7 / 30
Ⅰ:始まりは姫の旅
04
しおりを挟む「相変わらず姫の事となると人が変わりますね」
「当たり前でしょ。ユリフィア様は私の大切な主様なんだから!そもそも…こうなったのは貴方のせいじゃない!」
宰相と使用人ではなく、昔馴染みとして言葉を返す。
「…心外だな。あのおてんば姫がここまで考えているとはさすがに思わなかったんだ」
ユリウスもそれにならい、堅苦しい雰囲気から旧友に会った時のそれにかえた。
「ユリフィア様がこの城で息苦しくしているのは知っていたでしょ?私はこの城のもう一つの顔を知っているから何とも思わないけど…彼女にとってはここは牢獄よ」
「それでも、姫を城から出すわけにはいかない」
「まったく。その不器用な過保護をどうにかしなさいと前から言ってるでしょ?城の皆んなもそうよ。もっとユリフィア様と話して、彼女を支えて行くべきなのよ…」
儘ならない現実にレティーシアは歯痒く思う。
本来ならユリフィア様にとってここは心地良い場所の筈なのに。
皆んなですれ違って、勘違いして、そうして大切な人を手離してしまった。
この城のもう一つ顔。
それは、城にいる者は一部の例外を除いてユリフィアらぶ!を掲げている集まりである事だ。
しかも、尊いあまり近づけず、声をかけるのさえおこがましい。
我らは陰ながらに姫を護り、陰ながらお仕えするのだ!と本気で思っている狂信者ばかりだった。
臣下たちはユリフィアの相手をしないのではなく、したくても出来なかったのである。
その最たる者がこのユリウスだった。
前王との約束の為、という大義名分もあったが、ただ単にユリフィアを大事にこの城に閉じ込めて護りたかったのだ。
世間では実権を牛耳るため姫を閉じ込め、前王の配下たちが好き勝手しているーーとまで噂されているが蓋を開ければそんな事はない。
むしろ姫を護ろうと日々奮闘している者ばかりだった。
なので、ユリフィアが脱走しようとする度、衛兵たちや使用人は「今日も元気でよろしゅうございます」、「姫を捕らえるという命の元、合法に触れるぞ」と意気揚々としていた。
けれど悲しいかな、この想いは当の本人には通じていない。
この二面性を持つ城の実態を知るレティーシアは毎度不思議に思ったものだ。
なぜ自分たちの気持ちを姫に、ユリフィアに伝えないのか。
またユリフィアも何故自分の気持ちを口にしないのかと。
(…でも、ユリフィア様の場合は使用人たちに声をかけようとしても逃げられていたわね。自分たちには勿体無いお言葉、とか言って)
本当に、第三者の視線からみれば見事なほどのすれ違いなのだ。
だからこそ、ユリフィア失踪事件はこの城をドン底に落とした。
衛兵たちは血相を変えて捜索隊を配備し、コックたちは帰ってきた姫にご馳走を食べさせようと一心不乱に鍋を振るい、メイドたちは埃一つない城でお迎えしようと隅々までの清掃を始め…まさにカオスな状態だった。
さらには切れ者と名高いユリウスまでも持っている資料は先程から逆さまで、内心取り乱していることが窺える始末。
レティーシアはそっとため息をつき、一刻も早くユリフィアを連れ戻さなければと決意した。
願わくば、この城の者たちの愛がユリフィア本人に届きますように。
(ああ、ユリフィア様。どこにいるのですか?)
かく言うレティーシアももちろん、姫を焦がれる1人である。
そんなフリージア王国の事情を知る由も無いお姫様は、隣国で目下満喫中だったーー。
0
あなたにおすすめの小説
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
三回目の人生も「君を愛することはない」と言われたので、今度は私も拒否します
冬野月子
恋愛
「君を愛することは、決してない」
結婚式を挙げたその夜、夫は私にそう告げた。
私には過去二回、別の人生を生きた記憶がある。
そうして毎回同じように言われてきた。
逃げた一回目、我慢した二回目。いずれも上手くいかなかった。
だから今回は。
「婚約破棄された転生令嬢ですが、王城のメイド五百人に慕われるメイド長になりました。なお元婚約者は私のメイドに土下座中です」
まさき
恋愛
社畜OLとして過労死した私は、異世界の令嬢・アリア・ヴェルナーに転生した。
目が覚めたら、婚約破棄されていた。
理由は「地味で面白みがない」から。
泣く暇もなかった。翌朝、王城のメイド採用面接に向かった。
最初は鼻で笑われた。雑用係からのスタートだった。
でも——前世で叩き込まれた仕事術と、一人ひとりの話を聞く姿勢で、少しずつメイドたちが集まってきた。
厨房が変わった。リネンが変わった。王城全体が変わっていった。
そして就任スピーチで宣言した。
「500人全員の名前を、覚えます」
冷酷と噂される王太子は、静かに見ていた。
悪役令嬢は妨害を仕掛けてきた。
元婚約者は——後悔し始めていた。
婚約破棄された令嬢が、500人に慕われるメイド長になるまでの物語。
なお元婚約者は、私のメイドたちの前で土下座中です。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる