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最後 ~ウラエヌス目線~
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「はっ・・・こんな老いぼれの死を見届けようというか」
「法術を多用した分、きっと肉体的には私の方が老いぼれです」
「・・・いや、イライザは変わらんよ。昔と同じく、美しい」
ワシはイライザの顔を見た。
確かに昔と比べ老けた。だが、かつてワシを魅了した美しい顔には違いない。他の女と何度も遊んだが、イライザ以上に美しい女にはついに会えなかった。昔の女はバイアスがかかって美化されると言うが、そんなことはない。イライザは本当に美しい。
「そこまで言ってくれるなら、男冥利に尽きるというものじゃな。ついでで悪いんじゃが、一つ頼まれてくれんか?」
「あら何でしょう?処刑を見送らせてほしいというのならお断りしますよ。私の権限なら出来るかもしれませんけど、私がもうすぐ死ぬというのに、貴方だけ生きるというのは癪ですから。死ぬなら一緒が良いです」
別にワシは今更延命を望むわけじゃないが、イライザの言葉に半ば呆れてしまう。本当に大聖女か?と思うようなこの言いっぷり。思うに昔から外面は良かったが、ワシにだけは腹黒な一面を見せていた。
「今更生き永らえようとは思わんわい。どうせワシと一緒に死んでくれるなら、お願いしたいことがあったんじゃ」
そう言ってワシは視線を牢の隣に移した。
そこにはディオが閉じ込められている見かけだけの結界が張ってあった。以前魔術師達が発動してそのままの結界だ。
「ワシが死ぬのはいい。だが、まだ死んではならんやつがそこにいる。そいつを出してやりたい」
立てた親指をくいっとディオの結果に向けてワシは示した。
「あら、そういえば随分と派手な結界がありますわね。貴方の顔しか見てなかったから気が付かなかったわ」
「うっそじゃろお前!?」
露骨に隣にあるのに、どれだけワシの顔ばかり見ていたというんじゃ。
「派手なだけで随分と継ぎ接ぎだらけのお粗末な結界ですわね。これならわざわざ術式を読み解いて中和しなくても壊せそうね。ただ、それなりの魔力をぶつける必要がありますが」
流石はイライザ。専門外でもこの結界の荒さに気が付いたか。
「結界にいるのはディオ。バリーの後継みたいなもんじゃ。まだディオにはやらねばならんことがあっての。最後の最後に世話を焼いてやりたいんじゃ」
「結界を破壊すると。まぁ、私と貴方の魔力を全力でぶつければ砕け散るでしょうね。ただ、生命力を使い果たして私達は死ぬことになるでしょうが」
「無理にとは・・・」
「いえ、誰がやらないと言いました?むしろ貴方とやる最後の共同作業だと思うと張り合いが出ますわ!」
軽い話ではないはずなのに、イライザは何でもないように言った。
「ようやく、最後に貴方といられるのですね。これ以上に望むものはありません」
これ以上ないほどの笑みを浮かべるイライザ。
「・・・すまん。そしてありがとう」
照れくさかったが、ワシは逸らさずイライザの目を見つめ返した。
お互い好き勝手に生きたが、最後の最後で一緒になれた・・・か。
ディオ、ワシはここで終えるが、お主はまだ終わってはならん。
どれだけ苦しくても、悔いがあっても、惨めでも、最後の最後にいい事があるかもしれんぞ。ワシのようにな。
じゃから最後まで諦めずに、生き続けるのじゃ。
「法術を多用した分、きっと肉体的には私の方が老いぼれです」
「・・・いや、イライザは変わらんよ。昔と同じく、美しい」
ワシはイライザの顔を見た。
確かに昔と比べ老けた。だが、かつてワシを魅了した美しい顔には違いない。他の女と何度も遊んだが、イライザ以上に美しい女にはついに会えなかった。昔の女はバイアスがかかって美化されると言うが、そんなことはない。イライザは本当に美しい。
「そこまで言ってくれるなら、男冥利に尽きるというものじゃな。ついでで悪いんじゃが、一つ頼まれてくれんか?」
「あら何でしょう?処刑を見送らせてほしいというのならお断りしますよ。私の権限なら出来るかもしれませんけど、私がもうすぐ死ぬというのに、貴方だけ生きるというのは癪ですから。死ぬなら一緒が良いです」
別にワシは今更延命を望むわけじゃないが、イライザの言葉に半ば呆れてしまう。本当に大聖女か?と思うようなこの言いっぷり。思うに昔から外面は良かったが、ワシにだけは腹黒な一面を見せていた。
「今更生き永らえようとは思わんわい。どうせワシと一緒に死んでくれるなら、お願いしたいことがあったんじゃ」
そう言ってワシは視線を牢の隣に移した。
そこにはディオが閉じ込められている見かけだけの結界が張ってあった。以前魔術師達が発動してそのままの結界だ。
「ワシが死ぬのはいい。だが、まだ死んではならんやつがそこにいる。そいつを出してやりたい」
立てた親指をくいっとディオの結果に向けてワシは示した。
「あら、そういえば随分と派手な結界がありますわね。貴方の顔しか見てなかったから気が付かなかったわ」
「うっそじゃろお前!?」
露骨に隣にあるのに、どれだけワシの顔ばかり見ていたというんじゃ。
「派手なだけで随分と継ぎ接ぎだらけのお粗末な結界ですわね。これならわざわざ術式を読み解いて中和しなくても壊せそうね。ただ、それなりの魔力をぶつける必要がありますが」
流石はイライザ。専門外でもこの結界の荒さに気が付いたか。
「結界にいるのはディオ。バリーの後継みたいなもんじゃ。まだディオにはやらねばならんことがあっての。最後の最後に世話を焼いてやりたいんじゃ」
「結界を破壊すると。まぁ、私と貴方の魔力を全力でぶつければ砕け散るでしょうね。ただ、生命力を使い果たして私達は死ぬことになるでしょうが」
「無理にとは・・・」
「いえ、誰がやらないと言いました?むしろ貴方とやる最後の共同作業だと思うと張り合いが出ますわ!」
軽い話ではないはずなのに、イライザは何でもないように言った。
「ようやく、最後に貴方といられるのですね。これ以上に望むものはありません」
これ以上ないほどの笑みを浮かべるイライザ。
「・・・すまん。そしてありがとう」
照れくさかったが、ワシは逸らさずイライザの目を見つめ返した。
お互い好き勝手に生きたが、最後の最後で一緒になれた・・・か。
ディオ、ワシはここで終えるが、お主はまだ終わってはならん。
どれだけ苦しくても、悔いがあっても、惨めでも、最後の最後にいい事があるかもしれんぞ。ワシのようにな。
じゃから最後まで諦めずに、生き続けるのじゃ。
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