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Gifted Beginning
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四月。
桜も散り始め、春の陽気も落ち着いてきた。
そんなのどかな天気の中、国立空ノ宮学園入学式が執り行われた。
さすが国立というだけあって、会場となったイベントホールと呼ばれる施設の大きさは目を見張るものがあるし、来賓の客人たちもVIPぞろいだ。内閣の官僚の姿もちらほら見える。もっとも、僕は昨日から興奮しっぱなしで入学式どころではなかったが。
ああ、本当にこの学園で学べるんだ。
そう思うと胸の高まりが抑えられなかったのだ。
にしても…
「やっぱ目立つよなあ、この制服,,,」
もともと各国立魔法学園にはそれぞれシンボルたる紋章と色が設定されている。空ノ宮学園の紋章は鷹、色は白だ。当然、制服もそれに合わせた色彩が施されている。
でも。
「おい、なんか黒いのがいるぞ」
「なにあれ。特進科とかそういうやつ?」
他の科の生徒からは僕らはとても目立っていた。無理もない。
僕の所属する特別科「gifted」制服は作りこそ同じものの色は漆黒ともいえるほど濃い黒色なのだ。しかも今年から新設されたクラスなだけあって人数は7人と少なく、入学式では珍しいものを見るような目で見られていた。その視線を感じているのはどうやら僕だけではないらしく、
「ねぇ、なんか私たち変な目で見られてない?」
そう言って僕に話しかけて来たのは僕の隣に座っていた赤毛の女の子だ。背丈は僕と同じくらい。肩口で切りそろえた髪を時々いじりながら、彼女はどこか緊張した面持ちである。
「うん…まぁ、目立つ色をしているからね…」
「でも特別科なんてきいてないよぉ…はぁ~緊張する…」
どうやら僕以外の面々は自分が特別科に入ることを直前になって知ったらしい。恐らく「gifted」という呼称も知らないだろう。まぁかく言う俺も制服と学生証が届いたのは一昨日の晩だし、無理もないか。斜め前にいる銀髪の男子も、先程からキョロキョロと当たりを見渡しているし、僕の左隣の女子に至っては…
「ひっく、ひっく…帰りたいよぉ…」
泣いていた。長い前髪で顔はよく見えないが、下に水たまりが出来ているので、泣いているのだろう。たぶん。
そして、式も終わりに差し掛かり、この後の自己紹介何を話そうかなぁなんて考えていた時、壇上に見覚えのある人物が立っているのが見えた。
「やあ諸君。入学おめでとう。まずは祝福しておくよ。」
そう高飛車な語気で話を始めた女性は、まさしく僕が学園長室で出会った人であり、僕がここに入学するきっかけを貰った人でもある人物だった。彼女は以前僕が話した時と全く同じ格好で現れ、そのまま壇上で話し始めた。前から思っていたが、多分この人は変わっている。間違いない。
「私は神山依織かみやま いおり。この学園に客員研究員兼教員としてこの度赴任になった者だ。突然だが、君たちに伝えなければならないことがある。特別科についてだ。」
全校生徒が一斉にこちらを向いた。ひぃぃ。と隣の子がわめいた。他の4人も、心なしか背筋が伸びているように見えた。
「今回の入学試験受験者の中から、各学校の推薦者も含めて特別な才能を持っていると思われる生徒を中心に私主導で集めさせてもらった。他科の者たちと扱いは変わらないが、授業のカリキュラムは他科とは異なる独自のもので行う。そしてーー
このクラスの担任は、私が勤めさせてもらう。gifted諸君、よろしく頼む。」
そういうと女性、もとい神山さんはそそくさと壇上を降り、そのまま式は終わった。あの人が担任となるのか。それは知らなかった。しかし、神山さんの話が終わると口々に、
「gifted?それって特進みたいなもんじゃないのか?」
「選ばれた存在ってことは、さぞかし強力な魔法使いなんだろうなぁ…」
全校生徒の値踏みをするかのような視線を浴びながら、入学式は終わった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
教室に向かいながら、僕は全学園の生徒から向けられた視線を、忘れられないでいた。
他の面々も先ほどの出来事を忘れられないらしく、
「ねーねー聞いた!?giftedだってよ!私たちって、もしかしてすごいのかな!」
「なーんか仰々しい名前っすよねー。そんなに俺たちって物珍しい奴らなんすか?」
教室に向かう道中隣にいた赤毛の子と銀髪の男の会話が聞こえた。銀髪の方は背丈は僕より少し高い。飄々とした話し方や態度が印象的だ。
先程泣いていた女の子は消えていた。後で聞いた話だと緊張しすぎて脱走してしまって、現在捜索中らしい。さもありなんという感じだ。
「やはり妙ですよね…いくら今年からの新体制といえど、制服も棟も、ひいては宿舎まで別だなんて…特に制服なんて、白と黒で分けるなど何か意味があるとしか…」
「そうかな?ボクは結構すきだけどな~この制服!だって元々可愛いデザインだし、なによりどんだけ派手に汚してもバレにくいし!」
物腰柔らかい言葉遣いをしている彼女はどうやら外国籍のようだ。髪は絵に書いたようなブロンド、エメラルドの瞳、長いまつ毛と、外国人モデルさながらなプロポージョンをしている。下を向いても靴が見えないであろうたわわな胸もまた、彼女の魅力を引き立てている。
もう1人はThe平均身長の僕から見ても小柄な女の子だ。
一見すると中学生とも捉えられかねない黒髪ショートヘアの童顔で、とても元気が良い。さっきからぴょんぴょん跳ねながら金髪の女性の後ろを着いてきている。よく見ると髪の1部に白のメッシュが入っている。校則違反じゃないのだろうか。
あと1人は休みのようだ。神山さん曰く男らしい。詳しくは教えてくれなかったが、まぁじきににわかるだろう。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
教室に着くと、早速自己紹介を始めた。本来なら担任の神山さんが話のひとつでもするのが筋だろうが、黒板に雑多な文字で「自己紹介よろしく~」と書かれていた。本当によく分からない人だ。この先何かと気苦労が多そうである。
なんて1人で思考を巡らせているうちに自己紹介が始まった。最初はあの赤毛の女の子からだ。
「え、えっと…文月 薫(ふみつき かおる)です…!よ、よろしくお願いします…!」
そう言うと彼女は頭をさげ、その拍子に机に頭を強く打ち付けた。そしてその場で伸びてしまった。その場にいる4人は最初は呆気に取られていたのだが、すぐに教室は和やかな笑いに包まれた。6人とも入学式前に少し話したとはいえ、特別科という聞くからに仰々しい名前の科に入るに当たって、周りの生徒に対して少なからず警戒していた所はあったのだろう。だが、彼女のお陰で肩の力が抜けたようだ。その後の自己紹介はとても和やかな雰囲気の中で行われた。
次は銀髪の彼の番だ。
「初めましてー。えー。進藤 麻亜也(しんどう まあや)っす。どうぞよしなに。」
気だるげそうにそう言って戻って言った。だがクラスが嫌なわけではないようで、戻るとボクっ娘とだべっていた。ただ面倒くさがりなだけだろう。
次はそのボクっ娘だ。スキップで前に出ると体育祭の選手宣誓ばりの大声で
「はじめまして!ボクは五十寅 晴(いとら はる)!晴って呼んでくれると嬉しいな!得意魔法はー…まだ内緒!」
と、思わせぶりな事をいい、そそくさと戻ってしまった。でも、見る限り素直そうな子だし、仲良くなれそうだ。
次は外人モデル美女。
「皆さんはじめまして。藍桐 雅(あいきり みやび)と申します。皆様よろしくお願いします。」
そう言って深深と頭を下げた。まさか純日本人だとは…人を見た目で判断しちゃいけないとはこのことか。
そしていつの間にもどってきたのやら、先程まで緊張で泣き、挙句の果てに逃走した彼女である。
「ええええっと、み、みなさん、は、はじめ、、まして、、ぬ、沼神 優(ぬまかみ ゆう)と申します…ど、どうぞ、、よろしく、、」
泣いていた。緊張しているのか、はたまたお腹が痛いのか…。席に戻るなり、突っ伏して泣いてしまった。藍桐さんや五十寅さんが慰めてくれているが、泣き声は大きくなるばかりだ。やれやれ。
最後に、僕の番が来た。
「はじめまして。白導 調(はくどう しらべ)です。3年間よろしくお願いします!」
なんともない自己紹介。けど、これでいいのだ。自己紹介はシンプルが1番だし、何より僕には…
「自己紹介おわったかー?」
そう考えるまもなく、いつ来たのだろうか神山さんが教壇に立っていた。
「えー。ではこれにて今日は解散だ。皆には明日から宿舎で寝食を共にしてもらう。ま、仲良くな。というわけで明日は宿舎に荷物を入れしだい、魔力基礎能力測定を行うので、準備するように!」
ん?今僕がこの世の中でいちばん嫌いな単語が聞こえたような…?まぁ、聞き間違いだろう。
「魔力基礎能力測定かぁ。いまどのくらいまであがってるかなぁ?」
「んーまぁあんまかわってねぇっしょ。成長期俺もうおわったし。」
「まぁ。高校生であればまだまだ成長期真っ盛りじゃないですか。皆さんの記録がたのしみですわ…」
「んーーー!燃えてきた!今日は走るぞー!!」
「か、かえりたい…ううう…」
……どうやら、嘘ではないようだ。
本当に……どうしよう。
せっかく楽しいクラスになりそうだったのに…また、馬鹿にされるのだろうか…
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「たらいま~」
家に帰ると、誰もいなかった。どうやらまだ保護者説明会なるものが終わっていないらしい。ちなみに、僕には母親がいない。僕が生まれてすぐ、失踪してしまったそうだ。
僕は手洗いもそこそこに地下室におりた。
いくつもの網膜認証や指紋認証、果ては生体信号認証などの厳重なセキュリティを抜けたそこはーーー
そこは、広大な図書室、いや、図書館だった。
ここは白導家代々に伝わる場所で、魔法が使えない僕は幼い頃からずっとここで本を貪り読んでいたものだ。ここには魔法に関するありとあらゆる書物が残っている。
僕はある一冊の本を検索し、手元にだすと、荷造りがおわってがらんどうの自室に戻った。
この図書館には原則、魔法に関する本しか置かれていない。だが、その本にはある英雄のお話が記してあった。魔法の才能がないと蔑まれ、追い出され、ついには家畜同然の扱いを受ける主人公。でも、その間にも彼は諦めずに魔法の修行をし、力を付けようと努力した。そしてついに今までの疲労が溜まって倒れるという時、神は彼に力を与えた。その力はまさしく、万人を救う英雄そのものだった。彼の文字通り血のにじむような努力が、報われた瞬間だった。
他の人から見れば、こんなものはありふれた作り物の英雄譚に過ぎない。でも。僕にとってはこれが人生の聖書ともいうべき本だった。万事にまけない英雄に、おこがましくも僕の姿を重ねられるように、今まで努力してきたのだから。
「僕はやるよ。この学園で、僕は変わってみせる。」
僕はキャリーバックを空け、この本を最後に詰め込んだ。
いつでも初心を忘れないようにしたかったのだ。
明日からが、本当の始まりだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ああ。やっとだよ。調。
やっと
君に、会えるんだね。
今までずっと
君の中で、待っていたよ。
桜も散り始め、春の陽気も落ち着いてきた。
そんなのどかな天気の中、国立空ノ宮学園入学式が執り行われた。
さすが国立というだけあって、会場となったイベントホールと呼ばれる施設の大きさは目を見張るものがあるし、来賓の客人たちもVIPぞろいだ。内閣の官僚の姿もちらほら見える。もっとも、僕は昨日から興奮しっぱなしで入学式どころではなかったが。
ああ、本当にこの学園で学べるんだ。
そう思うと胸の高まりが抑えられなかったのだ。
にしても…
「やっぱ目立つよなあ、この制服,,,」
もともと各国立魔法学園にはそれぞれシンボルたる紋章と色が設定されている。空ノ宮学園の紋章は鷹、色は白だ。当然、制服もそれに合わせた色彩が施されている。
でも。
「おい、なんか黒いのがいるぞ」
「なにあれ。特進科とかそういうやつ?」
他の科の生徒からは僕らはとても目立っていた。無理もない。
僕の所属する特別科「gifted」制服は作りこそ同じものの色は漆黒ともいえるほど濃い黒色なのだ。しかも今年から新設されたクラスなだけあって人数は7人と少なく、入学式では珍しいものを見るような目で見られていた。その視線を感じているのはどうやら僕だけではないらしく、
「ねぇ、なんか私たち変な目で見られてない?」
そう言って僕に話しかけて来たのは僕の隣に座っていた赤毛の女の子だ。背丈は僕と同じくらい。肩口で切りそろえた髪を時々いじりながら、彼女はどこか緊張した面持ちである。
「うん…まぁ、目立つ色をしているからね…」
「でも特別科なんてきいてないよぉ…はぁ~緊張する…」
どうやら僕以外の面々は自分が特別科に入ることを直前になって知ったらしい。恐らく「gifted」という呼称も知らないだろう。まぁかく言う俺も制服と学生証が届いたのは一昨日の晩だし、無理もないか。斜め前にいる銀髪の男子も、先程からキョロキョロと当たりを見渡しているし、僕の左隣の女子に至っては…
「ひっく、ひっく…帰りたいよぉ…」
泣いていた。長い前髪で顔はよく見えないが、下に水たまりが出来ているので、泣いているのだろう。たぶん。
そして、式も終わりに差し掛かり、この後の自己紹介何を話そうかなぁなんて考えていた時、壇上に見覚えのある人物が立っているのが見えた。
「やあ諸君。入学おめでとう。まずは祝福しておくよ。」
そう高飛車な語気で話を始めた女性は、まさしく僕が学園長室で出会った人であり、僕がここに入学するきっかけを貰った人でもある人物だった。彼女は以前僕が話した時と全く同じ格好で現れ、そのまま壇上で話し始めた。前から思っていたが、多分この人は変わっている。間違いない。
「私は神山依織かみやま いおり。この学園に客員研究員兼教員としてこの度赴任になった者だ。突然だが、君たちに伝えなければならないことがある。特別科についてだ。」
全校生徒が一斉にこちらを向いた。ひぃぃ。と隣の子がわめいた。他の4人も、心なしか背筋が伸びているように見えた。
「今回の入学試験受験者の中から、各学校の推薦者も含めて特別な才能を持っていると思われる生徒を中心に私主導で集めさせてもらった。他科の者たちと扱いは変わらないが、授業のカリキュラムは他科とは異なる独自のもので行う。そしてーー
このクラスの担任は、私が勤めさせてもらう。gifted諸君、よろしく頼む。」
そういうと女性、もとい神山さんはそそくさと壇上を降り、そのまま式は終わった。あの人が担任となるのか。それは知らなかった。しかし、神山さんの話が終わると口々に、
「gifted?それって特進みたいなもんじゃないのか?」
「選ばれた存在ってことは、さぞかし強力な魔法使いなんだろうなぁ…」
全校生徒の値踏みをするかのような視線を浴びながら、入学式は終わった。
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教室に向かいながら、僕は全学園の生徒から向けられた視線を、忘れられないでいた。
他の面々も先ほどの出来事を忘れられないらしく、
「ねーねー聞いた!?giftedだってよ!私たちって、もしかしてすごいのかな!」
「なーんか仰々しい名前っすよねー。そんなに俺たちって物珍しい奴らなんすか?」
教室に向かう道中隣にいた赤毛の子と銀髪の男の会話が聞こえた。銀髪の方は背丈は僕より少し高い。飄々とした話し方や態度が印象的だ。
先程泣いていた女の子は消えていた。後で聞いた話だと緊張しすぎて脱走してしまって、現在捜索中らしい。さもありなんという感じだ。
「やはり妙ですよね…いくら今年からの新体制といえど、制服も棟も、ひいては宿舎まで別だなんて…特に制服なんて、白と黒で分けるなど何か意味があるとしか…」
「そうかな?ボクは結構すきだけどな~この制服!だって元々可愛いデザインだし、なによりどんだけ派手に汚してもバレにくいし!」
物腰柔らかい言葉遣いをしている彼女はどうやら外国籍のようだ。髪は絵に書いたようなブロンド、エメラルドの瞳、長いまつ毛と、外国人モデルさながらなプロポージョンをしている。下を向いても靴が見えないであろうたわわな胸もまた、彼女の魅力を引き立てている。
もう1人はThe平均身長の僕から見ても小柄な女の子だ。
一見すると中学生とも捉えられかねない黒髪ショートヘアの童顔で、とても元気が良い。さっきからぴょんぴょん跳ねながら金髪の女性の後ろを着いてきている。よく見ると髪の1部に白のメッシュが入っている。校則違反じゃないのだろうか。
あと1人は休みのようだ。神山さん曰く男らしい。詳しくは教えてくれなかったが、まぁじきににわかるだろう。
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教室に着くと、早速自己紹介を始めた。本来なら担任の神山さんが話のひとつでもするのが筋だろうが、黒板に雑多な文字で「自己紹介よろしく~」と書かれていた。本当によく分からない人だ。この先何かと気苦労が多そうである。
なんて1人で思考を巡らせているうちに自己紹介が始まった。最初はあの赤毛の女の子からだ。
「え、えっと…文月 薫(ふみつき かおる)です…!よ、よろしくお願いします…!」
そう言うと彼女は頭をさげ、その拍子に机に頭を強く打ち付けた。そしてその場で伸びてしまった。その場にいる4人は最初は呆気に取られていたのだが、すぐに教室は和やかな笑いに包まれた。6人とも入学式前に少し話したとはいえ、特別科という聞くからに仰々しい名前の科に入るに当たって、周りの生徒に対して少なからず警戒していた所はあったのだろう。だが、彼女のお陰で肩の力が抜けたようだ。その後の自己紹介はとても和やかな雰囲気の中で行われた。
次は銀髪の彼の番だ。
「初めましてー。えー。進藤 麻亜也(しんどう まあや)っす。どうぞよしなに。」
気だるげそうにそう言って戻って言った。だがクラスが嫌なわけではないようで、戻るとボクっ娘とだべっていた。ただ面倒くさがりなだけだろう。
次はそのボクっ娘だ。スキップで前に出ると体育祭の選手宣誓ばりの大声で
「はじめまして!ボクは五十寅 晴(いとら はる)!晴って呼んでくれると嬉しいな!得意魔法はー…まだ内緒!」
と、思わせぶりな事をいい、そそくさと戻ってしまった。でも、見る限り素直そうな子だし、仲良くなれそうだ。
次は外人モデル美女。
「皆さんはじめまして。藍桐 雅(あいきり みやび)と申します。皆様よろしくお願いします。」
そう言って深深と頭を下げた。まさか純日本人だとは…人を見た目で判断しちゃいけないとはこのことか。
そしていつの間にもどってきたのやら、先程まで緊張で泣き、挙句の果てに逃走した彼女である。
「ええええっと、み、みなさん、は、はじめ、、まして、、ぬ、沼神 優(ぬまかみ ゆう)と申します…ど、どうぞ、、よろしく、、」
泣いていた。緊張しているのか、はたまたお腹が痛いのか…。席に戻るなり、突っ伏して泣いてしまった。藍桐さんや五十寅さんが慰めてくれているが、泣き声は大きくなるばかりだ。やれやれ。
最後に、僕の番が来た。
「はじめまして。白導 調(はくどう しらべ)です。3年間よろしくお願いします!」
なんともない自己紹介。けど、これでいいのだ。自己紹介はシンプルが1番だし、何より僕には…
「自己紹介おわったかー?」
そう考えるまもなく、いつ来たのだろうか神山さんが教壇に立っていた。
「えー。ではこれにて今日は解散だ。皆には明日から宿舎で寝食を共にしてもらう。ま、仲良くな。というわけで明日は宿舎に荷物を入れしだい、魔力基礎能力測定を行うので、準備するように!」
ん?今僕がこの世の中でいちばん嫌いな単語が聞こえたような…?まぁ、聞き間違いだろう。
「魔力基礎能力測定かぁ。いまどのくらいまであがってるかなぁ?」
「んーまぁあんまかわってねぇっしょ。成長期俺もうおわったし。」
「まぁ。高校生であればまだまだ成長期真っ盛りじゃないですか。皆さんの記録がたのしみですわ…」
「んーーー!燃えてきた!今日は走るぞー!!」
「か、かえりたい…ううう…」
……どうやら、嘘ではないようだ。
本当に……どうしよう。
せっかく楽しいクラスになりそうだったのに…また、馬鹿にされるのだろうか…
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「たらいま~」
家に帰ると、誰もいなかった。どうやらまだ保護者説明会なるものが終わっていないらしい。ちなみに、僕には母親がいない。僕が生まれてすぐ、失踪してしまったそうだ。
僕は手洗いもそこそこに地下室におりた。
いくつもの網膜認証や指紋認証、果ては生体信号認証などの厳重なセキュリティを抜けたそこはーーー
そこは、広大な図書室、いや、図書館だった。
ここは白導家代々に伝わる場所で、魔法が使えない僕は幼い頃からずっとここで本を貪り読んでいたものだ。ここには魔法に関するありとあらゆる書物が残っている。
僕はある一冊の本を検索し、手元にだすと、荷造りがおわってがらんどうの自室に戻った。
この図書館には原則、魔法に関する本しか置かれていない。だが、その本にはある英雄のお話が記してあった。魔法の才能がないと蔑まれ、追い出され、ついには家畜同然の扱いを受ける主人公。でも、その間にも彼は諦めずに魔法の修行をし、力を付けようと努力した。そしてついに今までの疲労が溜まって倒れるという時、神は彼に力を与えた。その力はまさしく、万人を救う英雄そのものだった。彼の文字通り血のにじむような努力が、報われた瞬間だった。
他の人から見れば、こんなものはありふれた作り物の英雄譚に過ぎない。でも。僕にとってはこれが人生の聖書ともいうべき本だった。万事にまけない英雄に、おこがましくも僕の姿を重ねられるように、今まで努力してきたのだから。
「僕はやるよ。この学園で、僕は変わってみせる。」
僕はキャリーバックを空け、この本を最後に詰め込んだ。
いつでも初心を忘れないようにしたかったのだ。
明日からが、本当の始まりだ。
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ああ。やっとだよ。調。
やっと
君に、会えるんだね。
今までずっと
君の中で、待っていたよ。
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