腹ぺこお嬢様の飯使い ~隣の部屋のお嬢様にご飯を振舞ったら懐かれた件~

味のないお茶

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第2章

第十三話 ~サプライズアクセサリーを美凪に渡したら、泣くほど喜んでくれた件~

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 第十三話



「これはもう見ただけでわかります!!絶対に美味しいと思いますね!!」
「あはは。そうだな。腹も減ったし食べようか」




 一波乱あったお風呂から出た俺と美凪。

 先に出た俺は着替えを済ませてから美凪に渡す『サプライズアクセサリー』の準備を進めていた。

 カバンから取り出して、アクセサリーの箱は美凪から見えないように棚の上に置いておいた。

 そして、買ってきた福神漬けとらっきょうを小鉢に移したところで美凪が風呂から出てきた。

 昨日から俺の特権となった美凪の髪にドライヤーを当てること。俺はたっぷりと幸せな時間を堪能した。

『えへへ。ありがとうございます、隣人さん』

 栗色の髪の毛を指先で触りながら、美凪ははにかみながら笑う。

『まぁ、俺もお前の髪の毛をこうして触れるのは幸せだ。ウィンウィンって奴だろ?』

 そんな会話を経て、俺たちは居間へと戻ってきた。

 俺がカレーを温め直している間に、美凪にはサラダの盛り付けをお願いしていた。

 そして、それが終わり、美凪がご飯をほぐしたところでカレーがいい感じになった。

『わぁ!!とても良い匂いです!!もうお腹がやばいです!!』
『おかわりなら好きなだけ出来るからな。たくさん食え』

 俺が笑顔でそう言うと、美凪は少しだけ笑いながら

『お腹いっぱいになった所で毒ガス訓練とか無いですよね?』

 なんて言ってきたので、

『そんなもんは無いから安心して食えよ』

 と答えておいた。


 そして、俺と美凪はテーブルにカレーライスとサラダ。付け合せの福神漬けとらっきょうを用意した。
 今日は辛いものを食べるので麦茶とコップを用意してある。

「それじゃあ。いただきます」
「いただきまーす!!」

 俺と美凪はそう言ってカレーライスを一口食べる。

「うん。完璧だな。すごく美味しい」

 俺がそう言うと少しだけ違和感を覚えた。

 ……ん?いつもなら真っ先に『美味しいです!!』と言う美凪の声が聞こえなかった。

 俺がふと目の前の彼女に視線を向けると、

「…………ぅぅ」

 美凪は少しだけ涙ぐんでいた。

「ど、どうした美凪!?か、辛かったか?」

 中辛のルーを使ったけど、もしかしたら辛かったか!?

 なんて思ったけど、どうやら違っていた。

「……違います……美味しくて……感動して……涙が出てきました……」
「……美凪」

「……このカレーの下ごしらえは私がしたんだ。そう思うと、その想いもひとしおです」
「そうだな。これはもはや『美凪スペシャルカレー』と言っても過言では無いな」

 俺が笑いながらそう言うと、

「えへへ。隣人さん。私に家事を教えてくれてありがとうございます」

 そう言って、美凪はふわりと微笑んだ。

 その表情は、本当に魅力的で俺の心臓は大きく跳ね上がった。

「まぁ……お前が家事を覚えれば俺も楽ができるからな」

 なんて言いながら、俺は赤くなってるであろう顔を隠しながらカレーを食べていった。

「もぅ……そういうことにしておいてあげますよ」



 そんな話をしながら、俺と美凪は夕飯を食べ終わった。
 美凪はカレーを一回おかわりしていた。
 俺もつられておかわりをしてしまった。

「……もぅ、食えないな。腹いっぱいだ」
「そ、そうですね。ちょっと食べ過ぎちゃいました」

 麦茶を飲みながら、俺と美凪はパンパンになったお腹を少しさすっていた。

「明日はどうしますか?」

 美凪の言葉に、俺は考えていたことを話す。

「ちょっと見たい映画があるんだよな」
「へぇ、そうなんですね。どんな映画なんですか?」

「アニメ映画なんだけどな。『カラスの扉』って奴だな」
「あ、それ私も気になってたんですよ。それじゃあ明日は映画館へ行きましょう」

 美凪から賛成を貰えた俺は、少しだけ息を吐いて気持ちを落ち着ける。

 ふぅ……よし。渡すなら今だな。

 俺は椅子から立ち上がり、棚の方へ歩く。

「おや?どうしたんですか、隣人さん」
「いや。お前に渡したいものがあってな」

 俺はそう言うと、棚の上に隠しておいた『サプライズアクセサリー』の箱を持ってテーブルへと戻る。

「今日のデートの記念で買ったものだ。良かったら明日のデートの時に着けてきて欲しいかな」

 俺がそう言って箱を美凪の前に置く。

「い、いつ買ったんですか……」

 驚いた表情で箱を見てる美凪に、俺は笑いながら答える。

「お前が試着室で着替えをしてる時だよ。何を買うかは予め決めてたからな」
「す、スマート過ぎませんか……っ!!」

 美凪は顔を真っ赤にしながら、俺にそう言ってきた。

「まぁ、俺も男だからな。カッコつけたい時もあるよ」

 少しだけ苦笑いをしながら、俺はそう言葉を返した。

「受け取ってくれないか、美凪」
「……ありがとうございます。本当に……私ばかりが貴方から貰ってばかりで申し訳ないです……」

 美凪は箱を胸に抱きしめながら、少しだけ涙ぐんでそう言った。

「何言ってんだよ。俺の方こそお前からはたくさん貰ってる。こんなんで返せてるとは思えないくらいにはな」


 もぅ……カッコよすぎですよ……バカ……


 美凪が小さく呟いたその言葉は、聞こえなかったことにしておいた。


「何が入ってるかは部屋で確認してくれ。目の前で開けられるのは少しだけ恥ずかしいからな」
「あはは。そうですね。では、この後の楽しみにしておきます」

 俺は美凪からその言葉を聞いた後に、椅子から立ち上がる。

「ちょっと食後の運動がてら外を歩いてくるよ」
「あ、それでしたら私もお供しますよ!!」

 美凪はそう言うと俺と同じように椅子から立ち上がった。

「そうか。じゃあ一緒に夜の散歩を楽しもうか」
「はい!!」




 玄関を出て、俺と美凪は十分程手を繋いで外を歩いたあと家に戻って来た。

 そして、洗面所で手洗いとうがいをしたあと、歯を磨いてから自室へと戻り、寝る支度をして行った。


「それでは、おやすみなさい。隣人さん」
「あぁ、おやすみ。美凪」

 部屋の前でそう言って、俺と美凪は自分の部屋の扉を開ける。

「今日はとても楽しかったです。本当にありがとうございます」
「俺も楽しかったよ。明日もよろしくな」
「はい!!こちらこそ!!」

 美凪の笑顔を見て、俺は親父の自室へと入った。

 部屋の中を進み、ベッドに入り布団を被る。

 枕元のリモコンを操作して、部屋の明かりをオレンジ色にする。

「俺が渡したアクセサリーをあそこまで喜んでくれるなら、渡したかいがあったってもんだな……」

 本当に。あいつの為ならなんでもしてやりたいと思ってしまう。
 あはは……やばいな。本当に俺は美凪が好きみたいだ。

 こんな一面が自分に合ったとはな。初めて知ったな。

「おやすみ、美凪。また明日な」

 俺はそう呟いて、目を閉じた。
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