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第二十一話 嵐の前

③ 助平3人寄れば――(前)

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「なんで閉めたんですか!? なんで閉めたんですかー!?」

「す、すいません。
 状況に理解が追いつけそうになかったので、つい――」

 涙目で詰め寄るイネスさんに、私は頭を掻いて弁解する。

 ここは私の自宅、そのリビング。
 私とエレナさん、そして先の侵入者――勇者の一人であるイネスさんの3人は今、同じテーブルを囲んでいた。

「んー、なんで閉めたとかそんなことより何より、ここに“封域”のイネスがいるのが問題だったりしないのかなー?」

「まあ、問題ですね――っと、エレナさん、イネスさんを知っているんですか?」

「ん、一応ね。
 ミサキから話だけ聞いてたんだよ」

「なるほど」

 小声でエレナさんとやり取りした後、改めてイネスさんに向き直る。

 イネス・シピトリアという人物は、実に煽情的な女性だ。
 特別露出の多い格好をしているわけではない。
 なんというか、身体を構成しているパーツ全体がエロいのだ。

 金色の髪を三つ編みにした、清楚な面持ち。
 だが――瞳の垂れ具合、唇の瑞々しさや柔らかさ、ぞくっとさせる柔和な笑み。
 それらが男の欲情を絶え間なく掻き立ててくる。

 格好は、豪奢なローブこそ羽織っていないものの、前に会った際とほぼ同じだった。
 白を基色としたトップとレギンスなのだが、上下ともに身体への密着感が凄い。
 特にレギンスは下半身にぴっちりとフィットしており、肉感の良い彼女のお尻や太ももがはっきりと分かる。
 トップはトップで、胸の形が浮き出るような形になっており、蠱惑的なおっぱいがよく確認できた。

 彼女の肢体もまた、男を欲情させることに特化したような、淫猥なものだ。
 スタイルが良いのは間違いないのだが、綺麗さ、美しさよりもまず色っぽさが目につく、といえばいいのか。

 ……そんな感想はさておいて。
 私は彼女に話しかけた。

「えー、それでですね、イネスさん?」

「やだ、誠ちゃんってば!
 イネスなんて、他人行儀に呼ばないで下さい。
 昔みたいに、葵って呼んで?」

 顔を赤らめて、くねくねするイネスさん。
 ……えーと。
 とりあえず、彼女が駒村葵さん――私の学生時代の友人であることは、もう確定させてしまってよいようだ。
 髪や目の色、髪型は違うものの、確かに昔の面影が色濃く残っている。

「……アオイ?
 どういうこと、クロダ君?」

「いや、私もまるで把握できていないんですが……
 どうもイネスさんは私の昔の友人に――」

「幼馴染です」

 突然、イネスさん――いや、ここは彼女の望み通り、葵さんと呼ぶか――葵さんが割り込んできた。

「幼馴染です。
 アタシは誠ちゃん――黒田誠一の幼馴染なんですよー」

 さらっと二度繰り返してから、葵さんは笑顔で宣言した。

「んんっ!? 幼馴染!?
 ってことは、イネスさんって――」

「ふっふっふ。
 そう、アタシは地球人。
 キョウヤよりも前にこの世界に来た、最初の<来訪者>!」

「――そんなに歳いってなかったんだ?
 正直、三十路くらいにはなってるものかと」

「はっ倒しますよアナタ!?」

 ドヤ顔で決めポーズした葵さんだが、エレナさんからのあさってのつっこみで面食らう。
 だがすぐに体勢を立て直し、しかし口調は強いままで、

「とにかく!
 アタシは六龍界こっちに来るまで東京で過ごしてたんですよ、誠ちゃんと一緒に!!
 ドゥユウアンダスタンッ!?」

「うんうん、分かった分かった、オーケーオーケー」

「よろしい。
 では、私の用件をお話し――」

「いやー、でもボクはてっきり、ヒナタ君を監視するために派遣されたものだとばかり――」

「全部分かってんなら最初からそう言えやぁっ!!」

 ドンっとテーブルを叩く葵さん。
 口調が変わってますよ、大丈夫ですか!?

「ん? 全然分かってなかったよ?
 でも、そう言うってことは、さっきので間違いないんだよね?」

「アハハハ、どうしましょう。
 アタシ、この子のことガチで嫌いになっちゃいそうですー♪」

 あっけらかんとした物言いのエレナさんに対し、こめかみに青筋が浮き出る葵さん。
 なにやら不穏な空気である。

「ま、まあまあ。
 彼女も悪気があったわけではないんですよ(多分)。
 葵さん、抑えて抑えて」

「……誠ちゃんがそう言うなら」

 私が仲裁に入ると、葵さんはしぶしぶながら納得してくれた。
 こほん、と一つ咳を入れてから、

「ごめんなさい、誠ちゃん。
 アナタを騙すつもりなんて無かったんです。
 でも――今の誠ちゃんなら、“アタシの事情”分かってくれますよね?」

「……そうですね。
 まあ、大よそのところは」

 先程のエレナさんの言葉で、大体分かった。
 私に“それ”を隠していた理由も察せられる。
 ――当時の彼女ではどうしようもないことだったのだろう、責める気など毛頭ない。

「んー、ところでさ、イネスさん――あれ、アオイさんの方がいい?」

「ああ、葵と呼んで下さい。
 ……これは誠ちゃんを混乱させないようにとの配慮であって、アナタに親愛の情があるとかそういうわけではないので念のため」

「――ん、まあ、いいけど。
 アオイさん、何か話があるっていうなら、ボク、ミサキと替わろうか?
 いや、必ずしもすぐに替われるわけじゃないんだけど」

「……それには及びません。
 いえ、寧ろまだ気づいていないのですか、エレナ?
 キョウヤと『交信』できないことに」

「え?」
「なっ!?」

 エレナさんと私が同時に声をあげた。

「ふっふっふ。
 あたしは“封域”のイネス。
 異世界からの干渉を無効化する結界を張るなんて、造作もないことです」

「そんなっ!?
 それってつまり――」

 エレナさんが緊張した声色に変わる。
 それはそうだろう。
 ここで何があろうと、ミサキさんに助けを呼ぶことはできない、ということなのだから。

 強張った面持ちで、エレナさんが言葉を続けた。

「――つまり、今ならナニをやってもミサキにはバレないってことだね!?」

「その通りです!
 察しがいいですね、アナタ!」

「……えー」

 そんなお気楽な状況じゃないと思うのですが。
 そしてこの機会を利用しなくていいんですか、葵さん。

「というかですね、ミサキさんに何か遠慮していたことがあったんですか、エレナさん?」

 そんな気配は微塵も感じさせない立ち振る舞いだが。

「えー、遠慮してるよー。
 “こんなことしたらミサキに悪いかなー”っていつも思いながら、クロダ君と遊んでるんだから!」

「……そうですか」

 思っているだけなんですね。

「そ、想像以上にゲスいですね……
 いやでも、その割り切りの良さはどこかキョウヤを彷彿させるような……」

 エレナさんの態度には葵さんすら戦慄している。
 だが、次の瞬間にはテンションを持ち直し、

「まあとにかくそういうわけで、小うるさいヤツはこの場に現れないのです!
 レッツパーリィですよ、誠ちゃん!
 レッツパーリィ!」

「この人が何言ってるか微妙にわかんないけど、これはチャンスだよ、クロダ君!
 今日は何の気兼ねも無くめちゃくちゃイチャイチャしちゃおう!」

 2人がぐぐいっと私に迫ってくる。
 柔らかな2つの双丘が、私の二の腕にぐにぐにと当たる。
 とても嬉しいことなのだが、いやしかし、いいのか、これ?

「あ、あの、葵さんは何か用事があったのでは?」

「そんなことは後回しですよ、後回し!
 会えなかった長い月日分のアレコレを、今日、ここで!
 ぐちょぐちょになっちゃいましょう、ぐちょぐちょに!!」

「それをするのは全く持って吝かではないのですが、この流れ、ちょっとおかしくないですかね!?」

「ん、言われてみればそうかもね。
 今日はボクが料理するはずだったのに、全然準備を進めてないし」

「エレナさん、それは違う!
 微妙に間違ってますよ!?
 もっと色々、葵さんに聞くべきこととかあるんじゃないかと!!」

 おかしい。
 私がつっこみ役に回っている!?
 しかしそうでもしないと、この場がよく分からない方向へ発散していく気しかしないのだ!

「んんー、聞くべきこと?
 そうだなぁ……あ、幼馴染って言ってたけど、結局どこまで行ってるのさ、2人の関係って?」

 あー、エレナさんにとって聞きたいことはそれなのか。
 だが、葵さんはその質問を待っていたようで、嬉しそうに顔を綻ばせながら、

「ふっふっふ、よくぞ聞いてくれました。
 真っ先に宣言したかったんですが、ちょっとタイミングを見失っちゃいましてね!
 アタシこそ、誠ちゃんの初めての相手!!
 誠ちゃんに性の手解きをしたのが、何を隠そうこのアタシ!!」

 普通の女性なら気恥ずかしさを感じるようなことを、何の臆面もなく言ってのける。
 うん、今言われた通り、色々と縁があって私は彼女に筆卸をしてもらったのだ。
 雌の肢体を味わう初めての快感は、今でも鮮明に記憶している。

 私が過去を思い出していると、エレナさんがおもむろに葵さんへ質問した。

「んー、じゃあ、クロダ君がここまで変態になっちゃった元凶ってこと?」

「そ、そういう言い方されるとちょっと。
 責任は感じてますけど……」

 若干テンションが下げる葵さん。
 あれ、葵さんが責任を感じてしまう程、私って駄目な変態なんですかね?

「あとクロダ君の“初めて”ってことだけど、アオイさんの“初めて”は――あ、ごめん、今の発言はなしで」

「おやおや、意外と気配りができる子ですねー。
 アタシからの好感度が1ポイントアップしましたよ?」

 葵さんの顔色から“何か”を感じ取ったようで、エレナさんは途中で言葉を止めた。
 実に懸命な判断だ。

「んんー、ほかに気になることと言えば、クロダ君の学生時代かなー?」

「あらあらあらあら、それ、聞いちゃいます?
 アタシにそれを聞いちゃいますかー。
 ……長くなりますよ、アタシにそれを語らせると」

「ん? 結構いろんなエピソードがあったりするの?」

「もちろんですよー!
 ふっふっふ、誠ちゃんのことなら、何月何日にどこでどんな会話をしたかまで、きっちり覚えてますから!」

 すいません、それはかなり怖い気がするのですが。

 しかしまずい、なにやら女子2人はガールズトークに移行しだした。
 こうなると、男である私には彼女達を止める術はなくなる!

「あや、どうしました、誠ちゃん?」

「……いえ、今のうちに夕飯の支度をしようかと」

 席を立とうとしたのを見咎められた。
 葵さんに続いて、エレナさんも口を尖らせて文句を言い出す。

「ちょっとちょっとー、それはボクがやるって言ったじゃん」

「あー、その、私相手ならともかく、葵さんもいると気後れしてしまうのではないかと思いまして」

「えー、そんなこと無いよー?」

 いや、エレナさんの方に問題は無いのかもしれないけれど、私が頭を整理するため一旦この場を離れたいのである。
 この混沌とした場で臨機応変に対応するなぞ、私には無理な話なのだ。

「エレナには悪いですけど、アタシも久々に誠ちゃんの料理が食べたいかなーって」

「えー」

 葵さんからの援護射撃。
 2人から言われて、エレナさんも少し意気消沈する。
 それでもなお、不満は消えないようで、

「ぶーぶー、ボクが作るはずだったのにー!」

「わ、分かりました。
 では、盛り付けなどのちょっとしたお手伝いをして下さい。
 それでは如何でしょう?」

 仕方ないので私は妥協案を提示した。
 エレナさんはうーんと唸った後に、

「……んー、まあ、いっか。
 今回は特別だからね?」

「ストーップ! ストップです!!
 それは聞き捨てなりませんよ!?」

 今度は葵さんが待ったをかけてきた。

「誠ちゃんと一緒に料理とか、そんな新婚さんイベントをアタシの前でやると!?
 許されざることですよこれは!!」

「んー、でもなあ、アオイさん、今日はお客様なわけだし?
 客として訪れた家のキッチンにいきなり上がり込む程礼儀知らずなの?
 あの勇者イネスさんは?」

「ぬ、ぬぬぬぅ!?」

 意表を突かれたように、葵さんが苦悶の声を出す。
 彼女は悔しそうに歯?みして、

「くぅっ!
 礼儀を盾にされては品性方向を謡うアタシは異議を言い出せない……!」

 他人の家に無断で侵入するのはいいのですかね?
 キッチンに入るのは駄目なのに?

「人の家に勝手に上がるのは勇者特権でなんら問題はないのですが、しかし人様のキッチンに無断で入るのは女としての良識が許さない……!」

 まるで私の心の声を盗み聞いたかのような台詞。
 勇者としての常識と女性としての常識は別物ということなのか、葵さん的には。

「致し方なし、今回は諦めましょう。
 でも、なるべく早く用意してきて下さいよ?
 キッチンから喘ぎ声とか聞こえてきたら、急いで混ざりに行きますからね!?」

「はいはーい。
 じゃあ、行こっか、クロダ君」

 適当な返事を葵さんに返し、エレナさんは私の手を取ってキッチンへと向かった。
 ――いかん、結局頭の整理ができないまま、流されてしまいそうだ……!





「さ、できましたよ」

「…………」

 料理をテーブルに並べ、葵さんに食事を促す。
 しかし、不思議なことに彼女は沈黙していた。

「――どうしました、葵さん?
 食べないのですか?」

「…………いえ、あの」

 疑問に思った私が尋ねてみても、どうも要領を得ない。

 用意した料理は、時間が無いこともあって出来合いのものがほとんど。
 “皿”には、野菜や肉を挟んだサンドウィッチや揚げ物などが盛りつけられている。
 2つある“盛り上がった箇所”は、フルーツとクリームで飾りつけ。
 “割れ目”には、メープルのかかった甘いスティックドーナツが何本か挿入されている。

「ふーっ……ふーっ……ふーっ……ふーっ……」

 “皿”が荒い息遣いをする。
 動くと色々こぼれてしまうので、じっとしていて欲しいところだ。

 葵さんは私の料理をじぃっと見つめた後、ようやく口を開いた。

「え、えっとその、ツッコミどころが山ほどあるんですが、とりあえず。
 ――ボールギャグと目隠しは必要なんですかねー?」

「そちらの方が楽しそうなので」

「……アハハハハ、そ、そうですかー」

 力なく笑う葵さん。
 その額には、汗が一筋流れていた。

「ふーっ……ふーっ……ふーっ……ふーっ……」

 “皿”――実のところボールギャグを噛ませて喋れなくしたエレナさん(全裸)――は、変わらず息が荒い。
 “割れ目”がしっとりと濡れているところを見ると、既に感じ始めているようだ。
 目隠しを着けられているので、周りの状況が把握できないのも、興奮を高める要因かもしれない。

「なんと言いますか――いきなりこんなものが出てくるとは思いませんでしたよ……」

「ええ、料理をしているうちに少しずつ調子を取り戻しまして。
 ようやく本来の私が出せた気がします」

 これまで、エレナさんと葵さんに押されっ放しだった。
 どうにか、面目躍如といったところだろうか。

「……一緒に居た頃より明らかに悪化してますねー。
 アタシと別れた後、どんな生活してたんですか、誠ちゃん?」

「ごく普通に、品性方向かつ真面目に暮らしておりましたとも」

「……う、嘘臭ぇ」

 眉を顰める葵さんだが、私はそれを取り合わず。

「それはともかく。
 早速食事といきましょう。
 どれから食べますか?」

「で、では、お腹に乗っている唐揚げから。
 ……これ、熱くないんですか?」

「火傷しないよう、適温に冷ましてありますからご心配なく」

「変なとこ気配りしてますねぇ、ホント」

 ぶつぶつと言いつつも、流石は葵さん。
 すぐさまこの“料理”に順応し、食事を楽しみだした。
 彼女は昔と変わっていないのだと、少しほっとする。

「ふーっ……んっ!?………ふーっ……ふーっ……んぅっ!……ふーっ……」

 一方、お皿なエレナさんはじっとしたまま。
 時折、フォークやナイフでつついてやるとピクッと反応するところが可愛らしい。
 ちなみに彼女には私が調理している最中食事をとらせておいたので、料理が食べられないことに関して問題は無い。

「……むむっ!?
 こんなふざけた料理だというのに、味は結構美味しいですね……」

「独り暮らしが長いですからね。
 自然と料理の腕も上がります」

「ぬ、ぬぅぅ……アタシもうかうかしていられません。
 ……ちゃんと料理できるようにしないと」

 葵さんは、食べながらぶつぶつと呟いている。
 まあ、美味しく頂いて貰えているなら何よりだ。



 食事は進み。

「――あとは、デザートを残すだけですね」

「ええ、あっという間でした」

 お皿エレナさんの上に乗った料理はほとんどが食べられ。
 残るは、おっぱいを飾り立てている果物と、女性器に突っ込まれているスティックドーナツだけとなった。
 個人的に、あのプリンのようにぷるんっとした胸をホイップクリームと各種フルーツで盛り付けた一品は自信作だったりする。

「では、おっぱい――もとい、果物の方から頂きますねー」

 言うが早いか、葵さんはフォークでフルーツを一つずつ取り、頬張っていく。

「んっ! んんっ! んっ! んーっ!!」

「うーん、上手く取れませんねー?」

 時々、ワザとらしく果物を刺しそこね、エレナさんのおっぱいをつんつんと突く。
 その度にエレナさんは悶え、喘いでいた。

「クリームも美味しいですー。
 ふふふ、直接舐めちゃいましょうか」

「んー! んんっ!! んぅーっ! んっんっんっんっ!」

 ぺろぺろとおっぱい、もとい、クリームを舐める葵さん。
 エレナさんはその刺激を敏感に感じ取っているようだった。

「――おやおや、おかしいですねー?
 天辺にあるこの“さくらんぼ”、取れませんよー?」

 最後に残った“さくらんぼ”――エレナさんの乳首を、葵さんはフォークの先でころころと弄る。

「んっ! んんっ!! んっ!!!」

 フォークが胸の先端へ当たる度に、身を捩るエレナさん。
 私は葵さんへ向けアドバイスを飛ばした。

「ああ、それはですね、しゃぶりついて頂くといいのですよ」

「んぅっ!!?」

 そのアドバイスを偶然耳にしたのだろう、エレナさんの身体がびくっと震えた。

「あー、なるほどー。
 そうすればよかったんですねー」

 葵さんはにこやかにそう言うと、何の躊躇もなくエレナさんの乳首に吸い付く。
 そしてちゅぱちゅぱとしゃぶり始めた。

「んーっ!! んっんっんっんっんんっ!! んんぅううっ!!」

 おそらく嬌声を上げているのだろうが、ボールギャグのせいで上手く声が出せていない。
 これはこれで非常に味わい深い響きである。

「では、私も頂きましょう」

 葵さんが吸っていない方の胸に、私も口をつけた。
 まだ少しクリームが残っていて、口の中に甘い味が広がる。
 それを味わうと同時に、葵さんに負けないよう、全力で彼女の乳首を吸い上げた。

「んんんんっ!!! んんっ!! んぅぅうううううっ!! ううぁあああっ!!!」

 2つの乳首を同時に責められ、喘ぐエレナさん。
 じたばたと身体を動かそうとするが、しかし私と葵さんにがっちりホールドされている。

「んっ!! んんっ!! ああっ!! あぁああああああっ!!!」

 一瞬、大きく震えるエレナさんの身体。
 ……胸からの快感で一度イったのだろう。

「……ふぅ。
 フルーツはこれ位ですかねー」

 おっぱいから顔を離し、笑顔で葵さんがそう告げた。
 胸への責めはこれで終わりのようだ。

「ふーっ…ふーっ…ふーっ…ふーっ…」

 肩を揺らして呼吸しているエレナさん。
 顔が心なしか緊張しているように見える。
 これから、ナニをされるか予想がついているのだろう。

「では最後に、この“スティック”を頂いちゃいましょう!」

「っ!!」

 葵さんの言葉にエレナさんが身体を硬直させる。
 これから来る快感に備えようとしているのか。

「さーて、これから食べましょうか――ねっ!」

「んっっ!!? んぁあああああっ!!!」

 一本のスティックドーナツを掴んだ葵さんは、それを引き抜くのではなく、中へ“押し込んだ”。
 そのまま、エレナさんの中でスティックを掻きまわし、さらには膣への出し入れまでする葵さん。

「んんっ!! んんっ!! んんんっ!!!」

「んー? これはどうしたことでしょう?
 お皿から蜜が出始めましたよ?」

 エレナさんの膣口から流れる愛液を見ながら、葵さんは面白そうに呟いた。

「はい、中を刺激してやれば、次から次へと蜜が出てくるんです」

「さっすが誠ちゃん! 高性能な『お皿』を持ってますねー」

 私の台詞に一つ頷くと、葵さんはさらにエレナさんを責め立てる。

「んっ!! んんっ!! んーっ!! んんぅうっ!!!」

 おっぱいを弄られた時以上にエレナさんは感じてしまっている。
 そして感じれば感じる程、下の口からは淫らな液体で溢れ、スティックを濡れしていった。

「……これ位でいいですかねー?」

 散々責め抜いた後、葵さんはスティックドーナツをエレナさんから抜く。
 彼女の愛液でふやけてしまったソレを、美味しそうに頬張る。

「ふふふふふ、美味しいですよー、エレナ?」

 くちゃくちゃと、愛液の音を立てながら葵さんはドーナツを食べていく。

「……んっ!……んんっ!……んんっ!!」

 その音を聞いて、エレナさんはさらに昂っているようだ。
 顔は紅潮し、乳首もピンっと勃っていた。

「ごちそうさまです♪
 ――さぁて、じゃあ次のイってみましょう!」

 言うと、葵さんはまだエレナさんに挿さっているスティックを握り――

「ふっふふふ。ふふふのふ。
 油断しましたね、エレナ?」

「んぅ?」

 ――突然、不敵な顔をしだした。

「アタシが、誠ちゃんとイチャイチャするのに邪魔なアナタを、何もせず放置するとでも思ってたんですか?
 この体勢になった時から、アナタの負けは決まっていたんですよ!!」

 まあ、“皿”になった時点でエレナさんは何の抵抗もできなくなったわけだがそれはともかく。
 葵さんは大きな宣言と共に、一気に顔をエレナさんの股間に寄せて、彼女のクリトリスへと口を付けた。

「んっ!!? んんんんぅうううううううううううっ!!!!!」

 絶叫。
 凄まじい声が部屋に響く。
 無論、エレナさんのモノだ。

「んぅっ!!! んんっ!!! んんんぅぅうぅううああああああああっ!!!!」

 息の続く限り叫び続けるエレナさん。
 それもそのはず――葵さんは、凄まじい勢いでエレナさんの陰核を舐めているのだ。

 いや、これを“舐める”と表現するのは余りに大人しい。
 エレナさんの小さな『豆』を、舌でこねくり、唇で吸い上げ、歯で噛み――それら全てを高速で、同時に行っている!
 神業と表現してもいいほどのクンニリングス!
 葵さんがこれ程の使い手だったとは!!

「んんぅうっ!! んんぁあああっ!! あっ!!! ああぁぁああああっ!!!」

 しかもクンニだけに留まらず、葵さんは膣に挿さったスティックを猛烈にピストンしだした。
 クリトリスと膣内を同時に責め立てたのである。

「あああっ!! ああっ!!! あぁぁああああああっ!!!!」

 これにはエレナさんもあっという間に白旗を上げた。
 女性器から潮を吹きながら、盛大に絶頂したのだ。
 だが――

「――あああっ!!? んんんっぅうううっ!!! ああっ!! んんぅああああああっ!!!!」

 葵さんは、その程度で止めはしなかった。
 イった後も、それまでと変わらぬ調子で弄り続けたのだ。

「あっっ!!! あっっ!!!! あぁぁああああっっ!!!」

 再度、潮吹き。
 短時間で、またエレナさんはイカされてしまったのである。
 これで葵さんの手は止まる――わけがなかった。

「あぅうううっ!! あぅっ!!! あっあっあっあぁああああっっ!!!」

 またしてもエレナさんは透明な液体を噴いた。
 絶頂に次ぐ、絶頂。

「ふふふふふ、終わりませんよー、止まりませんよー?
 気が狂うまでイカせてあげますからね、エレナ。
 誠ちゃんの性技の師であるアタシの絶技に酔いしれ、後悔し、果てるがいい!」

 私はこんな技、一度も見せて貰ったことないけれども。

「あ―――っ!!! あ――――っ!!! あ――――っ!!!!」

 喘ぎというより、もはや悲鳴となったエレナさんの声。
 彼女は彼女で、あらん限りの力を持って足掻き、暴れているのだが――仮にも勇者である葵さんに、力で勝てるわけが無かった。



 第二十一話④へ続く
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