Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~

味のないお茶

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第1章

第十一話 ~リーベルト国王から呼び出しを受けた本当の理由を聞いて驚きを隠せなかった~

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 第十一話





「お初にお目にかかりますリーベルト国王。ベルフォード・ラドクリフの妻のツキと申します。以後よろしくお願いします」


 着物姿の美しい女性へと姿を変えたツキは、リーベルト国王に礼をしてからそう自己紹介をした。

「……ベルフォードよ。私に理解出来るように説明をしてもらえるか?」
「リーベルト国王。私も突然の事で驚きを隠せませんでしたが、こちらのツキは私の愛刀の月光が人の身を得た姿でございます」

 そう話を始め、俺がこれまでの経緯を説明すると、国王は軽く額に手を当てて思案するような姿勢を取った。

「月光はベルフォードが若い頃にダンジョンの奥地で出会った伝説級武器だったな。意志を持つ刀だと言うのは君から聞いていた。なるほど、君と共に生きてきた刀が人の身を得た。隣国では稀にあるとの話を聞いていたが、よもやこの国でも目にするとはな……」

 隣国ではツキのようなことがあったんだな。
 経験者に話を聞いてみたいとは思ってしまうな。

「彼女との会話の中で『人の身を得たら結婚する』と約束を交わしていました。ツキは私のその言葉を信じて、この様な姿で現れてくれました。ですので私のもう一人の妻はこのツキです」
「ベルフォード。『もう一人の妻』と呼ばれるのは心外です!!私がベルフォードの『正妻』です。リーファは『側室』です。間違えないようにお願いします」
「ははは。ごめんな、ツキ」

 ツンと視線を上に向けながら、ツキが不満を露わにする。
 ははは。本当に彼女はヤキモチ妬きだな。

「なるほど。彼女はベルフォードと結婚する予定なのだな。そうするとツキには『国籍』が必要になるな」

 そうだ。武器としての登録はしているが、人としての登録はツキはしていない。
 少し面倒な話になりそうなところだな……

「ならばツキの国籍に関してはこちらで手筈を整えておこう。Sランクとして王国に貢献してきたベルフォードの為だ。この程度のことはさせて欲しい」
「多大なるご好意ありがとうございます」

 俺がそう言って頭を下げると、リーベルト国王は少しだけ笑いながら言葉を放つ。

「この程度の事ならなんの手間でもない。あと、ベルフォードをここに呼んだのはもう一つの理由がある」
「もう一つの理由ですか?お話を伺います」

 俺がそう言うと、国王は話を続ける。

「私たちの娘。スフィアのことについてだ。ベルフォードは彼女のことをどう思ってる?」
「……質問の意図がよくわかりませんが。そうですね。次期国王としての自覚が少しばかり足りないところがあるかと思いますが、とても好い国王になるとは思ってます」

 俺がそう答えると、リーベルト国王は少しだけ苦笑いを浮かべる。

「自覚が足りないのはこちらとしても理解してるところだよ。なかなか難しいところだな」
「ですが、彼女は良く城下町を歩いて回ってました。それによって住民との関係も非常に良いですからね。まぁ、もう少し年相応の『落ち着き』を持ってもらえればと思いますよ」

 俺がそう言葉を返すと、国王は笑いながら一つの提案をしてきた。

「娘が落ち着きを持つためには、落ち着いた人間が伴侶になれば良いと思っていてね」
「ははは。そうですね。リーベルト国王もご結婚されてから落ち着きましたからね」

 俺が冗談交じりにそう答えると、国王も笑いながらそれを受け止めてくれた。

「そうだな。サファイアには頭が上がらないな。ベルフォードも同じ未来が待ってると思った方が良いぞ?」
「ははは。女性の尻に敷かれるのは男の宿命では?」

 なんて話をしてると、今まで沈黙を貫いていたサファイア様がリーベルト国王に声を掛ける。

「あなた。話がそれてますよ?」
「あぁ、そうだった。済まない、ベルフォード。これが私からの本題なんだ」

 国王はそう言うと、俺に向かって言ってきた。

「ベルフォードよ。娘のスフィアと結婚するつもりは無いかな?」

 …………。

「ハーレムですか!!ベルフォード!!やっぱり貴方はハーレムを目指しているんですか!!??」

 リーベルト国王の言葉に、ツキが怒りを露にしながら俺の肩を揺すってきた。

「いや、そんな予定は無いし目指してもないから……」

 俺はそう言ってツキの両手を外したあと、国王に問掛ける。

「リーベルト国王。一体どんなつもりでそのようなことを言われましたか?そもそもスフィア王女の気持ちも考えてないかと思いますが?」

 若くて美しいスフィア王女だ。彼女だってこんなくたびれたおっさんが相手では嫌だろう。
 共に死線をくぐり抜けてきた経験。みたいなのが決め手になってるリーファやツキなら話は理解出来るけど。

「スフィアも君が相手なら喜んで受けると思っているがね。ベルフォードの言うように、彼女には落ち着いた人間が伴侶になればと思っていてね。Sランクの冒険者として活躍し、国民からの支持の厚い君なら反対する者も居ないからな」
「ははは。国王も冗談が上手ですね。こんな平民のおっさんが次期国王の伴侶になるなんて不可能も良いところかと」
「……スフィア王女のあの様子を見れば、好感度の高さは見てとれます……全く、ベルフォードは女たらしです……」

 ツキが不機嫌そうな表情でそんなことを呟いていた。

 お、女たらしではないと思いたい……

「私の妻のサファイアも平民からの出だからね。この国では身分というものを重要視してないのは君もわかっているだろう?まぁ、ベルフォードにまだ結婚する相手が居ないのならと思っていたが、まさかもう既に二人も居たとは驚いたな」
「ですが、あなた。ガルムでは重婚を認めてますからね。まだスフィアにもチャンスがありますよ?」
「サファイア様。私にはこれ以上妻を増やす予定は無いので……」

 本当に止めて欲しい。隣からの視線が本当に痛いんだから。
 下手したらもう二度とツキを鞘から抜けなくなるかも知れないから……

「ふふふ。人の感情はどうなるからわかりませんからね。
 スフィアには諦めないように話をしておきましょう」
「ははは……」

 サファイア様の瞳が少しだけ怪しげに光っていた。
 俺はその色に少しだけ恐怖を覚えてしまった。

 なんと言うか、肉食の魔物に睨まれているような気分だな。

 王族に対して失礼な思考だろうけど。

「さて、話はこのくらいだ。ベルフォードよ。二十年もの間、我が国に尽くしてくれてありがとう。その功績に感謝の意を評して、パレードを用意しているからそのつもりで」
「そうですか。個人的には遠慮したいところですが、最後の仕事と思って請け負います」

 俺はそう言って国王に礼をした。

「日程については後日伝えよう。では下がっていいぞ」
「はい。では失礼します」

 俺はもう一度国王に礼をしたあと、そう言って謁見の間を後にした。
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