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Ⅰ:始まりは姫の旅
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しおりを挟むユリフィアはウィンダリア大陸南部にある小国、武の国とも言われるフリージア王国の姫である。
幼い頃に両親、つまりは前国王と王妃を事故で亡くし、城ではいつも一人だった。
もちろん使用人や前王の臣下たちもいたが、彼らがユリフィアの遊び相手になる事はなかった。
それどころか、姫に何かあっては国の大事だという理由で街には一切出さず、お城の庭にさえたまにしか行かせて貰えなかった。
私はいつか絶対に、この城から逃げだそうと決意した。
だが、前王の秘書であり現宰相であるユリウス・コンラードは抜け目がなかった。
こっそり逃げ出そうと庭を散歩している振りをすれば彼がすぐさま駆けつけ、
「姫様、お外にいてはお身体にさわります。どうぞ、室内へお入り下さい」
と冷めた目で言うのだった。
まるで喉元に剣を当てられ、逃げようとしても無駄ですよ、と言われているみたいだった。
けれどーー今日、やっと城の外へ出ることに成功したのだ。
数年に渡り警備のパターンを読み、家出の資金をこそこそと貯えようやく実現した。
この成功を無駄にしたくない!
急いで逃げなければ直ぐにユリウスに見つかりまた牢獄に逆戻りだ。
そんなのは絶対にイヤ!!
よし、と気合いを入れ直し、自由を手に入れるため、ユリフィアは少しづつ明るくなっていく空の下を思いっきり走り出したーー。
⚔ ⚔ ⚔
太陽が天の中心にきた真昼頃、宰相であるユリウス・コンラードの部屋の前が騒がしくなった。
まだ29歳という若さだったが、切れ者で侮れない人物だと自国、他国共に有名な人だ。
侮れない人ランキングなるものがあれば、ぶっちぎりで1位になれるだろう。
ユリウスはため息を吐き、仕方なく扉を開く。
「騒がしいですよ、一体何があったのですか?」
口調は丁寧だが、明らかに怒っていると判る。
昨夜は貴族とのパーティがあり、寝不足とお酒の呪いも手伝って殊更不機嫌だった。
ビリビリと電流が流れたようにその場は静かになる。
「実は…姫様がいないのです……」
おずおずとメイドの1人が口を開いた。
「いない?それはどういう意味ですか」
「その…つまり、……城を抜け出した、という事…です」
今にも倒れそうになりながらも、そのメイドは震える声で言った。
「姫付きの従者はどうしていたのです?」
「レティーシアは姫様から頼まれごとをされたと言って、昨日から有給を取り街へ行っています」
ユリウスの質問に今度は執事が答えた。
「なるほど。それも計算済みですか」
あの姫の事だからいつかはやると思ってはいたが…。
(よりにもよって私がダウンしている時にですか。やってくれますね)
おそらく前々から計画していたのだろう。
ユリウスがパーティに出席し、城の警備をそこへと回し薄くなった警備網を抜けることなどあの姫には簡単なことだ。
(この機会をずっと待っていたのですね)
再びため息を吐き、
「仕方ありません。急ぎ姫の足取りを掴みなさい!ですが、くれぐれも姫に勘付かれないように追うのです。さらに逃げられると面倒ですからね」
お願いしますよ、とユリウスが眼光を強めて宣うと「はいっ!!」とその場に集まった者の声が一つに重なる。
今や城にいる殆どの者が集まっており、ユリウスの命に応じた。
そして、己の役割は心得ているので各々の持ち場へと戻っていくのだった。
1人残されたユリウスは小さく呟く。
「逃げられるものなら逃げてみせなさい。精々今だけは楽しく過ごせば良いですよ、ユリフィア姫……」
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