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第39話・色々な決意を胸に2

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「午前中はルリさんのLV上げをしますが、午後から俺と食い逃げ犯を倒しにいきませんか?」

「ゼロ、ありがとう。本当にありがとう」

レイナは涙まで浮かべている、まあそうだよな。めちゃめちゃがんばって毎日LVを上げてきたのに、5LVも下がったら悔しくてしょうがないだろう。俺も強くなったし、すぐに元のLVまで引き上げてやる。
でも食い逃げ犯を倒しに行きませんか?って言葉だけ聞くと、どうしようもないセリフに思えるな。

レイナと別れ、宿に行きルリさんの元へ。

「お待たせしました。ルリさん早速ですが、初心者の森へ行きます。LV上げしましょう!」

「是非、お願いします!がんばります!」

初心者の森へ行き、ワイルドドッグ4体が出る場所へ向かう。

「ルリさん、俺は師匠に教えていただいたおかげで強くなれました。その成果をみせます、ヘイスト!」

「こ、これは」

「分かりますか?このヘイストは師匠に教えていただいたのです。今からルリさんには、そのヘイストの恩恵である攻撃速度上昇と移動速度上昇を使いこなし、このフィールド全体を狩場として、縦横無人に狩ってください。スキル自体のクールタイムはなくなりませんが、ショットはクールタイムがないために連射が可能です。集中スキルと俺のヘイストがあれば、このフィールドの攻略が終わったようなものです。がんばってください」

スキルのショットは、矢を取り出し弓に番え放つという動作があるため、クールタイムがなくとも次のショットまでに時間がかかる。だが、ヘイストを掛けることで矢を取り出し弓に番え放つという動作を極端に早くすれば連射が可能になる。ヘイストは映像の早送りみたいな現象を起こせるのだ。

「ありがとうございます、集中!」

「「「「ガァウ!!」」」」

さっそくワイルドドッグ4体が駆けてくる。

「ギャ!」「ギィァ」「ギィヤ」「ギャギ!」

ルリさんは、瞬く間にワイルドドッグの足を1本ずつ的確にショットで打ち抜く。

「ラピッドファイヤ!」

ルリさんはヘイスト支援のショットより早い速度で放てるラピッドファイヤでワイルドドッグ4体の頭を貫き、光の泡にする。
圧巻の狩り速度だ。

「お見事!」

「ありがとうございます!ゼロさん、ヘイストがあれば私は同LV帯では無敵かもしれません!」

だな、どうもこの世界では怯むという動作はダメージ量だけじゃなく、弱点を突けば怯む動作が発生する。そのためアーチャーは動体視力をあげる集中スキルを使い弱点を突けば、ショットだろうと相手を怯ませられる。それをヘイスト状態で繰り出すのだから、すごいスピードで打ち抜き、怯ませながらダメージを蓄積させる芸当が可能になったのだ。
だが、一つ注意しておかねば。

「ルリさん、一つだけ注意点を。今や、ショットだけでもワイルドドッグ4体を倒すことは余裕でしょう。ただし、スキルは積極的に使うようにしてください」

「スタミナポーションの無駄になりませんか?」

「スキルを積極的に使いなさいというのは、Dランク冒険者としてのアドバイスです」

「分かりました、そのようにします。がんばります!」

俺は、師匠が教えてくれたように、ルリさんにスキルを積極的に使用するように教えた。
ルリさんはヘイストの移動速度増加を利用し、森の中を縦横無尽に狩る。
ある程度の時間を狩るとヘイストを上書きしに、俺のもとへ戻ってくる。
そんなことを繰り返し、日没だ。
なんとLVが3も上がった。ルリさんはLV14になった、緊急回避もとらせた。
順調すぎるな。

「ゼロさん!今日は最高に楽しかったです!ヘイストってすごい魔法ですね!」

「ですね!俺も師匠に強化してもらうまでは、微妙だと思ってましたが最高の魔法でした」

ルリさんがニコニコしている。よほどヘイスト状態で狩れたことが楽しかったのだろう。
俺もルリさんがニコニコしているのを見ていると楽しくなってくる。本当によかった。
冒険者協会へ戻ってくる。
ルリさんが精算して、俺の番になる。

「ゼロさん、王様との件は大丈夫でしたか?」

「はい、問題ありませんでした。精算をお願いします。提出する精算アイテムはありません」

王様から金貨500枚もらったから、お金に余裕はあるんだけど、近頃狩りをしていないことがストレスになりつつある。だが、今日は一人の裏世界だ!
俺もギルドマスターになるのだから、圧倒的に強くならねば示しがつかん!

「ゼロさん?聞いてますかー?」

「あ、すみません」

頭の中で意気込んでいたら、マリさんに話しかけられていたらしい。

「ではクエスト報酬で金貨1枚、サティさんとダンさんへのお支払いとして金貨3枚になりますので、金貨2枚をお支払いいただきます」

「お願いします」

と言って金貨2枚を渡す。

「このごろ精算アイテムが少ないようですが、大丈夫ですか?」

「はい、とりあえず大丈夫です。心配いただいてありがとうございます」

マリさんの目が光ったように見えた。

「ふふ、ゼロさん。もし困ったことがあったら、私に相談してくれたら色々」

「ゼロさん、精算終わったんですよね!帰りましょう?今日はロールキャベツらしいですよ」

マリさんのお誘いを遮るようにルリさんに腕を引かれる。

「むー!また明日ね、ゼロさん!」

俺はマリさんに向けてお辞儀し、ルリさんに腕を引かれながら出ていく。
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