『濁』なる俺は『清』なる幼馴染と決別する

ゴウキ・ファミリー

スライム子爵 その１

「今日はスライム退治と伺ってきたのですが・・・」


スラリーの挨拶に一瞬だけ面食らったゴウキであったが、とりあえず本題について切り出した。


「はい、そうなのです。少し数は多いですけど、決して危険はありませんのでぇ、それほどお手間を取らせることはないと思いますぅ」


おっとりした・・・いや少々し過ぎたような口調でスラリーは言った。


「場所はこの家の地下になりますぅ。申し訳ないのですが、この恰好で行くことは出来ませんので、少々お待ちいただけますか？」


「えぇ、構いませんよ」


地下？と疑問に思ったが、ゴウキがとりあえずそう返事をすると、スラリーはそそくさと隣の部屋で移動した。
そしていつの間に着替え終わったのか、すぐに違う服装になって戻ってきたのであった。


「！？」


スラリーの服装は、どころどころに汚れのある白衣の作業着姿であった。市井の作業員といった感じで、とても貴族の当主が着る服というイメージが湧かないものだ。長くてウェーブのかかった髪も、上でまとめてしまっている。


「随分とお早かったですね・・・」


「えぇ、私・・・ドレスよりこちらの服のほうが来ている時間が長いので、着替えるのもすぐなんですぅ」


ゴウキの言葉に、スラリーはニッコリと笑ってそう答えた。








ゴウキ達はスラリーについていき、屋敷の地下への階段を下りる。


（スライムってのは、地下に住み着いたのか？）


スライムはじめじめしたところに住み着く。だからダンジョンに出てくることもあれば、稀に王都の下水道に出てくることもある。だが個人の家の地下に現れたという話は聞いたことがなかったゴウキは訝しんだ。


「ここは・・・」


地下に降りてみて、ゴウキ達は感嘆の声を上げた。
階段を降りきると、そこは広大な地下施設になっていたのだ。下手をすると地上にある屋敷よりも大きいのではないか、そう思えるほどだった。
その地下には非常にたくさんの樽が並んでいる。何やら札がついており、一つ一つ管理しているのがわかった。


「一体ここは・・・何なのですか？」


見たこともない光景に、ゴウキは思わず訪ねていた。
スラリーはにっこりと笑っていった。


「ここはスライム養殖場ですぅ」


と。





「・・・え？」


全く思いも寄らぬその答えにゴウキは唖然としてしまった。