181 / 327
レーディング15(R15)・表現深化バージョン~刺激的な表現を含みます
第62話 妖怪制作③ ~垢嘗め~ 後編
しおりを挟む「薫様」
外から、声がかかった。
「どうぞ、お入りなさい」
布の向こうから、女生徒が顔を覗かせた。
その瞬間、彼女の表情がわずかに揺らぐ。
儀礼の最中であることに気づき、視線を逸らす。
「も、申し訳――」
「うふふ、ちょっとした儀礼の途中なのです。気にしなくてもいいのですよ? ですので、謝罪はいりません。それで、緊急のご報告ですか?」
薫様の声は、水面に落ちる一滴のように静かで、波紋を広げる。
その場の空気が、再び儀式の流れに引き戻される。
「あ、いえ。『火の舞踊』が『風の芳香』と秘密裏に会合を開いているとの情報が入りまして、その報告です」
「彼女らは資金収集を第一に掲げていたのだったかしら? ん~。お金なんて、あまり興味はないですね~。放っておいてもよいのではないかしら? よくよく考えると繋がりを維持するメリットってないのですよねぇ~。ん~・・・影響力の問題ってだけですものね~」
薫様が眉を寄せる。
その動きに合わせて、足がわずかに揺れた。
ただそれだけで、空気が張り詰める。
言葉の響きが、儀式の静けさに波紋を落とす。
所作が乱れそうになる。
けれど、ぐっと意識を整える。
この空間では、沈黙すらも『捧げ物』。
オレは、ただ敬意を示し続ける。
薫様の輪郭が、意識の中に焼きついていく。
視線を交わさずとも、彼女の存在が内側に染み込んでくる。
「『火の舞踊』・・・沙羅は、どうしたものですかねぇ? 彼女も実家が傾いてからは『お金、お金』とうるさいですからね~。お爺様が下請けを買収しまくったからって恨まれましてもね~。敗者は敗者らしく、屈辱に甘んじていればよろしいのに」
片頬に手を当てる仕草。
その指先は、慈悲と冷笑を同時に宿していた。
「ダンジョンも『中層』に入る頃合いですし、そろそろ次の段階に入るとしましょう!」
薫様の声が、空気を導く。
まるで、儀式の進行を告げる巫女の鈴の音のように。
「——というわけで、まずは露払いですね。『黒の剣士』にでも任せますか。私に『レアアイテム』を持ち帰る役回りとなれば『彼』なら喜んで引き受けるはずです。ええ、では私の指示通りに」
「かしこまりましたっ」
女生徒が恭しく一礼する。
その姿は、信者が神託を受け取る瞬間のようだった。
「ふふ」
薫様が、わずかに身体の位置を変える。
足が静かに交差する。
それだけで、空気が再び張り詰める。
儀礼の次なる段階が、音もなく示された。
その動作は、神聖な流れの一部。
言葉よりも雄弁に、支配の継続を告げていた。
「・・・・・・」
まだ、終わらない。
終わりの時を知るのは、薫様だけ。
『尊き御身』の儀式は、意志が尽きるまで続く。
◇
テントを出た瞬間、空気が変わった。
湿度が上がったような、視線が肌にまとわりつくような感覚。
薫様の取り巻きたちが、静かに並んで待ち構えていた。
誰も言葉を発さない。
けれど、その沈黙は無関心ではなく、儀式の延長だった。
視線だけが、鋭く、重く、カルマの手元に突き刺さる。
その中の一人が、ゆっくりと歩み寄ってきた。
年齢は同じくらい。
制服の袖口をきちんと整え、髪も乱れなく結ばれている。
その整いすぎた姿が、逆に異様だった。
まるで、祈りのために作られた人形のように。
「薫様に、触れたのですね?」
問いではなかった。
それは、確認と羨望と、選ばれなかった者の痛みが混ざった声。
彼女の目は、カルマの手元に注がれている。
その視線は、触れた手ではなく、『薫様の残滓』を見ているようだった。
「・・・はい」
答えた瞬間、彼女はそっと手を伸ばしてきた。
その指先は、神聖な器に触れる巫女のように、慎重で、震えていた。
「少しだけ・・・薫様の気配を、感じさせてください」
その言葉に、周囲の取り巻きたちがわずかに息を呑む。
誰も止めない。
むしろ、それが『正しい手順』であるかのような空気が漂っていた。
指先が触れた瞬間、彼女は目を閉じた。
まるで、神前で香を焚くように、静かに、深く。
「・・・ああ、薫様・・・」
その声は、祈りだった。
カルマの手は、ただの媒介。
薫様の気配を宿した“聖遺物”に過ぎない。
彼女たちにとって、薫様は触れることすら許されぬ存在。
だからこそ、触れた者に触れることが、唯一の接触手段だった。
カルマは、何も言えなかった。
ただ、手を差し出したまま、沈黙の中に立ち尽くしていた。
自分が『通路』でしかないことを、骨の奥で理解しながら。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。
四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……?
どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、
「私と同棲してください!」
「要求が増えてますよ!」
意味のわからない同棲宣言をされてしまう。
とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。
中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。
無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。
【完結】かつて憧れた陰キャ美少女が、陽キャ美少女になって転校してきた。
エース皇命
青春
高校でボッチ陰キャを極めているカズは、中学の頃、ある陰キャ少女に憧れていた。実は元々陽キャだったカズは、陰キャ少女の清衣(すい)の持つ、独特な雰囲気とボッチを楽しんでいる様子に感銘を受け、高校で陰キャデビューすることを決意したのだった。
そして高校2年の春。ひとりの美少女転校生がやってきた。
最初は雰囲気が違いすぎてわからなかったが、自己紹介でなんとその美少女は清衣であるということに気づく。
陽キャから陰キャになった主人公カズと、陰キャから陽キャになった清衣。
以前とはまったく違うキャラになってしまった2人の間に、どんなラブコメが待っているのだろうか。
※小説家になろう、カクヨムでも公開しています。
※表紙にはAI生成画像を使用しています。
【完結】元ゼネコンなおっさん大賢者の、スローなもふもふ秘密基地ライフ(神獣付き)~異世界の大賢者になったのになぜか土方ばかりしてるんだがぁ?
嘉神かろ
ファンタジー
【Hotランキング3位】
ゼネコンで働くアラフォーのおっさん、多田野雄三は、ある日気がつくと、異世界にいた。
見覚えのあるその世界は、雄三が大学時代にやり込んだVR型MMOアクションRPGの世界で、当時のキャラの能力をそのまま使えるらしい。
大賢者という最高位職にある彼のやりたいことは、ただ一つ。スローライフ!
神獣たちや気がついたらできていた弟子たちと共に、おっさんは異世界で好き勝手に暮らす。
「なんだか妙に忙しい気もするねぇ。まあ、楽しいからいいんだけど」
静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について
おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である
そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。
なんと、彼女は学園のマドンナだった……!
こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。
彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。
そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。
そして助けられた少女もまた……。
二人の青春、そして成長物語をご覧ください。
※中盤から甘々にご注意を。
※性描写ありは保険です。
他サイトにも掲載しております。
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。
たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】
『み、見えるの?』
「見えるかと言われると……ギリ見えない……」
『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』
◆◆◆
仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。
劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。
ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。
後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。
尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。
また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。
尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……
霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。
3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。
愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー!
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる