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第16話 魔王⇒再会
【3】ぐだぐだ
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「なにぃっ!? オレの親父は魔王で、アスヴェルとの戦いの後こっちの世界に転移してきて、政府に虐げられている人のためにレジスタンスを立ち上げていただと!?」
「……うん。お父さん達、ずっとその話をしていたんだけどね?」
魔王の入念な再説明が功をなし、ミナトはようやく納得してくれた。
「アスヴェルって、本当にDivine CradleのNPCじゃなかったのか!」
「あー、その辺りから説明が必要だったのかー」
テスラはコメカミを抑えた。思いの外、初歩の初歩でミナトの理解は躓いていたようだ。
「オレの頭の問題じゃねぇだろ!? オマエら、色々段階すっとばして話し過ぎなんだよ!! オレにとっちゃ、親父が魔王って段階で驚愕の事実だっつーのに!!」
「あ、あれ、湊音? 僕が魔王って話、何度もしてたよね? なんでそんな認識なんだい?」
「そんなん、親父疲れてんのかなぁー、て思ってたに決まってんだろ。男手一つでオレ育ててたし、レジスタンスの活動もしてたから」
「ずっと憐れまれていただけだったのぉ!?」
親子関係にヒビが入った。だが少女は止まらない。
「そもそも、アスヴェルはどうして親父が魔王だって知ってたんだ! それがあったからオマエらがドッキリ企んでると勘違いしたんだぞ、オレは!」
「いや、そこはそれ程大したネタばらしでも無いのだが」
矛先がこっちに向いた。
「単純な話だ。他の人々が――ミナトやハルも含めて――私をゲームのキャラとして扱っていたというのに、サイゴウだけは最初から私を“人間”として扱っていた。食事や寝床の提供をこちらが頼んだ訳でも無いのにしてくれたからな。それに、ただのゲームキャラに過ぎない筈の私を信頼し、自分達の命を懸けた強襲作戦へ要員として参加させてくれた。これはもう彼が“こちらの事情”を把握しているのだと考える他ない。だがどうやってそれを知ったのか、と考えあぐねていると、実はレジスタンスの“リーダー”は別に居て、その”リーダー”からサイゴウは指示を貰っていたと聞いた。
――そこでピンと来た訳だ」
「どこが単純なんだよ」
「基本的に頭いいんですよね、アスヴェルさんって」
ミナトとハルから賛辞(?)が飛ぶ。良きかな良きかな。
「もっと簡単なところで言えば、クラン名の“エルケーニッヒ”とは魔王という意味だろう?」
「あ、それは分かりやすい」
「ですね――ってちょっと待って下さい。エルケーニッヒってドイツ語ですよね? そんな名詞までDivine Cradleの翻訳システムって働いてましたっけ?」
納得しかけたところで、ハルが疑問を呈す。
「ああ、そこは図書館で調べた」
「ドイツ語をですか?」
「いや、この世界の言語全部。日本語も含めて数か国分は既に覚えたぞ」
「……え」
黒髪の少女が絶句する。ミナトの方はわなわなと震え、
「露骨に頭良いですアピールしてきやがったな……!」
「ファンタジー世界に荷電粒子砲持ち込むようなヤツだからねぇ。そりゃあ天才だとも」
肩を竦めて魔王が補足する。その態度は一体なんだ。
さらにヤツは言葉を続け、
「じゃあ、一からついでにもう一つ紹介させて貰おうかな」
「む、なんだ?」
「僕の名前だよ。こっちの世界での名前さ。まさか、そのまま魔王を名乗っているとは思っていないだろうね?」
「……いや、そんな訳ないだろう、うん」
少しだけ思っていた。
「僕はこの東京で四辻旺真で通っている。まあ、今更君に呼称を変えろとは言わないが、覚えておいてくれ」
「なるほどそうか」
となると、ミナトの本名は四辻湊音ということになる。要チェック。
もっとも――もうすぐ、ミナト・ウィンシュタットになる訳だが。
「さて、一息ついたところで続きといこう。“敵”についてだ」
「“敵”、か」
この東京という街を支配し、人々を無機質に管理した上で“ゲーム”という悪趣味な催しを企てる存在。
「改めて教えよう。“オーバーロード”。それこそがこの街の支配者の名だ」
「上帝か。なかなか御大層な名前を名乗る輩だ。だがまあ、私の勝ちは揺るがない」
「い、いきなり凄い自信だね……既に勝算が見えていると?」
アスヴェルの態度に、魔王は戸惑っているようだ。
まったく白々しい――と、アスヴェルは嘆息を一つ。
「無論だとも。“オーバーロード”とやらが如何なる存在か分からんが――“彼等”の協力が得られればどんな相手だろうと打ち勝てるだろう」
「“彼等”!? 援軍に心当たりが!?」
「そうだ。昨日は突発的な作戦だったせいで間に合わなかったようだが、この街を解放するための戦いならば必ずや“彼等”は駆けつけてくれる筈だ」
「そ、そんな連中が、いったどこに!?」
「おいおい。いつまでとぼけているつもりだ?」
やれやれと頭を振ってから
「いるんだろう? この世界には――“ヒーロー”と呼ばれる人々が!」
「「「「え」」」」
アスヴェル以外の全員が一斉に同じ顔をした。
それに構わず、アスヴェルは語り続ける。
「平和を守るために結成された様々な特殊戦隊、身体が変異し超自然的力を宿したミュータント、鋼鉄の意思で悪に抗う戦士――ふっふっふ、皆頼もしい奴らだ」
このような者達と共に戦える喜びに、ついつい顔が綻んでしまう。
「特にこの光の巨人は素晴らしい! 本来はなんの縁も無い人々のために自らの命すら投げ出して戦うその善性――私と並び立つに相応しい存在だ!!」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
そこで、自分以外が皆沈黙していることにようやく気付いた。
「どうした? 全員黙り込んで」
「……いねぇよ」
ぼそっと、ミナトが零した。彼女はさらに繰り返す。
「いねぇんだよ」
「え?」
「そんな連中、いねぇんだよ!!」
「え?」
思わず、同じやり取りを2回してしまう。
「し、しかしハルから渡された“資料”には確かに彼等の存在がはっきりと書かれていたぞ!?」
「……ハル、オマエ」
「ごめんなさい、ごめんなさい……まさかあんな短い時間で全部読破するだなんて思わなくて! 日本語もいつの間にかマスターしてましたし!」
ミナトにジト目で睨まれたハルが、顔を抑えて泣いた。
その様子を見て、流石にアスヴェルも事態を理解していく。
「本当に――いないのか?」
「ああ」
しっかりとミナトは頷いた。
「光の巨人、いないの?」
「ああ」
「ミュータント、いないの?」
「ああ」
「超能力者、いないの?」
「ああ」
「忍者も、特殊部隊も?」
「その辺は怪しいけど、オマエが想像してるようなのは多分いない」
「……改造人間くらいは、いるよな?」
「この流れでどうしてソコだけいると思えるんだ!?」
「あああああああ――!」
アスヴェルは膝から崩れ落ちた。
「そんな――そんな――!?
で、ではどうやって宇宙や異次元から迫る侵略者に対抗しているというんだ……?」
「いねぇんだよ、宇宙人も異次元人も!! いつまでファンタジー脳してやがる!! 現実世界に戻ってこい!!」
少女が無理やり立ち上がらせようとするが、残酷な現実に打ちのめされた勇者は未だ足に力が入らなかった。
――と、そこへ。
「あの、湊音?」
申し訳なさそうに魔王が割って入ってくる。
「どうした親父?」
「凄く勢い込んでいるところ大っ変申し訳ないんだけど――――いるんだ」
「は?」
「いるんだ――宇宙人」
「へ?」
テトラはごほん、と咳ばらいをしてから。
「“オーバーロード”……奴は西暦1999年に宇宙の彼方より飛来し、そのオーバーテクノロジーをもってして瞬く間にこの星を支配した。
つまりは地球外生命体――宇宙人なんだよ!」
「…………はい?」
呆けた顔で、ミナト。
逆にアスヴェルはその言葉を力を取り戻し、
「なんだ、いるんじゃないか、宇宙人」
「ふざけんなよ糞親父ぃいいいいっ!!!」
同時に、少女が怒りをぶちまける。
「な、なんで僕が怒られるんだ!?」
「当たり前だろ!? なんだよ宇宙人って!! オレ、そんなこと一つも聞いてねぇぞ!!?」
「いやその、余りに突拍子もない内容だから信じて貰えないかと思って……」
「ああ信じてやらねぇよ信じられねぇよ!! え、マジで!? 本気で言ってんのか、宇宙人だって!!」
「本当に本当なんだ! 色々情報統制されて知っている者はもうほとんどいないけれども、紛れもない事実なんだよ!」
「えーーー!?」
頭を抱えるミナト。そんな彼女に、ハルがやんわりと話しかける。
「まあまあ。ミナトさん、落ち着いて事態を受け止めましょう」
「ハルは大丈夫なのか!? ついてこれてんのか、この非現実的な状況に!?」
「はい――なんといいますか、勇者と魔王の段階で大概じゃないですか」
「…………それもそっか」
どうやら納得したようだ。その会話にやや不条理なものを感じないでも無いが。
「と、とにかく、だ」
気を取り直し、アスヴェルは口を開く。
「“オーバーロード”だか宇宙人だか知らないが、私の前に立ちふさがるなら打ち砕くまでだ。今までもそうしてきた、これからもそれは変わらない。
そんな訳なんで魔王、早速私を現実の世界へ戻してくれ」
「んん?」
「いや、『んん?』じゃなくて。
お前の転移魔法の効果で私はゲーム世界に紛れ込んでしまったんだろう? 幾ら私でも、ここに居たんじゃ現実世界に干渉できん。“オーバーロード”を倒すとか以前の問題だ。早く元に戻してくれないか」
「んー、あー、そうね」
魔王は明後日の方を数秒眺めてから、改まった顔で
「ここで君の現状を説明しよう!」
「どうしたんだ急に?」
「僕は大規模な転送魔法を準備し、君と共に異世界へ旅立とうとした。だがそんな魔法の発動なんてこれまで前例が無く、魔王たる僕をもってしても試行錯誤を重ねに重ねて術式を構築した訳だ」
「ふむ」
「前代未聞な大魔法の起動。そこに手違いが発生したとして、誰が僕を責められよう?」
「うん?」
雲行きが怪しくなった。
「本来であれば時・場所同じくこの世界に転移される手筈だった。だが知っての通り、君と僕とでは転移された時期からして20年も違う。これはつまりまあなんというかその“不具合”が出てしまったに他ならない訳で」
「お、おう?」
「やはり出力が問題だったんじゃないかと思うんだ。転移の時に起きた爆発に、魔王の身体は耐えられたが人間である君の身体は耐えられなかったのではなかろうかと」
「……つまり?」
物凄く嫌な予感が体中を駆け巡っていたが、アスヴェルは先を促す。
魔王は気持ち悪い位にっこりと笑顔を浮かべると、
「無くなっちゃった♪」
「え?」
「無いの、君の身体」
「え?」
「あの爆発でね、なんか――消滅しちゃったみたいで」
「え?」
理解が追い付かない。
「し、しかしだね。代わりにキミは実体が無いままゲームの世界にその存在を確立できるようになったんだ。これは僕の大魔法と“オーバーロード”の技術が奇跡的に噛み合った結果なんだと思う。つまり今の君は情報生命体と呼んでいい存在に――人を超え、より高次の存在に昇格した訳さ!
――僕に、感謝してくれてもいいんだよ?」
「…………」
その言葉をきっかけに。
アスヴェルは、保留にしていた制裁を実行することにした。
「アスヴェルが暴れ出したぞーっ!!」
「全員退避っ!! 全員退避ー!!」
「ああー、魔王さんが吹っ飛ばされましたぁっ!!?」
こうして勇者と魔王の邂逅は、ぐだぐだを極めだしたのだった……!!
「……うん。お父さん達、ずっとその話をしていたんだけどね?」
魔王の入念な再説明が功をなし、ミナトはようやく納得してくれた。
「アスヴェルって、本当にDivine CradleのNPCじゃなかったのか!」
「あー、その辺りから説明が必要だったのかー」
テスラはコメカミを抑えた。思いの外、初歩の初歩でミナトの理解は躓いていたようだ。
「オレの頭の問題じゃねぇだろ!? オマエら、色々段階すっとばして話し過ぎなんだよ!! オレにとっちゃ、親父が魔王って段階で驚愕の事実だっつーのに!!」
「あ、あれ、湊音? 僕が魔王って話、何度もしてたよね? なんでそんな認識なんだい?」
「そんなん、親父疲れてんのかなぁー、て思ってたに決まってんだろ。男手一つでオレ育ててたし、レジスタンスの活動もしてたから」
「ずっと憐れまれていただけだったのぉ!?」
親子関係にヒビが入った。だが少女は止まらない。
「そもそも、アスヴェルはどうして親父が魔王だって知ってたんだ! それがあったからオマエらがドッキリ企んでると勘違いしたんだぞ、オレは!」
「いや、そこはそれ程大したネタばらしでも無いのだが」
矛先がこっちに向いた。
「単純な話だ。他の人々が――ミナトやハルも含めて――私をゲームのキャラとして扱っていたというのに、サイゴウだけは最初から私を“人間”として扱っていた。食事や寝床の提供をこちらが頼んだ訳でも無いのにしてくれたからな。それに、ただのゲームキャラに過ぎない筈の私を信頼し、自分達の命を懸けた強襲作戦へ要員として参加させてくれた。これはもう彼が“こちらの事情”を把握しているのだと考える他ない。だがどうやってそれを知ったのか、と考えあぐねていると、実はレジスタンスの“リーダー”は別に居て、その”リーダー”からサイゴウは指示を貰っていたと聞いた。
――そこでピンと来た訳だ」
「どこが単純なんだよ」
「基本的に頭いいんですよね、アスヴェルさんって」
ミナトとハルから賛辞(?)が飛ぶ。良きかな良きかな。
「もっと簡単なところで言えば、クラン名の“エルケーニッヒ”とは魔王という意味だろう?」
「あ、それは分かりやすい」
「ですね――ってちょっと待って下さい。エルケーニッヒってドイツ語ですよね? そんな名詞までDivine Cradleの翻訳システムって働いてましたっけ?」
納得しかけたところで、ハルが疑問を呈す。
「ああ、そこは図書館で調べた」
「ドイツ語をですか?」
「いや、この世界の言語全部。日本語も含めて数か国分は既に覚えたぞ」
「……え」
黒髪の少女が絶句する。ミナトの方はわなわなと震え、
「露骨に頭良いですアピールしてきやがったな……!」
「ファンタジー世界に荷電粒子砲持ち込むようなヤツだからねぇ。そりゃあ天才だとも」
肩を竦めて魔王が補足する。その態度は一体なんだ。
さらにヤツは言葉を続け、
「じゃあ、一からついでにもう一つ紹介させて貰おうかな」
「む、なんだ?」
「僕の名前だよ。こっちの世界での名前さ。まさか、そのまま魔王を名乗っているとは思っていないだろうね?」
「……いや、そんな訳ないだろう、うん」
少しだけ思っていた。
「僕はこの東京で四辻旺真で通っている。まあ、今更君に呼称を変えろとは言わないが、覚えておいてくれ」
「なるほどそうか」
となると、ミナトの本名は四辻湊音ということになる。要チェック。
もっとも――もうすぐ、ミナト・ウィンシュタットになる訳だが。
「さて、一息ついたところで続きといこう。“敵”についてだ」
「“敵”、か」
この東京という街を支配し、人々を無機質に管理した上で“ゲーム”という悪趣味な催しを企てる存在。
「改めて教えよう。“オーバーロード”。それこそがこの街の支配者の名だ」
「上帝か。なかなか御大層な名前を名乗る輩だ。だがまあ、私の勝ちは揺るがない」
「い、いきなり凄い自信だね……既に勝算が見えていると?」
アスヴェルの態度に、魔王は戸惑っているようだ。
まったく白々しい――と、アスヴェルは嘆息を一つ。
「無論だとも。“オーバーロード”とやらが如何なる存在か分からんが――“彼等”の協力が得られればどんな相手だろうと打ち勝てるだろう」
「“彼等”!? 援軍に心当たりが!?」
「そうだ。昨日は突発的な作戦だったせいで間に合わなかったようだが、この街を解放するための戦いならば必ずや“彼等”は駆けつけてくれる筈だ」
「そ、そんな連中が、いったどこに!?」
「おいおい。いつまでとぼけているつもりだ?」
やれやれと頭を振ってから
「いるんだろう? この世界には――“ヒーロー”と呼ばれる人々が!」
「「「「え」」」」
アスヴェル以外の全員が一斉に同じ顔をした。
それに構わず、アスヴェルは語り続ける。
「平和を守るために結成された様々な特殊戦隊、身体が変異し超自然的力を宿したミュータント、鋼鉄の意思で悪に抗う戦士――ふっふっふ、皆頼もしい奴らだ」
このような者達と共に戦える喜びに、ついつい顔が綻んでしまう。
「特にこの光の巨人は素晴らしい! 本来はなんの縁も無い人々のために自らの命すら投げ出して戦うその善性――私と並び立つに相応しい存在だ!!」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
そこで、自分以外が皆沈黙していることにようやく気付いた。
「どうした? 全員黙り込んで」
「……いねぇよ」
ぼそっと、ミナトが零した。彼女はさらに繰り返す。
「いねぇんだよ」
「え?」
「そんな連中、いねぇんだよ!!」
「え?」
思わず、同じやり取りを2回してしまう。
「し、しかしハルから渡された“資料”には確かに彼等の存在がはっきりと書かれていたぞ!?」
「……ハル、オマエ」
「ごめんなさい、ごめんなさい……まさかあんな短い時間で全部読破するだなんて思わなくて! 日本語もいつの間にかマスターしてましたし!」
ミナトにジト目で睨まれたハルが、顔を抑えて泣いた。
その様子を見て、流石にアスヴェルも事態を理解していく。
「本当に――いないのか?」
「ああ」
しっかりとミナトは頷いた。
「光の巨人、いないの?」
「ああ」
「ミュータント、いないの?」
「ああ」
「超能力者、いないの?」
「ああ」
「忍者も、特殊部隊も?」
「その辺は怪しいけど、オマエが想像してるようなのは多分いない」
「……改造人間くらいは、いるよな?」
「この流れでどうしてソコだけいると思えるんだ!?」
「あああああああ――!」
アスヴェルは膝から崩れ落ちた。
「そんな――そんな――!?
で、ではどうやって宇宙や異次元から迫る侵略者に対抗しているというんだ……?」
「いねぇんだよ、宇宙人も異次元人も!! いつまでファンタジー脳してやがる!! 現実世界に戻ってこい!!」
少女が無理やり立ち上がらせようとするが、残酷な現実に打ちのめされた勇者は未だ足に力が入らなかった。
――と、そこへ。
「あの、湊音?」
申し訳なさそうに魔王が割って入ってくる。
「どうした親父?」
「凄く勢い込んでいるところ大っ変申し訳ないんだけど――――いるんだ」
「は?」
「いるんだ――宇宙人」
「へ?」
テトラはごほん、と咳ばらいをしてから。
「“オーバーロード”……奴は西暦1999年に宇宙の彼方より飛来し、そのオーバーテクノロジーをもってして瞬く間にこの星を支配した。
つまりは地球外生命体――宇宙人なんだよ!」
「…………はい?」
呆けた顔で、ミナト。
逆にアスヴェルはその言葉を力を取り戻し、
「なんだ、いるんじゃないか、宇宙人」
「ふざけんなよ糞親父ぃいいいいっ!!!」
同時に、少女が怒りをぶちまける。
「な、なんで僕が怒られるんだ!?」
「当たり前だろ!? なんだよ宇宙人って!! オレ、そんなこと一つも聞いてねぇぞ!!?」
「いやその、余りに突拍子もない内容だから信じて貰えないかと思って……」
「ああ信じてやらねぇよ信じられねぇよ!! え、マジで!? 本気で言ってんのか、宇宙人だって!!」
「本当に本当なんだ! 色々情報統制されて知っている者はもうほとんどいないけれども、紛れもない事実なんだよ!」
「えーーー!?」
頭を抱えるミナト。そんな彼女に、ハルがやんわりと話しかける。
「まあまあ。ミナトさん、落ち着いて事態を受け止めましょう」
「ハルは大丈夫なのか!? ついてこれてんのか、この非現実的な状況に!?」
「はい――なんといいますか、勇者と魔王の段階で大概じゃないですか」
「…………それもそっか」
どうやら納得したようだ。その会話にやや不条理なものを感じないでも無いが。
「と、とにかく、だ」
気を取り直し、アスヴェルは口を開く。
「“オーバーロード”だか宇宙人だか知らないが、私の前に立ちふさがるなら打ち砕くまでだ。今までもそうしてきた、これからもそれは変わらない。
そんな訳なんで魔王、早速私を現実の世界へ戻してくれ」
「んん?」
「いや、『んん?』じゃなくて。
お前の転移魔法の効果で私はゲーム世界に紛れ込んでしまったんだろう? 幾ら私でも、ここに居たんじゃ現実世界に干渉できん。“オーバーロード”を倒すとか以前の問題だ。早く元に戻してくれないか」
「んー、あー、そうね」
魔王は明後日の方を数秒眺めてから、改まった顔で
「ここで君の現状を説明しよう!」
「どうしたんだ急に?」
「僕は大規模な転送魔法を準備し、君と共に異世界へ旅立とうとした。だがそんな魔法の発動なんてこれまで前例が無く、魔王たる僕をもってしても試行錯誤を重ねに重ねて術式を構築した訳だ」
「ふむ」
「前代未聞な大魔法の起動。そこに手違いが発生したとして、誰が僕を責められよう?」
「うん?」
雲行きが怪しくなった。
「本来であれば時・場所同じくこの世界に転移される手筈だった。だが知っての通り、君と僕とでは転移された時期からして20年も違う。これはつまりまあなんというかその“不具合”が出てしまったに他ならない訳で」
「お、おう?」
「やはり出力が問題だったんじゃないかと思うんだ。転移の時に起きた爆発に、魔王の身体は耐えられたが人間である君の身体は耐えられなかったのではなかろうかと」
「……つまり?」
物凄く嫌な予感が体中を駆け巡っていたが、アスヴェルは先を促す。
魔王は気持ち悪い位にっこりと笑顔を浮かべると、
「無くなっちゃった♪」
「え?」
「無いの、君の身体」
「え?」
「あの爆発でね、なんか――消滅しちゃったみたいで」
「え?」
理解が追い付かない。
「し、しかしだね。代わりにキミは実体が無いままゲームの世界にその存在を確立できるようになったんだ。これは僕の大魔法と“オーバーロード”の技術が奇跡的に噛み合った結果なんだと思う。つまり今の君は情報生命体と呼んでいい存在に――人を超え、より高次の存在に昇格した訳さ!
――僕に、感謝してくれてもいいんだよ?」
「…………」
その言葉をきっかけに。
アスヴェルは、保留にしていた制裁を実行することにした。
「アスヴェルが暴れ出したぞーっ!!」
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