完結)マサシのチョコレート

岩兎希 光 イワトキ ヒカル

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第1章 神童

あけみ2

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…今から二年ほど前のことである。あけみには特に人に自慢出来る得意なことがなく、どちらかと言えばおっちょこちょいで、何をしても平均以下で、失敗やドジばかりだった。
勉強や運動は勿論、図工や音楽、それに料理や、その他の家事手伝いなんかさせても上手く出来た例がなかったのだ。
 唯一、あけみの得意なことと言えば、折り紙くらいだった。けれど、そんなものが得意だからといってもなんも役にもたたない。
そして不運なことにも、クラスの学級会の時間に、宿題として出された
『自分の得意な事』
を題材とした作文の発表会が行われたことがあった。
あけみは自分の得意なことをあれこれ考えてみたが、結局何も浮かんでこなかった為、作文を発表することが出来ずに、みんなの前で得意なことがないのだと言わなければならない破目になった。
すると、先生に。
「それは宿題を忘れた言い訳でしょ!」
と言われてしまい、あけみにとってあまりにも屈辱的な思いをさせられたのである。
そんな時、マサシが前に出て発表したのが。
『チョコ命』
と言う題の作文だった。
『チョコ命』
            田崎 マサシ
僕はチョコレートが大好きです。理由は色々あるけど、一つを上げてみると、チョコレートの原料、カカオに含まれているポリフェノールが癌の予防に良いからです。
他にも血液の流れも良くなるので、冷え症にも良いのです。
だから女の子にも大変お勧め!ただし、食べ過ぎて太らない様に!
また、ストレスを解消する働きもあるので、僕みたいに多忙な毎日を過ごしている人にも最適なのです。
優れた栄養食品でありながら、保存食にもなるのですから、チョコを作ってぼろ儲けしている企業の皆様に感謝したいです。
まぁ、チョコレートの凄さをみんなに知ってもらったところで、僕が一番チョコレートを好きになったあるエピソードをお話します。
これはだいぶん前の話になるのですが、僕には妹がいて、その妹は、一度癌の手術をしたことがあります。幸い手術も成功して、今はとても元気なのですが、やぶ医者には近い将来また再発する可能性があると言われ、また、僕の家族が信頼している医者には絶対に再発するので、この幸せの壺を五百万で買いませんか?と言われています。
しかも悲しいことに、その時たまたまお金がなくて壺を買うことさえ出来なかったので、妹は毎日病気の再発に怯えながら暮らしてきていました。
どうやら僕の家族は癌になりやすい体質らしく、壺無しでは健康に暮らしていけないみたいです。
そして、僕の家族はみんな、すっかが途方にくれていました。そんな時、ポリフェノールのことを知ったのです。僕と妹は肩を叩きあいながら、喜びました。そして誓い合ったのです。ポリフェノールがたくさん含まれているチョコレートを山ほど摂取して、お互いに癌にならないようにしようと…。
最近では、よく妹と新製品のチョコの話とか、どっちの買ってきたチョコが美味しいのか?等の話で盛り上がっています。だから、今僕の得意なことを一つあげるなら、それは、色々なチョコレートをたくさん、美味しく食べて、癌にならないことです。」
発表を終えると、たちまちクラス中が大爆笑だった。けれど、マサシには拍手喝采に聞こえた。また、あけみはあまりにもストレートで、正直な作文に感心したのだった。
そして放課後、マサシが一人で日直をしていた時、あけみが
「今日の作文面白かったわよ。」
と言うと
「ふん!どうせなら感動したと言ってくれよ!僕と妹にとってあの話は命にかかわったことなんやで!」
とマサシはあけみに突っかかったのである。
「なによ!せっかく誉めてあげたのに!」
「別に誉めてくれなんて頼んでない!そっちこそ今日の作文なんで何にも書かんかってん!?」
マサシのその質問にあけみは一瞬たじろいだ。そして、言い訳をする様に、言い返した。
「だ、だって私!得意なことなんてないもん…。」
するとマサシは不思議そうな顔をして
「そんなことないやん。この前授業中折り紙してるのん見たで。」
「お、折り紙なんて恥ずかしいこと書けるわけないでしょ!」
すると
「何言うてんねん!あれはかなり芸術的に折れてたで。あんな難しいカブトムシやら薔薇やらネッシーの折り紙なんてなかなか作られへん。」
「あんなの作れたからって何の役にも立たないじゃない!」
「阿呆!あんなんてよく知らへんけど作ってる間が楽しいんちゃうん?それに完成した時、難しいのが綺麗に出来てたらそれこそむっちゃいいやん!」
「でも…。」
「他の人からしたらなんでもないことかもしれへんけど、一生懸命にやったことって無駄じゃないで!俺もチョコ食ってるだけの男やけど、それで妹とも今まで以上に仲良くなったし、色々教えられたことだってあるんやで…。」
…それ以来あけみは、くだらないと思うことも一生懸命取り組むことにしたのである。
すると、自分でもビックリするくらいに毎日が楽しくなってきたのである。
勉強して誉められることが楽しくなり、出来なかった運動も少しずつ上達した。
中でも特に嬉しかったのが、折り紙の新しい作り方のアイデアの募集(言わばコンクールの様なもの)に出展して、見事最優秀作品に選ばれたのだった。その作品は折り紙の作り方の本の中に、ちゃんと名前入りで掲載され、すぐにマサシにも見せたのである。
するとマサシも
「見事なガンダムやなぁ!」
と一緒に喜んでくれ、それ以来二人は仲良くなったのだった。
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