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Ⅲ:姫と従者と王子様
05
しおりを挟む静かな石畳の路地を抜けると、そこには小さなカフェテリアがあった。
ウッドハウスのような見た目も相まって、隠れた名店のような風格を感じる。
中に入れば芳しいコーヒーの香りと甘いケーキの匂いがユリフィアを刺激した。
豊富な種類のそれらに目を輝かせながらも、オリジナルアイスココアと一番人気のチーズタルトを選び、良い天気ということで二人はテラスで食した。
「ごちそうさま。とても美味しかったよ!」
始終笑顔で頬張る彼女を見つめていたアレクシオは苦笑してコーヒーを飲み干す。
「それはよかった。良い気分転換になったか?」
「うん!アレクありがとう。私もこのお店のファンになっちゃったよ」
ココアは濃厚で甘いだけではなくコクがあり、チーズタルトも何種類ものチーズが溶け合い、絶妙なハーモニーを奏でていた。
甘いものが大好きなユリフィアには大満足の内容だった。
「さて、この後はどうするか…」
そろそろ帰らないとレストにバレるか?などと呟くアレクシオに、私はふと疑問に思っていたことを訊ねる。
「ね、アレク。この視察にはお城から衛兵さんもついて来てるの?」
「は?護衛にはお前がいるんだから連れてくるわけないだろ。ぞろぞろと人を引き連れて歩くのは趣味じゃない」
キッパリと言い切る彼に、
「そっか。じゃあ…私たちの後をつけている3グループは敵かな」
サラリとユリフィアは返した。
「…ちょっと待て!」
思わず口に含んでいたコーヒーを吹き出しそうになりながらアレクシオは己の護衛を見遣る。
「どうかしたの?」
「後をつけられている、っていつからだ!?」
「最初からだよ。もしかして気づいていなかったの?あそことあそこの屋根の上の三人とそこの路地影にいる二人はお城を出た時から殺気立った気配で付いてきていたよ」
あとは、向こうの方にもこっちを監視している視線を感じるね、と笑顔で言い切った。
そんなユリフィアに、優秀なのかポンコツなのか判断に困るとばかりにアレクシオは顳顬を押さえる。
「…どうして俺に言わなかった?」
「気づいていると思ったし、何より私以外にも護衛をつけていたんだなぁとしか考えていなくて…」
ごめんなさいと素直に謝罪する。
これは自分のミスだ。
まさかこんな昼間に堂々と暗殺者を寄越すとは思わず、警戒を怠っていた。
「これくらいなら剣を抜くまでもないかな。この失敗は行動で返すね」
「おい!」
おもむろに手元にあったナイフとフォーク、それから予備のそれらを手に取り立ち上がる。
アレクシオの制止を笑顔で躱したユリフィアはスッと敵のいる方角を見据えた。
先程とはまるで異なる雰囲気の彼女に、暗殺者たちも動きを見せる。
屋根上に潜んでいた者は一斉に弓矢を構え、物陰に潜んでいた者はそれぞれ鋭利な刃物を手にして姿を現したのだ。
(やっぱりここは五人だけ…あとの二人はまた別なんだね。それにしても、この気配は馴染み深いような…?ううん、気にしちゃダメだよね)
まだ動きをみせない他の視線の持ち主に気を取られつつも、とりあえず眼前の敵を排除することに専念する。
正直護衛としての初仕事が、まさか息抜きで城を抜け出している時になるとは夢にも思わなかった。
(でも、与えられた仕事はきちんと熟すよ。だってアレクを護るのは私の役目。自分で初めて選んだ道、だからね)
ユリフィアは両手に持っていたフォークとナイフを勢い良く投げつける。
それはバラバラに飛んで行きーー次の瞬間には五人分の悲鳴が響いた。
ある者は足をある者は手を銀製の食器で貫かれたのだ。
辛うじて敵の一人が放った矢は難なくユリフィアに受け止められ、無惨に折られてしまう。
「ごめんなさい」
律儀にそう告げてから暗殺者たちを魔法の鎖で縛り上げる。
ほんの数秒で事態は片付き、ユリフィアの華麗なる手腕をアレクシオはただ呆然と眺めていることしか出来なかった。
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・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
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