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     第二十三章

僕は教室で質問攻めにあっている

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 僕は放課後、美優と楓に質問攻めにあっている。
一つは、なぜ紀伊名が僕の家にいるのか。
もう一つは、なぜ玄関から出ないで人の家の屋根を使って登校していたか。
 質問されている内容はこの二つである。

「それで?何で高杉さんがあんたの家にいるの?説明してくれるんでしょ?」

「昨日、紀伊名が僕の仕事を手伝ってくれたので一緒に帰ろうとしたところ、雨が降ってとりあえず僕の家に招いたという事です」

「それから?」

「紀伊名が、なぜこっちに来たのか。食生活は大丈夫なのかを聞いたところ、僕がこれはまずい。と判断したので、同居する事になっています」

「ふーん?それじゃあ、朝の事は?」

「朝のあれは、玄関から出ると怒られるだろうと思ったら、体が勝手に動いてました」

あーあ。言っちゃったよ。さて次は、何がくるのかな?
もう覚悟は出来てるから、どんとこい!

「じゃあ私も、明日から涼平の家に住むから」

「はい?駄目に決まってるでしょ」

「何で私がダメで高杉さんはいいのよ!」

「いやだって、美優の親が許してくれる訳無いでしょ」

美優の質問が終わった。最後の正論が効いたな。

「楓はどうなの?高杉さんをこのままにしておいていいの?」

「別に、いいけど?」

楓が別にいい。なんて言葉を言う時は大抵何かを考えがある時にしか言わない。何を考えてるんだ?ちょっと怖いな。

「じゃあ、もう帰ろう?夕飯の支度とかあるから」

「そ、そうね。明日は絶対に玄関から出て来なさいよ」

なんか、面倒な事になってきたな。
思い返すと美優と再会して、楓、舞の順番で毎回こんな事されてたな。今では、紀伊名。なんでこんな事に?

「紀伊名、風呂にお湯入れてきて」

「分かった。涼ちゃん今日の夕飯何?」

「紀伊名の好きなハンバーグだけど?」

「やったー!涼ちゃんだーい好き!」

よく言うよ。ハンバーグの時以外、僕の事嫌いって言ってるくせに。
ピーンポーン!
誰だろ?新聞の勧誘かな?

「はーい。どなたですか?」

「私よ」

「えっ?なんで楓がここに?」

「簡単よ。家出してきたの」

「なんだ家出か。とりあえず、上がったら?」

「おじゃましまーす!」

ん?家出?今楓家出って言わなかった?

「楓さん?今、家出って言いました?」

「言ったわよ?家出って」

「えーー!なんで家出なんか、それになぜ僕の家に?」

「だって前、『家出は可能です』って言ったじゃない」

そういうことか!だから放課後、別にいいなんて言ってたのか!家出すれば、僕の家に泊めてもらえるから。
甘く見過ぎてた楓の事。

「でも何で家出なんか?父さんと喧嘩でもしたの?」

「いいえ。母に独り立ちをします!って言ったらなんて言ったと思う?」

「なんて言ったの?」

「分かったわ。学費とかは毎月振り込んであげるからって。だからここに来たの」

なーるほど。楓の母さんが二泊も僕の家に泊まっていいって言ったのか。
まぁ、可愛い子には旅をさせろって言うし。何日かしたら探すだろ。

「分かった。教科書とかある?」

「あるよ。こんな大荷物なんだからあるに決まってるでしょ?」

それもそうだな。

「楓の部屋は、昔母さんが使ってたとこでいいかな?」

「全然いいよ!」

こうして、紀伊名と家出の楓と暮らす事になった。
また、作る料理が増えるな…       
                    続く……
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