TS異世界転移した最強剣士、男に戻るため魔法学園へ。正体を隠して無双していたら求愛が止まらない。

黒崎隼人

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第11話『決断の時、魂の在り処』

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 紫色の魔力の柱は、不吉な脈動を繰り返しながら学園の空を覆い尽くしていく。創立祭前夜の華やかな雰囲気は一変し、悲鳴と混乱が支配していた。

「生徒たちを安全な場所へ誘導しろ!」

「結界を張れ!魔物の瘴気を学園内に入れるな!」

 教師たちが必死に指示を飛ばすが、溢れ出す混沌の魔力はあまりにも強大すぎた。

「カイト!」

 俺の元に、ガイアスとマリアが駆け寄ってきた。二人とも戦闘態勢に入っている。その目には恐怖ではなく、覚悟の色が宿っていた。

「何が起こっているんだ!」

「説明は後!今は、あいつを止めないと!」

 魔力の柱の中心から、ゆっくりと巨大な影が姿を現す。
 定まった形はない。いくつもの目と触手を持つ、混沌そのものを具現化したかのような異形の魔物。それが、ギルフォードの言っていた「混沌の魔物」か。

 魔物は、生徒たちから魔力を吸い上げ始めた。魔力を吸われた生徒たちが、次々とその場に倒れていく。

「やめさせろ!」

 ガイアスが聖剣を手に魔物へと斬りかかり、マリアが最大級の炎の魔法を放つ。だが、魔物には全く通用しない。攻撃は全て、魔物の不定形の体に吸収され、逆にその力を増しているようだった。

「くっ……!キリがない!」

 ガイアスの剣が弾き返され、マリアの魔力が尽きかける。二人とも懸命に戦っているが、相手が悪すぎる。このままでは、二人とも魔物に取り込まれてしまう。

 絶体絶命の状況。俺の脳裏に、ギルフォードの言葉が蘇る。

『お主が、その女性の肉体を、完全に受け入れるしかない』

(……できるのか?俺に)

 男としての自分を捨てる。元の体に戻るという願いを、諦める。
 それは、俺の全てを否定する行為に等しい。怖い。嫌だ。俺は、男の相川海人としてもう一度剣を握りたい。

 葛藤する俺の目の前で、マリアが魔物の触手に捕らえられた。

「マリア!」

 ガイアスが助けようとするが、別の触手に阻まれて吹き飛ばされる。

「ガイアス!」

 傷つき、倒れていく仲間たちの姿。俺を信じ、想いを告げてくれた大切な人たち。彼らが、俺の目の前で消えていこうとしている。

(……俺は、何を守りたかったんだ?)

 男としてのプライドか?元の体に戻るという、個人的な願望か?
 違う。そんなもの、彼らの命に比べたら、なんてちっぽけなものか。

 俺は、彼らを守りたい。俺を信じてくれた、この世界で初めてできた、かけがえのない仲間たちを。

 そうだ。もう、迷っている暇はない。

「俺は、俺だ……!」

 俺は叫んだ。それは自分自身に言い聞かせるための、魂からの叫びだった。

「男だろうと!女だろうと!俺の魂は、何も変わらない!」

 俺は制服の胸元に手をかけ、今まで頑なに俺を男として縛り付けていたさらしを、力任せに引きちぎった。

 解放された銀髪が、魔力の風に激しく舞い上がる。
 男装の麗人「カイト」は、もういない。そこに立っていたのは、男性の強い魂と、女性のしなやかな肉体、その両方を完全に受け入れた一人の戦士だった。

 体中の魔力が、歓喜するように駆け巡るのが分かった。
 魂と肉体、二つの相反する魔力が反発ではなく融合を始める。聖なる光のような温かい魔力と、全てを破壊し尽くすような冷たい魔力。光と闇が、俺の中で一つになっていく。

「……カイト……?」

 捕らえられたマリアが、信じられないものを見るような目で俺を見つめている。

 俺は、ただ静かに微笑んだ。
 そして右手を天に掲げる。そこに、光と闇の粒子が渦を巻きながら集まり、一振りの美しい剣を形作った。

「待たせたな、二人とも。ここからは、俺が相手だ」

 決断の時は終わった。今、俺は俺自身の魂の在り処を見つけた。
 世界の運命を賭けた、最後の戦いが始まる。
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