『使い捨てられた補助スキル持ち、迷宮の主になって制服妖怪と学園祭を始める』

葉月奈津・男

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レーディング15(R15)・表現深化バージョン~刺激的な表現を含みます

第195話 呪い2 ~呪いの主と使用者~ 前編

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「・・・捕まった!」

 誰かが叫んだ。
 通路の奥で、仲間の一人が突然消えた。
 叫びも、魔力の痕跡も、何も残さず。

 ただ、空気が一瞬だけ震えた。
 それは、何かが『開いた』音だった。

「・・・ミミック?」

 誰かが呟く。
 その言葉に、何人かの顔が強張る。

 かつて——同じように、仲間が消えたことがあった。
 探索中、宝箱に飲み込まれた少女の記憶。

「・・・あの時・・・」

 その記憶が、誰かの中でよみがえる。
 でも、誰も口にしない。
 誰も、助けなかった。
 誰も、動けなかった。

 そして——その少女は、戻ってこなかった。

「・・・彼女が、呪われていたの?」

 魔術師の少女が震える声で言う。

 問いに答えるように、闇の中から女教師が姿を現した。
 呪術師の女教師は首を振っている。

「違う。彼女『も』呪われてるのよ」

 その言葉に、空気が凍る。

「・・・じゃあ、誰が『呪った』の?」

 女教師は、静かに答える。

「——箱の中で死んだ子よ」

 誰もが息を呑む。
 あの時、助けられなかった少女。
 誰もが、見て見ぬふりをした。
 誰もが、自分の命を優先した。

 その『記憶』が、呪いになった。
 その『怨念』が、形を持った。

「彼女は、今も箱の中にいる。誰にも助けられず、誰にも見つけられず、暗い中で、ずっと待ってるのよ」

 そして——今、彼女は『捕まえ始めた』。

 かつて自分を見捨てた仲間たちを。
 一人ずつ。
 箱の中に閉じ込めて。
 自分がそうされたように、暗闇の中で殺そうとしている。

「・・・呪われてるのは、私たち・・・」

 誰かが呟く。
 何人かが顔を強張らせた。

 あの時、そこにいたのは——今もいるのは——その三人だけだった。

 一人は死んで、もう一人は消えたから。

 通路の奥から——また『開く』音がした。

「さぁ、『糸』はつけた。手繰り寄せるだけ」

 女教師が、狂気の滲む笑みを浮かべた。
 心の奥で、誰かが叫んでいた。

   ◇女教師の葛藤◇

「糸はつけた。手繰り寄せるだけ」

 ——それは、私の声じゃなかった。
 でも、確かに私の口から漏れた。

 呪いを追うたび、胸の奥が熱くなる。
 快感?
 違う。
 これは・・・恐怖だ。

 誰かが、瞳の奥で叫んでいる。
 優しくて臆病だった、昔の私が。

 私は誰?
 呪いを追う者? 
 呪いを撒く者? 
 境界が溶けていく。
『それ』が、私の中にいる。

「私は教師、生徒を守る立場」
「生徒を殺さなければ、私が死ぬ」 
「さっさと捕まえて。呪いが目印になってるから簡単でしょ!」

 三つの声が、頭の中でぶつかり合う。 
 守る者。
 殺す者。
 命令する者。

 どれが私?
 どれも私?
 どれも違う?

 でも、気づいた。 
 前の二つは『教師』としての私の声。 
 三番目だけが異質だった。

『誰か』が、私を通して生徒を追わせていた。 
 私は、何のために動いている? 

 守るため?
 殺すため?

 ・・・どちらもが『私』の意志でありながら、相反している。
 そこを『呪い』に利用されている。
 それはわかる。
 でも、何が正解かはわからなかった。

 四人目を箱に閉じ込めた。 
 それが『正しい』と思っていた。
「箱に入れなければならない」
 理由はなかった。
 ただ、そうすべきだと感じていた。

 でも、呪いとは関係のない生徒が血に染まった瞬間——私の中で何かがはじけた。

 悲鳴も、後悔も、怒りもなかった。
 ただ、静かに、確かに。
 私と『誰か』の意思が重なった。

『生徒を守るのが教師』
『仲間を守りたい』
 二つ目の声、『生徒の犠牲を求めていた声』が消えた。

 意識がとたんにクリアになった。
 なすべきことがはっきりした。

 私と『呪いの主』は、同じ願いを持っていた。

『呪い』は敵じゃなかった。
 それは、守るための力だった。

『捕らえる』は『保護』
『箱に閉じ込める』は『安全な場所にかくまう』

 恐怖に歪んだ視界が、澄んでいく。
 私は教師。『それ』は守る者。
 そして今、私たちは——守る者として、ひとつになった。

 私は、杖を振り上げた。
 狙いは、生徒じゃない。
 斬りかかろうとした『同僚』・・・いいえ、『敵』。

 杖が閃き、空気が裂ける。
 まさかの裏切りに、敵は防御が遅れた。
 信頼が、油断を生んだ。

 一撃。
 それは肉体だけでなく、隊列の『信念』をも砕いた。

「なぜ・・・お前が・・・」

 誰かが呟いた。
 だが、答えは返らない。
 女教師の瞳は、迷いのない光で燃えていた。

 追跡者たちは足を止める。
 混乱と動揺が、彼らの動きを鈍らせる。

 その隙に、生徒たちは息をつく。
 そして、女教師は前に出る。
 生徒たちを背にして。

 退避と追跡行の脱落者=生徒10  教師9

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