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     第十一章

念願の復帰!とピンチ!

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 次の日の昼時、僕はやっと退院する事が出来た。医師には、あまり無茶な運動は控えて、軽いランニング程度にして下さいと言われたので、もう二日間腹筋になるかもしれない。

だけど、前よりは筋肉がついてきた。後は腕や足だけど、やるならランニングかな?
学校に行く前とかなら十分だろう。
そんな事より、家に戻って本を探そう。
僕の微妙な記憶だけど、押入れのどこかに
『拳法の極意』とかいう本があったはず。

その本を見つけてから、訓練に励もう。
今は、体を鍛えないと。
ああそれもあるけど、掃除もしないと、ホコリが溜まってるだろうから体にちょっと重りを付けながらやってみよう。

「ただいまー。って言っても僕一人なんだけどね」
さて、行動に移ろうかな。
まずは掃除から始めようと思ったけど…ホコリが全然ない。それどころか、ほとんどの部屋が掃除されてる。誰がやってくれたんだろう?

そうだ。病院に運ばれて家の鍵を美優に渡したんだった。でも、一人で出来るかな?
考えられるのは、楓と舞も協力したって考えるのが正解だな。
ありがたい。よし!早く本を探さないと!
だけど、この量の本の中から探すのか。
こりゃ骨が折れそうだ。でも、やるんだ。
絶対に守ってみせる。そう決めたんだ!

えっと…拳法、拳法っと。
無いな。やっぱり、僕の思い違いだったのかな?まさかね。とりあえず本を整理しよう。そしたら見つかるかも!
「これじゃない。これでもない。これでも…」
ピンポーン
誰だろう?出前じゃないとしたら、美優かな?昨日、僕が今日退院するって聞いてたから。
「はーい…楓と舞?どうしたの?」
「退院祝い!」
「家の場所は、美優から聞いたの?」
「う、うん。そうだよ?」

何か顔色が変わった?多分、隠し事かそれか、サプライズか何かかな?
「とりあえず上がったら?」
「じゃあ、お邪魔しまーす」
今、僕の部屋に入れるのはまずい。
本で埋まってるから座るスペースなんてないから、リビングに案内しよう。

「はいこれ。退院祝い。私と舞ちゃんから」
「やっぱり、仲良くなったんだな。美優から聞いたよ」
 もし、話が僕の部屋が見たいという話にならないよう頑張ろう!
楓に何の本を探してるの?とか聞かれて拳法の本だよ。
なんて言えない。
いや、正確には言える訳がないのだ。この前病室で約束したから。
「涼平君?部屋とか大丈夫?今日退院したばっかりだから、掃除とか大丈夫?良かったら手伝おうか?」
ギクッ。いきなりきたな。これも女の勘ってやつなのかな?
「だ、大丈夫だよ?自分でも普通に出来たから」
「本当に?じゃあ、見てもいいかな?」
なぜそうなる!
判断ミスだ。でもあの時「お願いしようかな」なんて言ったら同じ事だったし。
はめられた?あの質問はどっちを選んでも僕の部屋に連れて行かないと行けなかったんだ。女性は怖いな。楓がこっち向いて万遍ない笑みを浮かべてる。

分かってたんだ。楓には、こうなる事が初めから。仕方ない。案内しよう。怒られるけど。
「えっと、ここが僕の部屋です」
「どうしたの?この本の量何か探してたの?」
「それは…その…」
舞、助けてくれ!と思いながら目配せを送ったが、あっさり見捨てられた。
ここまでだな。と思った瞬間、探していた本が見つかった。

 ただ、取ることが難しいところにあった。
そう、楓の真下にあったのだ。取ろうにも取れない。一歩間違えば大惨事になる。色んな意味で。
どうやって取ろうかな?   続く…
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