13 / 15
第12話『光と闇のレクイエム』
しおりを挟む
俺が新たな力に目覚めた瞬間、混沌の魔物の動きが一瞬だけ止まった。
それは驚愕か、あるいは歓喜か。自分と同質でありながら全く異なる理で存在する俺という存在に、戸惑っているようだった。
「……君は……」
吹き飛ばされていたガイアスが、呆然と俺を見つめている。
彼の目に映っているのは、今まで知っていた「カイト」とは似ても似つかない、神々しさすら感じさせる銀髪の少女の姿だろう。
「驚いたか?これが、本当の俺だ」
俺は悪戯っぽく笑いかける。だが、今は感傷に浸っている場合じゃない。
「マリアを助けるぞ、ガイアス!」
「……ああ!」
ガイアスは一瞬で我に返ると、力強くうなずいた。彼の目に、もう迷いはなかった。
「君が君であるなら、それでいい!行こう、相棒!」
「あなた……本当に、バカな人ね……!最高に、格好いいじゃない!」
触手に捕らえられたままのマリアが、涙声で叫んだ。
俺は地面を蹴った。以前とは比べ物にならないほどの速度。
光と闇の魔力を纏った剣が、マリアを捕らえる触手をいともたやすく切り裂いていく。
解放されたマリアをガイアスが受け止める。これで、役者は揃った。
「三人で、あいつを封印する!」
「ああ!」
「ええ!」
最後の戦いが始まった。もはや、言葉は不要だった。
ガイアスの聖剣が魔物の注意を引きつけ、防御をこじ開ける。
マリアの紅蓮の魔法が、その隙を逃さず本体を焼き、動きを鈍らせる。
そして俺が、二人が作った道を光と闇の剣で切り開いていく。
三人の攻撃が、完璧な連携となって魔物を追い詰めていく。今まで吸収されるだけだった攻撃が、確実にダメージを与えているのが分かった。
『オオオオオオオオオオッ!』
魔物が、断末魔のような雄叫びを上げた。その体から、無数の瘴気の矢が放たれる。全方位への無差別攻撃。
「させない!」
俺は剣を地面に突き立て、防御障壁を展開した。光と闇の力が絡み合った障壁は、全ての矢を受け止め霧散させる。
「今だ!カイト!」
ガイアスが叫ぶ。障壁を展開したことで、魔物の本体に巨大な隙が生まれていた。
「マリア!」
「分かってるわ!」
マリアが残った魔力を全て振り絞り、巨大な炎の鳥を創り出す。不死鳥が魔物の体を貫き、その動きを完全に止めた。
これが、最後のチャンス。
俺はガイアスとマリアの想いを背に受け、空高く跳躍した。
魔物の核。禍々しい魔力が渦巻くその中心点。そこが、こいつの急所だ。
「これで、終わりだッ!」
俺は光と闇の力を最大まで高めた剣を、核に向かって全力で振り下ろした。
閃光。
世界が、白に染まった。
どれくらいの時間が経っただろうか。
俺が意識を取り戻した時、空を覆っていた紫色の雲は消え、穏やかな夜空が戻っていた。混沌の魔物の姿はどこにもない。ただ、俺たちが戦っていた場所には巨大なクレーターだけが残されていた。
戦いは、終わったのだ。
俺は仲間たちに全てを話した。自分が別の世界から来たこと。本当は男だったこと。そして、もう元の体には戻れないだろうということ。
ガイアスもマリアも、黙って俺の話を聞いていた。
話が終わると、ガイアスが口を開いた。
「そうか。大変だったな」
彼はただそれだけを言うと、優しく微笑んだ。
「でも、驚きはしない。俺が好きになったのは、男のカイトでも女のカイトでもない。ただ、カイトという魂そのものだったからな」
「そうよ」
マリアも、涙を浮かべながら誇らしげに胸を張った。
「あなたの魂の美しさは、何も変わらないわ。むしろ、今のあなたの方がずっと素直で、きれいよ」
二人の言葉に、俺はただ泣くことしかできなかった。
男に戻る方法は失われた。だが、俺はそれ以上にかけがえのないものを手に入れていた。
性別なんて関係ない。ありのままの俺を受け入れてくれる、最高の仲間たちを。
俺の、この世界での新しい人生が、今、本当に始まろうとしていた。
それは驚愕か、あるいは歓喜か。自分と同質でありながら全く異なる理で存在する俺という存在に、戸惑っているようだった。
「……君は……」
吹き飛ばされていたガイアスが、呆然と俺を見つめている。
彼の目に映っているのは、今まで知っていた「カイト」とは似ても似つかない、神々しさすら感じさせる銀髪の少女の姿だろう。
「驚いたか?これが、本当の俺だ」
俺は悪戯っぽく笑いかける。だが、今は感傷に浸っている場合じゃない。
「マリアを助けるぞ、ガイアス!」
「……ああ!」
ガイアスは一瞬で我に返ると、力強くうなずいた。彼の目に、もう迷いはなかった。
「君が君であるなら、それでいい!行こう、相棒!」
「あなた……本当に、バカな人ね……!最高に、格好いいじゃない!」
触手に捕らえられたままのマリアが、涙声で叫んだ。
俺は地面を蹴った。以前とは比べ物にならないほどの速度。
光と闇の魔力を纏った剣が、マリアを捕らえる触手をいともたやすく切り裂いていく。
解放されたマリアをガイアスが受け止める。これで、役者は揃った。
「三人で、あいつを封印する!」
「ああ!」
「ええ!」
最後の戦いが始まった。もはや、言葉は不要だった。
ガイアスの聖剣が魔物の注意を引きつけ、防御をこじ開ける。
マリアの紅蓮の魔法が、その隙を逃さず本体を焼き、動きを鈍らせる。
そして俺が、二人が作った道を光と闇の剣で切り開いていく。
三人の攻撃が、完璧な連携となって魔物を追い詰めていく。今まで吸収されるだけだった攻撃が、確実にダメージを与えているのが分かった。
『オオオオオオオオオオッ!』
魔物が、断末魔のような雄叫びを上げた。その体から、無数の瘴気の矢が放たれる。全方位への無差別攻撃。
「させない!」
俺は剣を地面に突き立て、防御障壁を展開した。光と闇の力が絡み合った障壁は、全ての矢を受け止め霧散させる。
「今だ!カイト!」
ガイアスが叫ぶ。障壁を展開したことで、魔物の本体に巨大な隙が生まれていた。
「マリア!」
「分かってるわ!」
マリアが残った魔力を全て振り絞り、巨大な炎の鳥を創り出す。不死鳥が魔物の体を貫き、その動きを完全に止めた。
これが、最後のチャンス。
俺はガイアスとマリアの想いを背に受け、空高く跳躍した。
魔物の核。禍々しい魔力が渦巻くその中心点。そこが、こいつの急所だ。
「これで、終わりだッ!」
俺は光と闇の力を最大まで高めた剣を、核に向かって全力で振り下ろした。
閃光。
世界が、白に染まった。
どれくらいの時間が経っただろうか。
俺が意識を取り戻した時、空を覆っていた紫色の雲は消え、穏やかな夜空が戻っていた。混沌の魔物の姿はどこにもない。ただ、俺たちが戦っていた場所には巨大なクレーターだけが残されていた。
戦いは、終わったのだ。
俺は仲間たちに全てを話した。自分が別の世界から来たこと。本当は男だったこと。そして、もう元の体には戻れないだろうということ。
ガイアスもマリアも、黙って俺の話を聞いていた。
話が終わると、ガイアスが口を開いた。
「そうか。大変だったな」
彼はただそれだけを言うと、優しく微笑んだ。
「でも、驚きはしない。俺が好きになったのは、男のカイトでも女のカイトでもない。ただ、カイトという魂そのものだったからな」
「そうよ」
マリアも、涙を浮かべながら誇らしげに胸を張った。
「あなたの魂の美しさは、何も変わらないわ。むしろ、今のあなたの方がずっと素直で、きれいよ」
二人の言葉に、俺はただ泣くことしかできなかった。
男に戻る方法は失われた。だが、俺はそれ以上にかけがえのないものを手に入れていた。
性別なんて関係ない。ありのままの俺を受け入れてくれる、最高の仲間たちを。
俺の、この世界での新しい人生が、今、本当に始まろうとしていた。
0
あなたにおすすめの小説
無属性魔法使いの下剋上~現代日本の知識を持つ魔導書と契約したら、俺だけが使える「科学魔法」で学園の英雄に成り上がりました~
黒崎隼人
ファンタジー
「お前は今日から、俺の主(マスター)だ」――魔力を持たない“無能”と蔑まれる落ちこぼれ貴族、ユキナリ。彼が手にした一冊の古びた魔導書。そこに宿っていたのは、異世界日本の知識を持つ生意気な魂、カイだった!
「俺の知識とお前の魔力があれば、最強だって夢じゃない」
主従契約から始まる、二人の秘密の特訓。科学的知識で魔法の常識を覆し、落ちこぼれが天才たちに成り上がる! 無自覚に甘い主従関係と、胸がすくような下剋上劇が今、幕を開ける!
キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~
サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。
ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。
木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。
そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。
もう一度言う。
手違いだったのだ。もしくは事故。
出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた!
そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて――
※本作は他サイトでも掲載しています
タブレット片手に異世界転移!〜元社畜、ダウンロード→インストールでチート強化しつつ温泉巡り始めます〜
夢・風魔
ファンタジー
一か月の平均残業時間130時間。残業代ゼロ。そんなブラック企業で働いていた葉月悠斗は、巨漢上司が眩暈を起こし倒れた所に居たため圧死した。
不真面目な天使のせいでデスルーラを繰り返すハメになった彼は、輪廻の女神によって1001回目にようやくまともな異世界転移を果たす。
その際、便利アイテムとしてタブレットを貰った。検索機能、収納機能を持ったタブレットで『ダウンロード』『インストール』で徐々に強化されていく悠斗。
彼を「勇者殿」と呼び慕うどうみても美少女な男装エルフと共に、彼は社畜時代に夢見た「温泉巡り」を異世界ですることにした。
異世界の温泉事情もあり、温泉地でいろいろな事件に巻き込まれつつも、彼は社畜時代には無かったポジティブ思考で事件を解決していく!?
*小説家になろうでも公開しております。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~
うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」
これしかないと思った!
自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。
奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。
得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。
直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。
このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。
そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。
アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。
助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います
町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。
死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。
命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。
自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。
五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~
よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】
多くの応援、本当にありがとうございます!
職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。
持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。
偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。
「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。
草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。
頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男――
年齢なんて関係ない。
五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる