TS異世界転移した最強剣士、男に戻るため魔法学園へ。正体を隠して無双していたら求愛が止まらない。

黒崎隼人

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第12話『光と闇のレクイエム』

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 俺が新たな力に目覚めた瞬間、混沌の魔物の動きが一瞬だけ止まった。
 それは驚愕か、あるいは歓喜か。自分と同質でありながら全く異なる理で存在する俺という存在に、戸惑っているようだった。

「……君は……」

 吹き飛ばされていたガイアスが、呆然と俺を見つめている。
 彼の目に映っているのは、今まで知っていた「カイト」とは似ても似つかない、神々しさすら感じさせる銀髪の少女の姿だろう。

「驚いたか?これが、本当の俺だ」

 俺は悪戯っぽく笑いかける。だが、今は感傷に浸っている場合じゃない。

「マリアを助けるぞ、ガイアス!」

「……ああ!」

 ガイアスは一瞬で我に返ると、力強くうなずいた。彼の目に、もう迷いはなかった。

「君が君であるなら、それでいい!行こう、相棒!」

「あなた……本当に、バカな人ね……!最高に、格好いいじゃない!」

 触手に捕らえられたままのマリアが、涙声で叫んだ。

 俺は地面を蹴った。以前とは比べ物にならないほどの速度。
 光と闇の魔力を纏った剣が、マリアを捕らえる触手をいともたやすく切り裂いていく。

 解放されたマリアをガイアスが受け止める。これで、役者は揃った。

「三人で、あいつを封印する!」

「ああ!」

「ええ!」

 最後の戦いが始まった。もはや、言葉は不要だった。
 ガイアスの聖剣が魔物の注意を引きつけ、防御をこじ開ける。
 マリアの紅蓮の魔法が、その隙を逃さず本体を焼き、動きを鈍らせる。
 そして俺が、二人が作った道を光と闇の剣で切り開いていく。

 三人の攻撃が、完璧な連携となって魔物を追い詰めていく。今まで吸収されるだけだった攻撃が、確実にダメージを与えているのが分かった。

『オオオオオオオオオオッ!』

 魔物が、断末魔のような雄叫びを上げた。その体から、無数の瘴気の矢が放たれる。全方位への無差別攻撃。

「させない!」

 俺は剣を地面に突き立て、防御障壁を展開した。光と闇の力が絡み合った障壁は、全ての矢を受け止め霧散させる。

「今だ!カイト!」

 ガイアスが叫ぶ。障壁を展開したことで、魔物の本体に巨大な隙が生まれていた。

「マリア!」

「分かってるわ!」

 マリアが残った魔力を全て振り絞り、巨大な炎の鳥を創り出す。不死鳥が魔物の体を貫き、その動きを完全に止めた。

 これが、最後のチャンス。

 俺はガイアスとマリアの想いを背に受け、空高く跳躍した。
 魔物の核。禍々しい魔力が渦巻くその中心点。そこが、こいつの急所だ。

「これで、終わりだッ!」

 俺は光と闇の力を最大まで高めた剣を、核に向かって全力で振り下ろした。

 閃光。

 世界が、白に染まった。

 どれくらいの時間が経っただろうか。
 俺が意識を取り戻した時、空を覆っていた紫色の雲は消え、穏やかな夜空が戻っていた。混沌の魔物の姿はどこにもない。ただ、俺たちが戦っていた場所には巨大なクレーターだけが残されていた。

 戦いは、終わったのだ。

 俺は仲間たちに全てを話した。自分が別の世界から来たこと。本当は男だったこと。そして、もう元の体には戻れないだろうということ。

 ガイアスもマリアも、黙って俺の話を聞いていた。

 話が終わると、ガイアスが口を開いた。

「そうか。大変だったな」

 彼はただそれだけを言うと、優しく微笑んだ。

「でも、驚きはしない。俺が好きになったのは、男のカイトでも女のカイトでもない。ただ、カイトという魂そのものだったからな」

「そうよ」

 マリアも、涙を浮かべながら誇らしげに胸を張った。

「あなたの魂の美しさは、何も変わらないわ。むしろ、今のあなたの方がずっと素直で、きれいよ」

 二人の言葉に、俺はただ泣くことしかできなかった。

 男に戻る方法は失われた。だが、俺はそれ以上にかけがえのないものを手に入れていた。
 性別なんて関係ない。ありのままの俺を受け入れてくれる、最高の仲間たちを。

 俺の、この世界での新しい人生が、今、本当に始まろうとしていた。
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