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第2章 的ななんかそいう感じの章
第46話 マユ姉伝説の始まり
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「で?」
「ん? なんだオツ」
「お主は参加しないのか?」
「参加って、ああ、あのごちゃごちゃやってる作業にか」
「仮にもあのタングステン龍を倒したたたあぁぁあ……チームにいたんだ。作業を手伝えばなにか報酬とかあるのではないか?」
「倒したのあとの文字列がなんか間延びしたようだが? 報酬とかそれはもっと後のことだろ。学校に帰ってからとかな。いまのあいつらを見ろよ。大汗かいて一生懸命働いているだろ」
「それはそうだ。大怪獣を倒した後始末ってのは大変なのだ」
「いや、怪獣のことは知らんがな」
「だが、その後にご褒美があるからみんなは一生懸命に」
「そう、それだよ!!」
「わぉ、びっくりした。なんだなんだ。どこのなにがそれなのだ?」
「いまあそこに参加したら、俺まで仕事を手伝うハメになるだろうが」
「そ、それは、まあ、そうだ。働かざるもの食うべからずとマインも言ってたぞ」
「誰だよ。仕事なんかするの嫌だ。全部片付いたころにひょっこり現れて、貰えるもの貰ってほなサイならと。それが俺の生きる道だ」
「……情けない生きる道もあったものだな。それでは貰えるものが少なくなるぞ」
「別に金には困ってないし住むところもあるし。ヘタな冒険アイテムなんかもらったら使い道に困るし」
「困ることはないと思うが」
「武器や防具を貰ったら冒険者になってしまうだろうが」
「だから冒険者になれと言って」
「それは嫌だ!」
「また食い気味に拒否しおった。そんなことでいいのか。せっかく転生してきたというのに」
「それでいいに決まっている。そもそも俺は自分の手を汚すことは嫌いなんだ。これから本当のスローライフというものを読者に見せてやるんだ」
「……もはや付ける薬がないな」
「いやぁ、それほどでもないけどな」
「褒めてねぇよ」
はぁぁあ。←読者のため息である。
ところで。コウイチが嫌がった作業場では、ちょっとした騒動が起きていた。
「んがっ、ご。。。ぐぐぐぐぐ……えぇぇい!!」
「次は俺な。へいさぁぁぁぁぁぁぁ」
「ふっふっふ。どけどけお前ら。こんなものは力じゃない。タイミングとテクニックだ。ぐぐぐぐぐぐぐぐぇぇぇおぉぉ」
力自慢の冒険者たちが、作業の合間に入れ替わり立ち替わりチャレンジしているのは。
「ここはタングステン龍のシッポの部分だよな」
「恐らくそうだろう。あの尖ったシッポが倒れるときに勢いよく地面に突き刺さったのだと思われる」
「ということは」
「「「最初に抜いた奴がもらっていいんだよな?!」」」
ってなことになって、ちょっとした騒動――シッポ抜き合戦――が勃発したのである。だが、あまりに抜けないものだから、これはきっと伝説の剣に違いない。選ばれた勇者とか英雄とかだけが抜ける剣なのだと。
冒険者たちの頭の中で、シッポが伝説の剣に変換されていたのであった。そしてシッポ抜き大会は、伝説の剣の持ち主を選ぶ神聖な儀式へと勝手に変質したのである。
しかし。
「ぐわぁぁぉぉぉえぇぇ」
「ふんぐっっっっっ」
「「「ダメだ、抜けない」」」
結果はなにも変わらないのであった。
誰もが2回3回10回20回と挑戦したが、抜くことはできなかった。アノウもスギタ先生も、そしてマユ姉も繰り返し繰り返しチャレンジしたが、抜くことができないまま夜となった。
暗くなるころにはとりあえずの片付けは終わったようである。後は大量に発生した魔石の分配である.タングステン龍の胴体から数百、頭部から数百、4本の足、長い首、尾などからそれぞれ数百の魔石が発生したのだ。量は多過ぎそれぞれの品質も判明しないため、明日明るくなってから確認することになった。
片付けが終われば言うまでもなく龍の肉で宴会である。肉は基本応援に来てくれたウツミの冒険者たちに分配することになっていたが、それにしても大量なので、宴会に使おうということになった。
酒は近くのウツミ市から取り寄せ、ついでに市民や商人までも混じって飲めや歌えや踊れや抜けや(刀を)の大宴会となったのである。
「ふむ、そろそろだな」
「なにがどうした?」
「オツ、分からんか。そろそろ仕事が終わって宴会に突入したようだ。もう俺が混ざっても良いころだ、と思ってな」
「やれやれ。仕事はしないのに宴会には参加するのか」
「その通り、それが俺の生きる道」
「自慢気に言うことじゃねぇ!」
そしてコウイチがコソコソと宴会場に近づいて行くと、いろんな酔っ払いが寄ってきた。
「おっ、エルフのねーちゃん、ちょっとこっち来て酒をついでくれよ……えっ?」
「ええケツしてんじゃねぇか。今晩どうだ、一発俺と……あれ?」
ことごとく結界の中に閉じ込めて行くのであった。
「「「「「出してくれぇぇぇ」」」」」
「まったく、冒険者ってのはろくなのがいないな。こっちの連中の民度が分かるぞ」
「酔ってるとはいえそれについてはコウイチに賛同する」
「男と女ぐらい見極めやがれ」
「そっちかよ。それについてはお前がスカートなんかはいてるから……ん? なんだ、あの人だかりは」
「酔った勢いとはいえ、えらく盛り上がってるな」
「地面に刺さってるものを抜こうとしているようだ」
「なにが刺さってるんだろ?」
「あの場所からして、タングステン龍の尾ではないか」
「ふぅん」
「全然興味なしかよ」
「タングステンだろ? ひのき龍の尾だったら引っこ抜いて貰ってゆくとこだが」
「木製の龍なんていねぇよ!」
「なにを揉めてるモんもぐもぐ?」
「おおっ、ネコウサ、無事だったのか!」
「いまごろなにを言ってるモん。みんなにちやほやされて有頂天だモん」
「なんでちやほやされるんだよ。あと、自分で有頂天言うな」
「おかげでもう10年分ぐらいのお酒飲んじゃったモん」
「そ、そうか。それは良かったな。熱くはないか?」
「ほんのり暖かい……ってそれはさっきさんざんやったモん」
「我らのことなどすっかり忘れていたでござるなもぐもぐ」
「そ、それはだなあははは。ワンコロも元気そうでなによりだ。それいしてもタングステン龍ってたいしたことなかったようだな」
「「「ふぁぁ!?」」」
「な、なんだよ、オツまで声を揃えてツッコみやがって。そんなに驚くことか」
「驚いたというより」
「呆れて出たツッコみでござる」
「もぐもぐモん」
「あ、その骨付き肉うまそうだな。俺にもそれよこせ」
「全然働いてないくせにボソッ」
「オツはうるさいよ。働いてなくても時間が経てば腹は減るんだ、仕方ないだろ」
「あっちで焼いてるモん。皿を持ってゆけば分けてくれるモん」
「そうか。それじゃさっそく行って来よう」
そしてごく自然にご相伴にあずかるコウイチなのであった。
「なるほど、これがタングステン龍の肉か。うまいものだな」
「エルフのお嬢ちゃんも初めてかい? 俺も初めてだが、ほんとこれはうまいな。あんなカチカチの皮膚してやがるくせに、なんてジューシーな肉だこと。いくらでも食える」
「(こいつ誰だ?)お嬢ちゃんは止めろ。だがほんとにうまい。まだ大量にあるようだし、どんどん食うぞー」
「これは俺のギルドからの提供品だ。いくらでも食ってくれ。ところで、見ない顔だがどこから来たんだ?」
「あっち」
「そ、そうか。俺はウツミの冒険者ギルドの長をやってるアサオと言う、よろしくな」
「あ、そう」
「ずいぶんとそっけないエルフだなおい」
(ダジャレのつもりだったのに、スルーされたな)
(う、うっさい)
「もぐもぐそういえばあんたはアレ、まだやってないのか?」
「もぐもぐ?」
「みんながやってるだろ、あの伝説の剣を抜く神事だ」
「もぐもぐ」
「まだやってないのか。ダメ元でやってみたらどうだ? 女性でも抜けるかも知れないぞ」
「もぐぐもぐぐっぐ」
「興味がない? 珍しい娘だな。冒険者になるために学校行ってるんだろ?」
「もぐおぐぐぐもぐぐぐ」
「分かった、落ち着いて食え」
(どうして会話が成立しているのか分からん)
(オツ、俺もだよ)
(お前がそれでどうするよ)
そんなお食事中にも剣を抜こうとするものは途切れることなく、神事は続いていた。それでも抜けるものは誰もいなかった。そして伝説となるその瞬間がやってくる。この剣にまるで興味のない者によって引き起こされたその瞬間は、あまりにもあっけない結末を迎えるのである。
「もぐもぐも……あれ、マユ姉じゃないか」
「ああ、あの娘、マユ姉? って言うのか。昼間から何度もチャレンジしているようだな。回数ならおそらくナンバー1だ。よほどあれが欲しいらしい」
「ふーんもぐ」
(そうだ、コウイチちょっとここでポイント稼いでおかないか?)
(もぐ?)
(心の声なんだから普通にしゃべれ。いいか、俺が指示するからそのタイミングでこうこうこういう感じの結界を作れ)
(なんのこっちゃ分からんけど、別にかまわんが。そんなことして良いのか?)
(大丈夫だ。みんな酔っ払っているからバレやしない)
(なにがバレるんだ?)
オツは抜けないほど深く岩に刺さった剣を抜くには、その回りの岩を柔らかくすれば良いと考えた。剣の回りの岩だけ、コウイチの結界を掛けては解除してを繰り返すのである。それで岩を細かい石レベルにまで砕くことができるはずだと。
(いいから、ほれ。あれこれこういう形状でああしてこうして)
(ややこしいなもう、えっとこういう感じでケツっ!)
(それでいい、そしてすぐ解除しろ)
(で、カイっと)
(もう一度けつを)
(マユ姉のケツならさっきからずっと穴が空くほど見ているが。あ、穴が空いてる)
(そこは見るな! そんなことじゃない。もう一度結界を張れと言ったんだ)
(それならそうと言えよ。そっちじゃつまらんが、とりあえずケツっ)
(分かりそうなものだがな。それをもう3回繰り返せ)
(カイっ、そしてケツっ、ほんでカイっ、更にケツっ、カイ。これでいいか? それにしても)
(よし、もういいだろう? それにしてもとは?)
(マユ姉って良い尻してやがるな)
(お前もさっきの冒険者と同じだよ!)
その一部始終を冒険者たち(酔っ払い)は見ていた。
「おいおい、なんかいま剣が光ったように見えなふぁったか?」
「なんふぁ、そんなふぁんじもしたような……」
「どうでもいいひょ。どうせ抜けないふぁぁぁ」
見ていただけで正しくは認識していなかった。ただ、アサオだけは酒よりも食べ物に集中していたため、異変を察知していた。してはいたが。
「今なんか、剣の回りで光が点滅したようだったが。まあ、いいかもぐもぐ」
異変よりも食い気なのであった。
オツの指示でコウイチが結界魔法を掛けたり解いたりしたのは、マユ姉が数百回目かのチャンレジをする直前だった。
結界魔法を掛けたり解いたりしたその剣(というかシッポなのだが)は、刺さっていた地面がコウイチの結界で繰り返し破壊され、くたくたになっていた。
地面と剣との摩擦抵抗はほぼないも同然であった。そこに何度も抜こうとした経験から、カチカチであることを予測していた(そして酔っていた)マユ姉が、刀のとっかかりを握り引き抜こうと思い切り体重を後ろにかけた瞬間。
「どぉら……ああぁああぁぁぁはぁぁほわぁぁ???」
というわけの分からない悲鳴を上げて後ろにひっくり返ったのであった。しかし、刀を手放さなかったのはさすがである。
それを酔った目でぼんやり見ていた冒険者たちは驚いた。
「お、おい。なんか抜けたみたいなんだが」
「へにゃ? 抜けたのか、それは良かったな。そんな良いAVがあるんなら貸してくれ。俺も抜きたほにゃ」
「ばかやろう! そうじゃない。あの剣……研堂しずほという子のAVはそりゃもうすごひゃったほ」
「そうか、それはぜひにほにゅぁ」
驚いただけで正しく認識してはいなかった。
「ぬ、抜いたぞぁぁぁぁぁ!!!」
仰向けに倒れたままのマユ姉の絶叫が森中に響き渡り、それはマユ姉伝説始まりの合図でもあった。
「そりゃ抜けるだろ。俺が回りの土をぐだぐだにぐぅぅぅ」
「しーー! 静かに!」
「ふがふが、ほえ」
「ここでバラしたら意味がないモん」
「意味って、どんな?」
「読者は知っているのに肝心の登場人物は知らないという高度なラノベテクニックでござるな」
これ、高度やろか?
「ん? なんだオツ」
「お主は参加しないのか?」
「参加って、ああ、あのごちゃごちゃやってる作業にか」
「仮にもあのタングステン龍を倒したたたあぁぁあ……チームにいたんだ。作業を手伝えばなにか報酬とかあるのではないか?」
「倒したのあとの文字列がなんか間延びしたようだが? 報酬とかそれはもっと後のことだろ。学校に帰ってからとかな。いまのあいつらを見ろよ。大汗かいて一生懸命働いているだろ」
「それはそうだ。大怪獣を倒した後始末ってのは大変なのだ」
「いや、怪獣のことは知らんがな」
「だが、その後にご褒美があるからみんなは一生懸命に」
「そう、それだよ!!」
「わぉ、びっくりした。なんだなんだ。どこのなにがそれなのだ?」
「いまあそこに参加したら、俺まで仕事を手伝うハメになるだろうが」
「そ、それは、まあ、そうだ。働かざるもの食うべからずとマインも言ってたぞ」
「誰だよ。仕事なんかするの嫌だ。全部片付いたころにひょっこり現れて、貰えるもの貰ってほなサイならと。それが俺の生きる道だ」
「……情けない生きる道もあったものだな。それでは貰えるものが少なくなるぞ」
「別に金には困ってないし住むところもあるし。ヘタな冒険アイテムなんかもらったら使い道に困るし」
「困ることはないと思うが」
「武器や防具を貰ったら冒険者になってしまうだろうが」
「だから冒険者になれと言って」
「それは嫌だ!」
「また食い気味に拒否しおった。そんなことでいいのか。せっかく転生してきたというのに」
「それでいいに決まっている。そもそも俺は自分の手を汚すことは嫌いなんだ。これから本当のスローライフというものを読者に見せてやるんだ」
「……もはや付ける薬がないな」
「いやぁ、それほどでもないけどな」
「褒めてねぇよ」
はぁぁあ。←読者のため息である。
ところで。コウイチが嫌がった作業場では、ちょっとした騒動が起きていた。
「んがっ、ご。。。ぐぐぐぐぐ……えぇぇい!!」
「次は俺な。へいさぁぁぁぁぁぁぁ」
「ふっふっふ。どけどけお前ら。こんなものは力じゃない。タイミングとテクニックだ。ぐぐぐぐぐぐぐぐぇぇぇおぉぉ」
力自慢の冒険者たちが、作業の合間に入れ替わり立ち替わりチャレンジしているのは。
「ここはタングステン龍のシッポの部分だよな」
「恐らくそうだろう。あの尖ったシッポが倒れるときに勢いよく地面に突き刺さったのだと思われる」
「ということは」
「「「最初に抜いた奴がもらっていいんだよな?!」」」
ってなことになって、ちょっとした騒動――シッポ抜き合戦――が勃発したのである。だが、あまりに抜けないものだから、これはきっと伝説の剣に違いない。選ばれた勇者とか英雄とかだけが抜ける剣なのだと。
冒険者たちの頭の中で、シッポが伝説の剣に変換されていたのであった。そしてシッポ抜き大会は、伝説の剣の持ち主を選ぶ神聖な儀式へと勝手に変質したのである。
しかし。
「ぐわぁぁぉぉぉえぇぇ」
「ふんぐっっっっっ」
「「「ダメだ、抜けない」」」
結果はなにも変わらないのであった。
誰もが2回3回10回20回と挑戦したが、抜くことはできなかった。アノウもスギタ先生も、そしてマユ姉も繰り返し繰り返しチャレンジしたが、抜くことができないまま夜となった。
暗くなるころにはとりあえずの片付けは終わったようである。後は大量に発生した魔石の分配である.タングステン龍の胴体から数百、頭部から数百、4本の足、長い首、尾などからそれぞれ数百の魔石が発生したのだ。量は多過ぎそれぞれの品質も判明しないため、明日明るくなってから確認することになった。
片付けが終われば言うまでもなく龍の肉で宴会である。肉は基本応援に来てくれたウツミの冒険者たちに分配することになっていたが、それにしても大量なので、宴会に使おうということになった。
酒は近くのウツミ市から取り寄せ、ついでに市民や商人までも混じって飲めや歌えや踊れや抜けや(刀を)の大宴会となったのである。
「ふむ、そろそろだな」
「なにがどうした?」
「オツ、分からんか。そろそろ仕事が終わって宴会に突入したようだ。もう俺が混ざっても良いころだ、と思ってな」
「やれやれ。仕事はしないのに宴会には参加するのか」
「その通り、それが俺の生きる道」
「自慢気に言うことじゃねぇ!」
そしてコウイチがコソコソと宴会場に近づいて行くと、いろんな酔っ払いが寄ってきた。
「おっ、エルフのねーちゃん、ちょっとこっち来て酒をついでくれよ……えっ?」
「ええケツしてんじゃねぇか。今晩どうだ、一発俺と……あれ?」
ことごとく結界の中に閉じ込めて行くのであった。
「「「「「出してくれぇぇぇ」」」」」
「まったく、冒険者ってのはろくなのがいないな。こっちの連中の民度が分かるぞ」
「酔ってるとはいえそれについてはコウイチに賛同する」
「男と女ぐらい見極めやがれ」
「そっちかよ。それについてはお前がスカートなんかはいてるから……ん? なんだ、あの人だかりは」
「酔った勢いとはいえ、えらく盛り上がってるな」
「地面に刺さってるものを抜こうとしているようだ」
「なにが刺さってるんだろ?」
「あの場所からして、タングステン龍の尾ではないか」
「ふぅん」
「全然興味なしかよ」
「タングステンだろ? ひのき龍の尾だったら引っこ抜いて貰ってゆくとこだが」
「木製の龍なんていねぇよ!」
「なにを揉めてるモんもぐもぐ?」
「おおっ、ネコウサ、無事だったのか!」
「いまごろなにを言ってるモん。みんなにちやほやされて有頂天だモん」
「なんでちやほやされるんだよ。あと、自分で有頂天言うな」
「おかげでもう10年分ぐらいのお酒飲んじゃったモん」
「そ、そうか。それは良かったな。熱くはないか?」
「ほんのり暖かい……ってそれはさっきさんざんやったモん」
「我らのことなどすっかり忘れていたでござるなもぐもぐ」
「そ、それはだなあははは。ワンコロも元気そうでなによりだ。それいしてもタングステン龍ってたいしたことなかったようだな」
「「「ふぁぁ!?」」」
「な、なんだよ、オツまで声を揃えてツッコみやがって。そんなに驚くことか」
「驚いたというより」
「呆れて出たツッコみでござる」
「もぐもぐモん」
「あ、その骨付き肉うまそうだな。俺にもそれよこせ」
「全然働いてないくせにボソッ」
「オツはうるさいよ。働いてなくても時間が経てば腹は減るんだ、仕方ないだろ」
「あっちで焼いてるモん。皿を持ってゆけば分けてくれるモん」
「そうか。それじゃさっそく行って来よう」
そしてごく自然にご相伴にあずかるコウイチなのであった。
「なるほど、これがタングステン龍の肉か。うまいものだな」
「エルフのお嬢ちゃんも初めてかい? 俺も初めてだが、ほんとこれはうまいな。あんなカチカチの皮膚してやがるくせに、なんてジューシーな肉だこと。いくらでも食える」
「(こいつ誰だ?)お嬢ちゃんは止めろ。だがほんとにうまい。まだ大量にあるようだし、どんどん食うぞー」
「これは俺のギルドからの提供品だ。いくらでも食ってくれ。ところで、見ない顔だがどこから来たんだ?」
「あっち」
「そ、そうか。俺はウツミの冒険者ギルドの長をやってるアサオと言う、よろしくな」
「あ、そう」
「ずいぶんとそっけないエルフだなおい」
(ダジャレのつもりだったのに、スルーされたな)
(う、うっさい)
「もぐもぐそういえばあんたはアレ、まだやってないのか?」
「もぐもぐ?」
「みんながやってるだろ、あの伝説の剣を抜く神事だ」
「もぐもぐ」
「まだやってないのか。ダメ元でやってみたらどうだ? 女性でも抜けるかも知れないぞ」
「もぐぐもぐぐっぐ」
「興味がない? 珍しい娘だな。冒険者になるために学校行ってるんだろ?」
「もぐおぐぐぐもぐぐぐ」
「分かった、落ち着いて食え」
(どうして会話が成立しているのか分からん)
(オツ、俺もだよ)
(お前がそれでどうするよ)
そんなお食事中にも剣を抜こうとするものは途切れることなく、神事は続いていた。それでも抜けるものは誰もいなかった。そして伝説となるその瞬間がやってくる。この剣にまるで興味のない者によって引き起こされたその瞬間は、あまりにもあっけない結末を迎えるのである。
「もぐもぐも……あれ、マユ姉じゃないか」
「ああ、あの娘、マユ姉? って言うのか。昼間から何度もチャレンジしているようだな。回数ならおそらくナンバー1だ。よほどあれが欲しいらしい」
「ふーんもぐ」
(そうだ、コウイチちょっとここでポイント稼いでおかないか?)
(もぐ?)
(心の声なんだから普通にしゃべれ。いいか、俺が指示するからそのタイミングでこうこうこういう感じの結界を作れ)
(なんのこっちゃ分からんけど、別にかまわんが。そんなことして良いのか?)
(大丈夫だ。みんな酔っ払っているからバレやしない)
(なにがバレるんだ?)
オツは抜けないほど深く岩に刺さった剣を抜くには、その回りの岩を柔らかくすれば良いと考えた。剣の回りの岩だけ、コウイチの結界を掛けては解除してを繰り返すのである。それで岩を細かい石レベルにまで砕くことができるはずだと。
(いいから、ほれ。あれこれこういう形状でああしてこうして)
(ややこしいなもう、えっとこういう感じでケツっ!)
(それでいい、そしてすぐ解除しろ)
(で、カイっと)
(もう一度けつを)
(マユ姉のケツならさっきからずっと穴が空くほど見ているが。あ、穴が空いてる)
(そこは見るな! そんなことじゃない。もう一度結界を張れと言ったんだ)
(それならそうと言えよ。そっちじゃつまらんが、とりあえずケツっ)
(分かりそうなものだがな。それをもう3回繰り返せ)
(カイっ、そしてケツっ、ほんでカイっ、更にケツっ、カイ。これでいいか? それにしても)
(よし、もういいだろう? それにしてもとは?)
(マユ姉って良い尻してやがるな)
(お前もさっきの冒険者と同じだよ!)
その一部始終を冒険者たち(酔っ払い)は見ていた。
「おいおい、なんかいま剣が光ったように見えなふぁったか?」
「なんふぁ、そんなふぁんじもしたような……」
「どうでもいいひょ。どうせ抜けないふぁぁぁ」
見ていただけで正しくは認識していなかった。ただ、アサオだけは酒よりも食べ物に集中していたため、異変を察知していた。してはいたが。
「今なんか、剣の回りで光が点滅したようだったが。まあ、いいかもぐもぐ」
異変よりも食い気なのであった。
オツの指示でコウイチが結界魔法を掛けたり解いたりしたのは、マユ姉が数百回目かのチャンレジをする直前だった。
結界魔法を掛けたり解いたりしたその剣(というかシッポなのだが)は、刺さっていた地面がコウイチの結界で繰り返し破壊され、くたくたになっていた。
地面と剣との摩擦抵抗はほぼないも同然であった。そこに何度も抜こうとした経験から、カチカチであることを予測していた(そして酔っていた)マユ姉が、刀のとっかかりを握り引き抜こうと思い切り体重を後ろにかけた瞬間。
「どぉら……ああぁああぁぁぁはぁぁほわぁぁ???」
というわけの分からない悲鳴を上げて後ろにひっくり返ったのであった。しかし、刀を手放さなかったのはさすがである。
それを酔った目でぼんやり見ていた冒険者たちは驚いた。
「お、おい。なんか抜けたみたいなんだが」
「へにゃ? 抜けたのか、それは良かったな。そんな良いAVがあるんなら貸してくれ。俺も抜きたほにゃ」
「ばかやろう! そうじゃない。あの剣……研堂しずほという子のAVはそりゃもうすごひゃったほ」
「そうか、それはぜひにほにゅぁ」
驚いただけで正しく認識してはいなかった。
「ぬ、抜いたぞぁぁぁぁぁ!!!」
仰向けに倒れたままのマユ姉の絶叫が森中に響き渡り、それはマユ姉伝説始まりの合図でもあった。
「そりゃ抜けるだろ。俺が回りの土をぐだぐだにぐぅぅぅ」
「しーー! 静かに!」
「ふがふが、ほえ」
「ここでバラしたら意味がないモん」
「意味って、どんな?」
「読者は知っているのに肝心の登場人物は知らないという高度なラノベテクニックでござるな」
これ、高度やろか?
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会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
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