いて、あのなんたら龍を結界に閉じ込めてやる」
「そ、そうか。それなら協力する。それが最良の攻撃だろうな。だがな、だがだぞ、だがだがあれだぞ」
「マユ姉、くどくて何を言っているのか分からん」
「やかましいわ。いいか、くれぐれぐれもおかしなことをするんじゃないぞ、いいな」
「なんだよ、おかしなことって。いままで俺がおかしなことなんか一度もしたこと」
「さんざんやってるだろうが!! まあいい、じゃ、身体を浮かせるから速やかに手を抜くんだぞ。絶対にそれ以外のことはするな、絶対だぞぐいっと」
「しつこいなぁ。変なことなんかしたことないってのに……そうそう、その調子だ。もうちょっとなんとかならんか」
「ぐっぐぐぐぐ、ぐにににぐぐぐぐ」
結界がたわむのはほんのちょっとである。そのちょっとの限度を超えると、カチカチの岩盤状態となる。その硬さたるや、かの剣豪オヨリが愛刀のマーチンD-28で切ろうとしてもキズひとつ付けられなかったぐらいである。ある意味、タングステン以上であるとも言える。
「ぐっぐぐぐぐぐ、ぐぐぐ、ま、まだかコウイチ」
「も、もうちょっと、もうちょっとでなんとかなりそうだ」
「そうか、ぐぐぐっ、はぁはぁは、この体勢、なかなかきついものがあるぐぐぐぐぐ」
「もうちょっと、もうちょっとだからがんばれ……あれ?」
くるりんぱ。
という音がした。
「んぎゃぁぁぁぁぁぁ」
という悲鳴も轟いた。何があったのかと言えば……、まあ、だいたい予想通り――手のひらがひっくり返っただけ――である。
「あ、いや、これはその」
「こ、こ、この、このこのアホタレめがぁぁぁぁ」
「いや、それは俺も想定外のことで……思ってたより肘の後ろのすき間が少なくて抜けなかったんだ。あ、でも、これなら結界魔法が使えるかもしれない」
硬い岩盤から柔らかいソコに替わった分だけ、コウイチの指が自由を得た。その分マユ姉を恥辱は増したのであるが、それはさておき。
「そ、それなら、ぐずぐずしてないでこの結界を解け……あ、ああ。ちょっと待て! あれを見ろ、コウイチ」
「あれってどれ?」
「私がいま見ている……あぁもう、左を向く……のは無理だったな。首を左に回してみろ、その角度なら見えるだろ」
マユ姉からはほぼ正面だが、横から抱きついた形で固まっているコウイチにはマユ姉の側頭部しか見えない。
「首を……えっと左にってそんなむちゃな」
「左に回転って言ってるだろうが」
「あ、そういうことか。それならそうと……あ、あんなとこにタングステン龍がいるじゃないか!!」
「その前だ、その前」
「その前っていうと、マユ姉がいるな」
「そんなに戻るな! 龍の顔の目の前にネコウサがいるだろ」
「ネコウサは飛べないんだよ、そんなアホなことがあるわけない……あれ? あいつ自由落下しながら龍とにらみ合ってるのか? 笑ったら負けなやつか?」
「にらめっこじゃねぇよ! 理由はわからんがネコウサが龍の目の前を落ちている最中だ。あんな至近距離で炎を吐かれたら」
察しの悪いコウイチでもさすがにアレは危険だということに気がついた。そして咄嗟に結界魔法を発動させた。
「ケツ!!」
「ひゃぁぁぁぁぁぁあっ」
現在のところ、コウイチの呪文とマユ姉の悲鳴はセットであるらしい。
龍が真っ赤な炎を吐くのと、結界魔法の発動はほぼ同時であった。炎がネコウサを包み込む寸前に、結界は発動した。
「間に合ったのか?」
「結界はできているが、中身がどうなったかわからん」
「お前の眷属だろ、なんとかならんのか」
「そんなことを言われても……あ、そうだ。結界をこっちに引き寄せればいいんだ。こねこねこね」
「あの状態で解除する訳にはいかないから……待て待て待てコラ待てコラコラ、ごらぁぁぁぁ」
「マユ姉、やかましい」
「ちょ、おま……止め、やめ、それだけは止めろって言ってるだろうがんがんがん!!」
「そんなこと言ったって……頭突きはもうやめろ! 糸を付けないと引っ張れないんだから仕方ないだろ」
「仕方ないとかあるとかそんなことぎゃひゃぁぁぁぁぁ」
悲鳴にもダイバーシティ(多様性)が必要です?
「よし繋がった。ところでマユ姉」
「これからちょっといやら……ヤヤコシイことするけど静かにしていろよ」
「も、も、もうイヤ、こんな人生。別の異世界に転生する」
「終わってからにしろ! いま大変なときなんだ」
「私はすでに大変なわきゃぁぁぁ、やめ、止めろって言ってんぎゃぎょぉぉぉ」
「大人しくしてろってのに、もううるさいやつだなぁくねくね」
「していられるかぁぁぁぁぎゃあぎゃあぎゃあ」
そのときである。
「な、なんか懐かしい声が聞こえるモん?」
「ほわわわわわひゅぅぅぅ……ん? ネコウサちゃん?」
「あれ? その声はマユ姉モん? どこにいるモん」
「あ、糸が繋がったら声が聞こえるようになったのか。おいネコウサ?」
「あ、今度はコウイチの声が聞こえるモん」
「無事か?」
「ぶ、無事みたいだモん」
「この糸は通信もできるんだな、糸電話かよ。それよりさっき、炎の直撃を喰らったようだったが、熱くはないか?」
「大丈夫。ほんのり暖かいモん」
「俺の結界、断熱性すごいな」
「そうか、これコウイチの結界だったのか……わぁお、あいつまた炎を吐く気だモん。ものすごくためてるモん」
「ためてるって?」
「さっきは出会い頭って感じだったでしょ。だからすぐ吐けるだけの炎しか出せなかったのだと思う。あれが全力の炎だったら、あんたの結界が保つかどうかって話よ」
「そ、そうか。それはもう」
「なんだモん?」
「これはダメかもわからんね」
「「無責任なこと言うなぁぁぁ!」」
そうこうしているうちにためにためた炎を、タングステン龍はネコウサ(結界)に向かって吐き出した。ネコウサの、そしてマユ姉とコウイチの視界が真っ白に光った。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ」
これはマユ姉ではなく、ネコウサの悲鳴である。
さきほどの炎は赤かった。温度にして1400度ぐらいと推定される。だからコウイチの結界でも充分防ぐことができたのであるが、今度は青みを帯びた白い炎となっていた。一万度に近いと思われる。
「「ネコウサ!!!」」
叫ぶ以外にはどうすることもできないふたりであった。炭素化したネコウサをどうやって回収するか、コウイチはそんなことを考えていた。
「せめて炭素繊維とかになってくれてたら使い道があるんだが」
「あんたって人はもう!! それでも人間かごんごんごんごん」
「痛い痛い痛い。頭突きはやめろっての。あと、俺はエルフだ」
「だからってそんな言い方はないだろ!」
「いや、炭素になってしまったものをいまさら」
「眷属を勝手に炭素にしないで欲しいモん」
「「生きてたか!!?」」
「なんとか無事だモん」
「そ、それは良かった。熱くはなかったか?」
「ほんのり暖かいモん」
「俺の結界すごいな、おい!」
「だけど次の危機が迫ってるモん」
「なんだそりゃ?」
「龍のやつ、顔に#マークをいっぱい付けて」
「ハッシュタグ?」
「そんなわけあるかぁ! 相当怒っているというマンガ的表現だろ」
「思い切り振りかぶっているモん。あの短い手でボクをたたき落とすつもりモん」
「炎には耐えられたようだが、物理攻撃にはどうなんだ?」
「俺にもわからん。オヨリの刀では斬れなかったが、タングステン龍のバカ力は桁違いだろう」
「「ということは?」
「これはダメかもわからんね」
主人がそんなことで良いのかーー、無責任すぎるモんーー、お主がなんとかしないで誰がするのだーー、少しは責任とか感じて発言しろーー、だけど指だけは動かすなーー云々。
といろんな罵詈雑言を浴びながら、次話に続くのであるホゲホゲ。
「ホゲホゲは止めろ!!! あと、その指もやめアッーーー」
思い付くやいなや、ネコウサは近くのなるべく高い木を選んで登り始めた。木登りは得意である。そして木のてっぺんに到達すると、近くを龍が来るのを待った。
「早く来いモん」
待った。
「早く来いモん」
そして待った。
「早く来いモん」
待ちに待った。しかし、そういうときに限ってなかなか来ないのである。
「早く来ればいいモんうぅぅぅ」
唸るしかないネコウサなのであった。もう少し考えてから登れば良いようなものだが、そこはあのネコウサである。
下ではアノウが、ワンコロが、そして遠巻きながら生徒達が、それぞれの特技を生かした攻撃を続けている。スギタ先生の姿は見えないようであるが、有効打にはほど遠いものの、足止めぐらいにはなっているようだ。
「ボクだけなにもしてないモん……これではサボってるみたいだモん」
「ボクはコウイチじゃないモん。なにもせずにホゲホゲとか嫌だモん」
「あ、こっち来る……ようでまたあっち行っちゃった。あぁ、どんどん離れて行く……、あ、こっち向いた……だけで来ない。もうどうすればいいモん」
ネコウサのひとりよがりは功を奏すことなく、時間だけが過ぎていった。それでもじっくり構えていれば、いつかは狙い通りの場所に来たかもしれないのだが、そんな我慢強さはネコウサにはなかった。
早い話が、待つことに飽きたのである。それで
「もういいや、降りよう」
そして適当なところで飛び降りたのだが、その直後に奇跡というか悲劇が待っていた。
タングステン龍がなにげに振り向いたのである。その目と鼻の先にいたのが、自由落下中のネコウサであった。
「「ふぁっ!?!?!?」」
驚いたのは二匹同時であった。だが飛ぶスキルのないネコウサにとってできることはなにもない。龍にとっては飛んで火に入るなんとかである。邪魔っけなやつを1匹でも退治すれば、この膠着状態から抜け出せる。
とっさにそう考えたタングステン龍は短い時間のうちに狙いを定め口に炎をためた。
その頃、くんずほぐれつつなふたりはといえば。
「マユ姉。ちょっとだけ、尻を持ち上げてくれないか」
「いいいいいったい何をするするつもりつもりだりだりだ?!」
「なんでそんなに動揺してんだよ。俺が手を抜けば結界を解除できるんじゃないかと思ってな。1cmでいい、尻を浮かせてくれれば抜けそうな気がする。そしたらこの結界を解いて、あのなんたら龍を結界に閉じ込めてやる」
「そ、そうか。それなら協力する。それが最良の攻撃だろうな。だがな、だがだぞ、だがだがあれだぞ」
「マユ姉、くどくて何を言っているのか分からん」
「やかましいわ。いいか、くれぐれぐれもおかしなことをするんじゃないぞ、いいな」
「なんだよ、おかしなことって。いままで俺がおかしなことなんか一度もしたこと」
「さんざんやってるだろうが!! まあいい、じゃ、身体を浮かせるから速やかに手を抜くんだぞ。絶対にそれ以外のことはするな、絶対だぞぐいっと」
「しつこいなぁ。変なことなんかしたことないってのに……そうそう、その調子だ。もうちょっとなんとかならんか」
「ぐっぐぐぐぐ、ぐにににぐぐぐぐ」
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「ぐっぐぐぐぐぐ、ぐぐぐ、ま、まだかコウイチ」
「も、もうちょっと、もうちょっとでなんとかなりそうだ」
「そうか、ぐぐぐっ、はぁはぁは、この体勢、なかなかきついものがあるぐぐぐぐぐ」
「もうちょっと、もうちょっとだからがんばれ……あれ?」
くるりんぱ。
という音がした。
「んぎゃぁぁぁぁぁぁ」
という悲鳴も轟いた。何があったのかと言えば……、まあ、だいたい予想通り――手のひらがひっくり返っただけ――である。
「あ、いや、これはその」
「こ、こ、この、このこのアホタレめがぁぁぁぁ」
「いや、それは俺も想定外のことで……思ってたより肘の後ろのすき間が少なくて抜けなかったんだ。あ、でも、これなら結界魔法が使えるかもしれない」
硬い岩盤から柔らかいソコに替わった分だけ、コウイチの指が自由を得た。その分マユ姉を恥辱は増したのであるが、それはさておき。
「そ、それなら、ぐずぐずしてないでこの結界を解け……あ、ああ。ちょっと待て! あれを見ろ、コウイチ」
「あれってどれ?」
「私がいま見ている……あぁもう、左を向く……のは無理だったな。首を左に回してみろ、その角度なら見えるだろ」
マユ姉からはほぼ正面だが、横から抱きついた形で固まっているコウイチにはマユ姉の側頭部しか見えない。
「首を……えっと左にってそんなむちゃな」
「左に回転って言ってるだろうが」
「あ、そういうことか。それならそうと……あ、あんなとこにタングステン龍がいるじゃないか!!」
「その前だ、その前」
「その前っていうと、マユ姉がいるな」
「そんなに戻るな! 龍の顔の目の前にネコウサがいるだろ」
「ネコウサは飛べないんだよ、そんなアホなことがあるわけない……あれ? あいつ自由落下しながら龍とにらみ合ってるのか? 笑ったら負けなやつか?」
「にらめっこじゃねぇよ! 理由はわからんがネコウサが龍の目の前を落ちている最中だ。あんな至近距離で炎を吐かれたら」
察しの悪いコウイチでもさすがにアレは危険だということに気がついた。そして咄嗟に結界魔法を発動させた。
「ケツ!!」
「ひゃぁぁぁぁぁぁあっ」
現在のところ、コウイチの呪文とマユ姉の悲鳴はセットであるらしい。
龍が真っ赤な炎を吐くのと、結界魔法の発動はほぼ同時であった。炎がネコウサを包み込む寸前に、結界は発動した。
「間に合ったのか?」
「結界はできているが、中身がどうなったかわからん」
「お前の眷属だろ、なんとかならんのか」
「そんなことを言われても……あ、そうだ。結界をこっちに引き寄せればいいんだ。こねこねこね」
「あの状態で解除する訳にはいかないから……待て待て待てコラ待てコラコラ、ごらぁぁぁぁ」
「マユ姉、やかましい」
「ちょ、おま……止め、やめ、それだけは止めろって言ってるだろうがんがんがん!!」
「そんなこと言ったって……頭突きはもうやめろ! 糸を付けないと引っ張れないんだから仕方ないだろ」
「仕方ないとかあるとかそんなことぎゃひゃぁぁぁぁぁ」
悲鳴にもダイバーシティ(多様性)が必要です?
「よし繋がった。ところでマユ姉」
「これからちょっといやら……ヤヤコシイことするけど静かにしていろよ」
「も、も、もうイヤ、こんな人生。別の異世界に転生する」
「終わってからにしろ! いま大変なときなんだ」
「私はすでに大変なわきゃぁぁぁ、やめ、止めろって言ってんぎゃぎょぉぉぉ」
「大人しくしてろってのに、もううるさいやつだなぁくねくね」
「していられるかぁぁぁぁぎゃあぎゃあぎゃあ」
そのときである。
「な、なんか懐かしい声が聞こえるモん?」
「ほわわわわわひゅぅぅぅ……ん? ネコウサちゃん?」
「あれ? その声はマユ姉モん? どこにいるモん」
「あ、糸が繋がったら声が聞こえるようになったのか。おいネコウサ?」
「あ、今度はコウイチの声が聞こえるモん」
「無事か?」
「ぶ、無事みたいだモん」
「この糸は通信もできるんだな、糸電話かよ。それよりさっき、炎の直撃を喰らったようだったが、熱くはないか?」
「大丈夫。ほんのり暖かいモん」
「俺の結界、断熱性すごいな」
「そうか、これコウイチの結界だったのか……わぁお、あいつまた炎を吐く気だモん。ものすごくためてるモん」
「ためてるって?」
「さっきは出会い頭って感じだったでしょ。だからすぐ吐けるだけの炎しか出せなかったのだと思う。あれが全力の炎だったら、あんたの結界が保つかどうかって話よ」
「そ、そうか。それはもう」
「なんだモん?」
「これはダメかもわからんね」
「「無責任なこと言うなぁぁぁ!」」
そうこうしているうちにためにためた炎を、タングステン龍はネコウサ(結界)に向かって吐き出した。ネコウサの、そしてマユ姉とコウイチの視界が真っ白に光った。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ」
これはマユ姉ではなく、ネコウサの悲鳴である。
さきほどの炎は赤かった。温度にして1400度ぐらいと推定される。だからコウイチの結界でも充分防ぐことができたのであるが、今度は青みを帯びた白い炎となっていた。一万度に近いと思われる。
「「ネコウサ!!!」」
叫ぶ以外にはどうすることもできないふたりであった。炭素化したネコウサをどうやって回収するか、コウイチはそんなことを考えていた。
「せめて炭素繊維とかになってくれてたら使い道があるんだが」
「あんたって人はもう!! それでも人間かごんごんごんごん」
「痛い痛い痛い。頭突きはやめろっての。あと、俺はエルフだ」
「だからってそんな言い方はないだろ!」
「いや、炭素になってしまったものをいまさら」
「眷属を勝手に炭素にしないで欲しいモん」
「「生きてたか!!?」」
「なんとか無事だモん」
「そ、それは良かった。熱くはなかったか?」
「ほんのり暖かいモん」
「俺の結界すごいな、おい!」
「だけど次の危機が迫ってるモん」
「なんだそりゃ?」
「龍のやつ、顔に#マークをいっぱい付けて」
「ハッシュタグ?」
「そんなわけあるかぁ! 相当怒っているというマンガ的表現だろ」
「思い切り振りかぶっているモん。あの短い手でボクをたたき落とすつもりモん」
「炎には耐えられたようだが、物理攻撃にはどうなんだ?」
「俺にもわからん。オヨリの刀では斬れなかったが、タングステン龍のバカ力は桁違いだろう」
「「ということは?」
「これはダメかもわからんね」
主人がそんなことで良いのかーー、無責任すぎるモんーー、お主がなんとかしないで誰がするのだーー、少しは責任とか感じて発言しろーー、だけど指だけは動かすなーー云々。
といろんな罵詈雑言を浴びながら、次話に続くのであるホゲホゲ。
「ホゲホゲは止めろ!!! あと、その指もやめアッーーー」
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