『使い捨てられた補助スキル持ち、迷宮の主になって制服妖怪と学園祭を始める』

葉月奈津・男

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レーディング15(R15)・表現深化バージョン~刺激的な表現を含みます

第196話 呪い2 ~呪いの主と使用者~ 後編

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   ◇呪いの主◇

『糸の部屋』——あの場所で、私は死んだ。
 ミミックの罠にかかった瞬間、すべてが終わった。
 仲間たちは、すぐそばにいた。
 でも、誰も助けてくれなかった。

 ・・・助けられる状態じゃなかった。
 それはわかってる。
 あの状況で、誰も動けなかった。
 私が、そうさせたんだ。

 私が、無理をした。
 私が、焦った。
 私が、仲間を巻き込んだ。

 だから、私が死んだのは——当然だった。
 因果応報。
 自分のせいで、自分が死ぬ。
 それは、割り切れる。

 でも、仲間まで巻き込んだことだけは——それだけは、割り切れなかった。

 彼らの瞳に浮かんだ恐怖。 
 動けないまま、私を見捨てる決断をする声。
 あれが、私の最後の記憶。

 だから、私は『呪い』になった。
 守るために。
 今度こそ、誰も巻き込まないように。
 今度こそ、誰も失わないように。

『呪い』は、私の後悔の形。
『糸』は、私の未練の形。
『箱』は、私の祈りの形。

 私は、守りたかった。
 ただ、それだけだった。

 ラッキーだった。
 私を殺したのが、ミミック——『箱』だったこと。

 閉じ込める。
 仕舞う。
 隠す。
 守る。

 そんな意味を持つ『箱』に、私は喰われた。
 だから、私は呪いをかけた。

『箱』の中に、捕らえるために。
 仕舞うために。
 守るために。

 普通なら、そんな呪いに力なんて宿らない。
 ただの未練。
 ただの願い。
 ただの、死者の囁き。

 でも、このダンジョンは変わり始めていた。
 何かが、全体に染み渡ろうとしていた。
 空気が、魔力が、構造が——揺らいでいた。

 そして、あの『呪術師』の先生。
 彼女の存在が、私の呪いに力をくれた。

 彼女は『呪い』を利用してくれた。
『私』と繋がることができた。
 そして、生徒を『捕らえた。
 私と同じように、『守ろう』としていた。

 その共鳴が、私の呪いを目覚めさせた。
 未練が、力になった。
 祈りが、術になった。

 私は、ただ守りたかった。
『箱』の中に、仲間を閉じ込めてでも。
 もう誰も、私のように死なせたくなかった。

 だから、私は呪いになった。
 そして今——私の呪いは、彼女の手で形になる。

  ◇呪いと女教師と決着と◇

 私は、守りたかった。
 それだけだった。

 誰かを傷つけるためじゃない。
 誰かを閉じ込めるためでもない。
 ただ——誰も、私のように死なせたくなかった。

『呪い』は、私の後悔の形。
『糸』は、私の未練の形。
『箱』は、私の祈りの形。

 そして今、私の祈りは——彼女の手で形になる。

 女教師は、静かに立っていた。
 彼女の瞳は、もう呪術師のそれではなかった。
 ただ、生徒を守る『教師』の目だった。

 生徒たちを背にして。
 敵に杖を向けて。
 その瞳には、迷いがなかった。

 彼女は、私の声を聞いた。
 私の想いを受け取った。
 そして、私の呪いを『術』に変えた。

「守るために、閉じ込める」
「守るために、捕らえる」
「守るために、戦う」

 その言葉が、彼女の中で燃えていた。

 敵は動揺していた。
 信じていた仲間に裏切られ、隊列は崩れた。
 その隙に、生徒たちは逃げ道を探す。
 でも、女教師は動かない。
 彼女は、ここに残ると決めていた。

「・・・私が、守る」

 その声は、誰にも届かなくてもよかった。
 それは、祈りだったから。
 誰かに向けたものではなく、自分自身の中に灯した、小さな光だったから。

 そして、彼女の背後に『箱』が現れる。
 静かに、ゆっくりと、開く。

 その中には、誰もいない。
 でも、確かに『誰か』がいた。
 祈りの形をした、呪いの主が。

 彼女は、箱に手を伸ばす。
 その瞬間、空気が震えた。
 魔力が、優しく流れ込んでくる。

「・・・ありがとう」

 誰の声だったのか、わからない。
 でも、確かに聞こえた。

 その声は、風のように通路を撫でていった。
 誰にも届かなくても、確かにそこにあった。

 それは、呪いの主の声だったのかもしれない。
 それとも、女教師自身の声だったのかもしれない。

 どちらでもよかった。
 二人は、もうひとつになっていたから。

 そして、箱は閉じる。
 静かに、穏やかに。
 まるで、誰かを優しく包み込むように。

 箱は、もう『罠』ではなかった。
 それは、誰かを守るための『居場所』になった。

 通路の空気が、少しだけ軽くなる。
 霧が晴れていく。
 呪いが、祈りに変わった瞬間だった。

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