スローなライフにしてくれ

soue kitakaze

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第2章 的ななんかそいう感じの章

第47話 魔石は別腹

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 草木も眠る丑三つ時である。

「おい、そろそろ起きろ。ワンコロ、ネコウサ」
「オツ殿。拙者はもう起きてるでござるよ」
「ボクだってほっくに起きほにゃほにゅゆぐぅぅ」

「さすがワンコロだ……が、こいつはねぼすけだなぁ」
「ものすごい勢いでお酒飲んでたでござるから」
「おい! ネコウサ!!」
「おお、おき、起きてると言ってるモんだモんモんぐぅ」

「もう置いてかない? このエルフ」
「いや、エルフではないでござるが」
「ミミックに食べられたような寝顔だ」
「どんな寝顔?!」

「仕方ない、ワンコロ背負ってやってくれ」
「それは難しいでござる。我らはここをくわえてかぷっ」
「ふぁぁぁ?!」
「それでいいか。それじゃ行くとしよう」

 わくわくな足取りで歩くタイガーウルフと、首根っこをくわえられて寝たまま運ばれる神獣。そしてそれを指揮する見えない貴神が向かった先は、タングステン龍を倒した後に発生した魔石の山である。

 タングステン龍に限らず多くの魔物は、それまでに食べた魔物の何割かを魔石として身体に蓄積している。タングステン龍の場合は獲物にした魔物の数が圧倒的に多く、数え切れないほど多くの魔石を内包していた。倒されたことにより膨大な数の魔石が出現したのだ。

 あまりに多いので数えるのは次の日にしてまずは宴会だ……という冒険者たちの甘い考えが、ある意味悲劇を招いたのである。

「いまなら食べ放題でござるわくわく」

 ワンコロにとってはこの上ない幸運であった。

「ボクは別にあんなもの食べなくてもいいモん」
「この間、岩をごりごり食べてたではござらんか。食べてみればネコウサ殿もきっとお気に召すでござるよ」
「岩は別の理由でたまに食べるんだけど。ワンコロがそういうなら食べてみるモん。だけどワンコロの分が減っちゃうモん?」

「いや、食べきれないほどあるから気にしないでござるわくわく」
「どうしてわくわくしてるモん?」
「食べてみれば分かるでござるよ」

 そういうことならと、納得したネコウサもワンコロと同時に囓り始めたのだが。

「ごりごりごりごり、ばくばくごりずり、ばくばく」
「ごりごり……ネコウサ殿、ものすごい勢いで食べているでござるな」
「いや、これ、ちょっとゴリゴリ、この歯ごたえは癖になるというかなんかというかゴリゴリ」

 魔石にはもともと持っていた魔物のスキルを内包しており、食べることによりある確率でそれを自分のものにすることができるのだ。

 人にはほとんど知られていないが、ワンコロはかつての両親や仲間たちから聞いて知っていた。コウイチに先祖の魔石をくれと言ったのも同じ理由である。
 ただし、全部が全部スキルを持っている魔石とは限らない。また、食べたものの特性(相性)によって、使えるスキルとそうでないものとが存在する。
 また、すでに持っているスキルを持つ魔石を食べるとスキルレベルが上がる場合がある。ワンコロの狙いはまさしくそこにあった。

「あ、良いものを見つけたでござる。ネコウサ殿、これを食べてみるでござる」
「ごり……ん? なに? その魔石がどうかしたモん?」
「食べてみれば分かるでござる。これには火を噴くスキルが秘められているでござるよ」

「ええっ!? そ、そん、そんなことができるモん?!」
「あれあれ。気づかないでいままで食べてたでござるか?」
「ただ闇雲に食べてたモん。花崗岩よりはおいしいかなって」
「花崗岩と比べるものではないでござるが。魔石には特定のスキルが内包されていて、食べるとそのスキルが身につく場合があるでござる」

「そうだったのか。で、その魔石はどんなやつだモん?」
「我の見立てでは、火焔龍」
「ふぁぁぁl!? 火焔龍ってあのタングステン龍なみの強力な炎を吐くという」

「風(ふう)スライムの魔石でござる」
「風かモん!!!!」
「スライムは本来弱い魔物なので、いろんなものに擬態する種類があるでござる。火焔龍は単独では地上最強の魔物なので、それに擬態したがるスライムは多いでござる」

「ツッコみは得意じゃないのでさせないでもらいたいモん。でも擬態したぐらいで能力まで身につくモん?」
「長年擬態していると、ある程度の力を身につくでござる。劣化コピーといえど侮れないものでござる」

「へぇ、起用な魔物だモん。で、その火焔龍風スライムの魔石を食べるとどんなスキルが?」
「火を吐けるようになるでござる。ただ、それほど強くはないでござるが、ネコウサ殿はこちらに来てからかつて使えていたはずの魔法が使えなくなったと言っておったでござろう?」

「う、うん。そうだモん。ボクは静電気やミニ火花で敵に嫌がらせをするのが得意だったモん」
「これを食べればもっと大きな炎を出せるようになるでござるよ」
「そ、そうなのか。ありがとう、ワンコロ。食べてみるモんばりばりばり。あれ、だけどワンコロはこれはいらないモん?」
「拙者は炎系のスキルはすでにカンストしているでござる。いま欲しいのはほお袋の拡大と走力アップでござる」

「な、なるほど。それでこのスキル、どうやって使うモん?」
「スキルが身体に馴染むまで数日かかるので、発動できるのはその後でござる」
「そうなのか。楽しみにしているモん」

「スキルテストのときは付き合うでござるよ。それよりいまはどんどん食べてしまうでござる。こんなに多量の魔石が食べられるチャンスは滅多にないでござる」
「それもそうだモん。でも、どの魔石を優先すればいいモん?」

「すでに効果のなくなっている魔石も多いでござる。ただ、炎系なら紫色がかかっていることが多いでござる。電気系なら緑、土系なら真っ黒と、ある程度の傾向はござるが、当たり外れも多いでござる」
「ボクには分かんないモん。闇雲に食べるモんばりばりばり」

「それもそうでござるな。もし半透明な魔石があったら教えて欲しいでござる。それがほお袋でござる」
「分かったぼりぼり、見つけたらそれはワンコロに譲るばりばりごりごり」

「ネコウサはすごい勢いで食べてるな。昼間、あれだけ飲み食いしたのに」
「オツ、魔石は別腹だモんばりばりばり」
「さもありなん……」
「あの勢いで食べて魔石の見極めができるとは思えないでござるが……」


 いっぽうマユ姉はといえば。

「どうだどうだどうだ、良いだろすごいだろ? こんなすごい刀を私は手に入れたんだぞ。抜けるときというのは割とあっさり抜けるものなんだ。きっと選ばれた人にしか抜けないのだろうな」

 シッポの自慢に余念がないのであった。集まった冒険や商人、町人たちほぼ全員に自慢し尽くし(さすがにうっとおしがられ)て自慢相手がいなくなってしまった。それで

「なぁなぁ、お前だって分かるだろ、この光沢の素晴らしさ、剣の美しさ」
「きゅ、きゅぅぅぅぅ」

 そこらにいた魔物を捕まえて自慢の続きである。極めて不毛である。そこに飛んで火に入るコウイチがやってきた。自慢したくて仕方のないマユ姉は、さきほど受けた恥辱などすっかり忘れて飛びつくように自慢を始めた。

 かくしてそれから小半時ほど、コウイチを相手に自慢を重ねるのである。

「分かった分かった分かったっての。マユ姉が絡み酒だとは知らなかったなもう」
「それでな、それでな、この辺りになんかトゲのようなものがあるんだ、この刀には。コウイチには見えるか?」
「刀にトゲなんかあるわけない……ほんまや?!」
「見えるのか!! そうか、良かった。私だけじゃなかったんだ。いや、他の冒険者たちには見えなくらしくてな、そんなものないって」

「ふむ。トゲというか枝みたなものがでているな。うっすらと光っている。いち、にー、さん……片側に3本ずつ……あああっ!? こ、これって」
「なんだ? コウイチは知っているのか?!」
「写真で見たことがあるぞ。これは有名な七支刀じゃないか?!」
「しちしほうだと?」
「言えてないけどな」
「そういえば私も見たことがある……そうか、これがあの有名なししちそうか」
「悪化してるけどな」

「枝の部分が光っているから厳密には違うのだろうけど……ん? この枝の部分、他の人には見えなかったのか?」
「見えないと言っていた。私の他にはコウイチだけだ」

「ちょっと我に見せてみろ……ふむ、この枝の部分は魔力だ。強い魔法属性がないと見えないのだろう」
「オツにも見えるんだな」
「マユ姉、良いものを手に入れたな。これは持ち主が成長するにつれて、一緒に育って行く刀だ。この枝の部分からは魔法を発動させることができるようになるだろう」
「しっぽだと思うのだが」
「やかましい! 私が刀だと言ったら刀なのだ!!」
「分かった分かった、そういことにしとく」

「しかし。そ、そうか。成長する魔剣なのか。こんなに、こんなに美しいのに、それどころか魔法まで使えるように、あぁ、もう死んでもいい」
「「イキロ」」

(オツ、冒険者が抜こうとして抜けなかったのはこの枝のせいじゃないのか?)
(あ、そうか。お前にしては良く気がついたな。おそらくその通りだ。魔力の枝が岩にひっかかって抜けなかったのだ。それをお主が結界でぼこぼこにしたから抜けたのだろう)

「この控えめな反り、そして長めの切っ先。美しい刀紋。こんな刀はどこにもないにゃほほー」
「もう、分かったから寝させくれぇぇ」

 ようやくマユ姉の魔手から解放されて、あのことはなかったことのように、ふたりは仲良く眠りに就いたのであった。

そして画面は再び転換する

「バリバリ、げっぷっ、そろそろ苦しくなってきたモん」
「ネコウサ殿、そんなにがっつかなくても」
「う、うん。ちょっと食べ過ぎたモん。この感覚は久しぶりだモん」
「感覚?」

 そして知る人ぞ知るネコウサの特性。それが次話で生み出されるのである。
「いったいどういうことでござるか?」

 早く知りたい方は『異世界でカイゼン』を読むと分かることになっております。

「いや、あれ、150万文字もあるんだけど?!」
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