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反逆
ハルト その2
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会議室ではあくまで冷徹であり、娘の死を知っても動じていなかった大司教が心の内を吐露している。ハルトはその事に衝撃を受けていた。
「私とて人の親だ。大事にしていた娘が亡き者になっても心が動かないと思ったか?」
ハルトの心の内を透かしたかのような大司教の口ぶりに、ハルトは「それは・・・」と言いかけて思わず口を噤む。
「・・・正直な男だ。娘が選んだのもわかる」
大司教は僅かに口角を上げて、そう言った。
「娘はずっと嘘をついてきた。だから、伴侶くらいは嘘の無い男が良かったのかもしれんな」
「え・・・?」
大司教の言葉に、ハルトは呆然とする。ずっと嘘をついてきた?何を言っているのかと耳を疑った。
そんなハルトを見る目を細め、大司教は続ける。
「平等で、慈悲深き性格・・・まさに聖女として生まれるべくして生まれた者。家柄のせいか、娘はいつの間にかそう言われるようになった。そしてその声に応えるように娘は己を殺し、人々の理想の聖女を演じ続けてきた。特に君の前ではな」
「・・・」
ハルトは少しばかり心当たりがあったことを思い出す。
マーサは努力家だった。聖女になる前も、なってからも、彼女は自己研鑽を続けていた。
そんな彼女の直向きさに惹かれたのだったな、とハルトは思い出したが、それも人々の求める理想の聖女像を実現させるために無理にやっていたのだろうか。
マーサの父である大司教には全てお見通しだったのか、そんなことを考えていたハルトの耳に、信じられない言葉が入ることになる。
「本当の娘は、異常に嫉妬深く、プライドが高く、闘争心が強い性格だ。現に聖女イリスには激しい闘争心を燃やしていた。彼女は平民である上に、娘よりも聖力が強かったからな」
「・・・え?」
「それから同じく平民である聖騎士カイのことも良くは思ってなかった。奔放が過ぎる聖女クリスにも対抗心を燃やしておったし・・・考えてみれば娘が真に心を許したのは君だけかもしれないな」
ハルトは目を見開き、大司教をただ信じられないといった様子で見ていた。
「私とて人の親だ。大事にしていた娘が亡き者になっても心が動かないと思ったか?」
ハルトの心の内を透かしたかのような大司教の口ぶりに、ハルトは「それは・・・」と言いかけて思わず口を噤む。
「・・・正直な男だ。娘が選んだのもわかる」
大司教は僅かに口角を上げて、そう言った。
「娘はずっと嘘をついてきた。だから、伴侶くらいは嘘の無い男が良かったのかもしれんな」
「え・・・?」
大司教の言葉に、ハルトは呆然とする。ずっと嘘をついてきた?何を言っているのかと耳を疑った。
そんなハルトを見る目を細め、大司教は続ける。
「平等で、慈悲深き性格・・・まさに聖女として生まれるべくして生まれた者。家柄のせいか、娘はいつの間にかそう言われるようになった。そしてその声に応えるように娘は己を殺し、人々の理想の聖女を演じ続けてきた。特に君の前ではな」
「・・・」
ハルトは少しばかり心当たりがあったことを思い出す。
マーサは努力家だった。聖女になる前も、なってからも、彼女は自己研鑽を続けていた。
そんな彼女の直向きさに惹かれたのだったな、とハルトは思い出したが、それも人々の求める理想の聖女像を実現させるために無理にやっていたのだろうか。
マーサの父である大司教には全てお見通しだったのか、そんなことを考えていたハルトの耳に、信じられない言葉が入ることになる。
「本当の娘は、異常に嫉妬深く、プライドが高く、闘争心が強い性格だ。現に聖女イリスには激しい闘争心を燃やしていた。彼女は平民である上に、娘よりも聖力が強かったからな」
「・・・え?」
「それから同じく平民である聖騎士カイのことも良くは思ってなかった。奔放が過ぎる聖女クリスにも対抗心を燃やしておったし・・・考えてみれば娘が真に心を許したのは君だけかもしれないな」
ハルトは目を見開き、大司教をただ信じられないといった様子で見ていた。
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