姫様従者と王子様

花夜

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Ⅰ:始まりは姫の旅

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「相変わらず姫の事となると人が変わりますね」

「当たり前でしょ。ユリフィア様は私の大切な主様なんだから!そもそも…こうなったのは貴方のせいじゃない!」

 宰相と使用人ではなく、昔馴染みとして言葉を返す。

「…心外だな。あのおてんば姫がここまで考えているとはさすがに思わなかったんだ」

 ユリウスもそれにならい、堅苦しい雰囲気から旧友に会った時のそれにかえた。

「ユリフィア様がこの城で息苦しくしているのは知っていたでしょ?私はこの城のを知っているから何とも思わないけど…彼女にとってはここは牢獄よ」

「それでも、姫をここから出すわけにはいかない」

「まったく。その不器用な過保護をどうにかしなさいと前から言ってるでしょ?城の皆んなもそうよ。もっとユリフィア様と話して、彼女を支えて行くべきなのよ…」

 儘ならない現実にレティーシアは歯痒く思う。

 本来ならユリフィア様にとってここは心地良い場所の筈なのに。

 皆んなですれ違って、勘違いして、そうして大切な人を手離してしまった。

 この城のもう一つ顔。

 それは、城にいる者は一部の例外を除いてユリフィアらぶ!を掲げている集まりである事だ。

 しかも、尊いあまり近づけず、声をかけるのさえおこがましい。

 我らは陰ながらに姫を護り、陰ながらお仕えするのだ!と本気で思っている狂信者ばかりだった。

 臣下たちはユリフィアの相手をしないのではなく、したくても出来なかったのである。

 その最たる者がこのユリウスだった。

 前王との約束の為、という大義名分もあったが、ただ単にユリフィアを大事にこの鳥籠に閉じ込めて護りたかったのだ。

 世間では実権を牛耳るため姫を閉じ込め、前王の配下たちが好き勝手しているーーとまで噂されているが蓋を開ければそんな事はない。

 むしろ姫を護ろうと日々奮闘している者ばかりだった。

 なので、ユリフィアが脱走しようとする度、衛兵たちや使用人は「今日も元気でよろしゅうございます」、「姫を捕らえるという命の元、合法に触れるぞ」と意気揚々としていた。

 けれど悲しいかな、この想いは当の本人には通じていない。

 この二面性を持つ城の実態を知るレティーシアは毎度不思議に思ったものだ。

 なぜ自分たちの気持ちを姫に、ユリフィアに伝えないのか。

 またユリフィアも何故自分の気持ちを口にしないのかと。

(…でも、ユリフィア様の場合は使用人たちに声をかけようとしても逃げられていたわね。自分たちには勿体無いお言葉、とか言って)

 本当に、第三者の視線からみれば見事なほどのすれ違いなのだ。

 だからこそ、ユリフィア失踪事件はこの城をドン底に落とした。

 衛兵たちは血相を変えて捜索隊を配備し、コックたちは帰ってきた姫にご馳走を食べさせようと一心不乱に鍋を振るい、メイドたちは埃一つない城でお迎えしようと隅々までの清掃を始め…まさにカオスな状態だった。

 さらには切れ者と名高いユリウスまでも持っている資料は先程から逆さまで、内心取り乱していることが窺える始末。

 レティーシアはそっとため息をつき、一刻も早くユリフィアを連れ戻さなければと決意した。

 願わくば、この城の者たちの愛がユリフィア本人に届きますように。

(ああ、ユリフィア様。どこにいるのですか?)

 かく言うレティーシアももちろん、姫を焦がれる1人である。






 そんなフリージア王国の事情を知る由も無いお姫様は、隣国で目下満喫中だったーー。





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