『使い捨てられた補助スキル持ち、迷宮の主になって制服妖怪と学園祭を始める』

葉月奈津・男

文字の大きさ
144 / 327
レーディング15(R15)・表現深化バージョン~刺激的な表現を含みます

第26話 往路から末路へ ◇とある四人パーティの話◇ ① 後編

しおりを挟む
 
 
 〈ちょっと運が足りなかった男子B——イケダの場合〉

 「え? なに、ナニコレ!?」

 ワタワタと手足を動かすイケダの前で、アオキの姿が、崩れていた。

 ヤバイ! ヤバイ、ヤバイ、ヤバイっ!

 慌てて後退り、背中を向けて逃げ出す。
 とにかく、遠くへ。
 誰か、戦えるやつの後ろに逃げないと。

 意志に反して震える手足を必死に動かし、遠ざかろうとする。
 だが、その歩みが、突然止まった。

「あ、れ?」

 視界がやけに低い。
 ちゃんと走っていたはずなのに。

 振り返ると、足元に何かが転がっていた。
 自分の右足だった。

「ああ、落ちちゃったのか」

 乾いた思考で納得し、拾おうと手を伸ばす。
 その瞬間、手に走る違和感。
 地面に、自分の腕が落ちていた。

「あ、あは。なんで、こんなに・・・落ちるかな?」

 右手を拾おうとした左手に、ひびのような痛みが走る。
 指先が、もう自分のものじゃないような感覚。

「い、いや、だ。いやだぁぁぁぁぁぁぁ!」

 叫ぶBの前に、何かが落ちた。
 それは、かすかに赤く染まった右足だった。

 アイアンマンティスが、食べかけのそれを捨てたのだ。
 口に合わなかったのだろう。

『おいしくない獲物』と判断されたイケダは、左足などは無傷のまま、見逃された。

 石ころのように、興味を持たれない存在。
 命としての価値すら、否定された。

「あ。あは、あはっ・・・あははははっ!」

 Bの口から、乾いた笑いがこぼれる。
 それは、壊れた機械のような音だった。

 現実から逃げ出した先で、彼の魂は首を傾げていた。

 ――誰が笑っているんだろう?
 笑える場面じゃないのに。

 そして、うっすらと思い出す。
 自分がかつて、『笑えない場面』で笑っていたことを。

 もしそこにいたのが自分だったら、絶対に笑えなかったはずの場面で。

 傷ついた身体を横たえたまま、Bの視界にモンスターたちが映る。
 だが、誰一人として彼に目を向けることはなかった。

 まるで、そこに『何の価値もないもの』が転がっているかのように。

 ◇

『うん。こんな感じでいいね』

 ダンジョンのステータス画面で、『ソウルポイント』がじわじわと上昇していくのを確認しながら、 カルマは静かに頷いた。

 恐怖は、静かに崩れていくのがいい。

 一気に壊すのは、素人のやることだ。
 じわじわと、笑いの中で削っていく。
 それが、『演出』というものだ。

 それは、あの教室で誰も来なかった三日間に、オレが学んだことだった。

「悲鳴よりも、笑いの方が深く刺さる。」

 なぜなら、笑いは――忘れたはずの罪を、もう一度、思い出させるから。

 あの時、オレは笑われた。
 誰も来ない教室で、飾り付けだけが虚しく揺れていた。
 廊下の向こうから聞こえたのは、沈黙だった。

 舞台に『沈黙』があってはならない。
 今、オレは『笑わせる側』だ。
 滑稽な死に様を演出し、無様な逃走を引き出し、壊れた笑いを引き出す。

「あははははっ!」「なんで、こんなに落ちるかな?」「誰が笑ってるんだろう?」

 その声が、いい。
 悲鳴よりも、ずっといい。

 カルマは、ウィンドゥを見つめながら、まるで舞台の幕を引くタイミングを見計らう演出家のように、指先で軽く、次の指示を打ち込んだ。

「次は、あの子だ。もう少し、笑わせてあげようか。」

 喜劇は、まだ終わらない。
 観客が『自分の罪』に気づくまで。
 役者が役を『おろされる』まで。


 パーティは四人。
 あと、二人いる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~

ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。 玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。 「きゅう、痩せたか?それに元気もない」 ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。 だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。 「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」 この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。

【完結】かつて憧れた陰キャ美少女が、陽キャ美少女になって転校してきた。

エース皇命
青春
 高校でボッチ陰キャを極めているカズは、中学の頃、ある陰キャ少女に憧れていた。実は元々陽キャだったカズは、陰キャ少女の清衣(すい)の持つ、独特な雰囲気とボッチを楽しんでいる様子に感銘を受け、高校で陰キャデビューすることを決意したのだった。  そして高校2年の春。ひとりの美少女転校生がやってきた。  最初は雰囲気が違いすぎてわからなかったが、自己紹介でなんとその美少女は清衣であるということに気づく。  陽キャから陰キャになった主人公カズと、陰キャから陽キャになった清衣。  以前とはまったく違うキャラになってしまった2人の間に、どんなラブコメが待っているのだろうか。 ※小説家になろう、カクヨムでも公開しています。 ※表紙にはAI生成画像を使用しています。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

【完結】元ゼネコンなおっさん大賢者の、スローなもふもふ秘密基地ライフ(神獣付き)~異世界の大賢者になったのになぜか土方ばかりしてるんだがぁ?

嘉神かろ
ファンタジー
【Hotランキング3位】  ゼネコンで働くアラフォーのおっさん、多田野雄三は、ある日気がつくと、異世界にいた。  見覚えのあるその世界は、雄三が大学時代にやり込んだVR型MMOアクションRPGの世界で、当時のキャラの能力をそのまま使えるらしい。  大賢者という最高位職にある彼のやりたいことは、ただ一つ。スローライフ!  神獣たちや気がついたらできていた弟子たちと共に、おっさんは異世界で好き勝手に暮らす。 「なんだか妙に忙しい気もするねぇ。まあ、楽しいからいいんだけど」

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。

たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】 『み、見えるの?』 「見えるかと言われると……ギリ見えない……」 『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』  ◆◆◆  仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。  劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。  ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。  後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。  尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。    また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。  尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……    霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。  3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。  愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー! ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。

四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……? どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、 「私と同棲してください!」 「要求が増えてますよ!」 意味のわからない同棲宣言をされてしまう。 とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。 中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。 無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。

処理中です...